44 / 67
自由を求める心
しおりを挟む
ローが二人を呼び出してほしいと言った次の日、アリシアは部屋で待機していた。
こうしていると自分の体質が発覚して、両親がアリシアを部屋へ閉じ込めていた時の事を思い出す。
あの頃も今もやはり同じだ。
自分の自由を奪われるのは我慢ならなかった。
私はもう誰にも束縛されたくない。
ようやく…あの夫から逃れられたのに、どうしてまた捕まってしまったの?
バルコニーへと繋がる窓の前に立って外を眺めていた。
皇宮はとても広く、皇帝陛下が住まう場所ゆえ優雅に整えられている。
だが、その造形美にアリシアはどこか虚しさを感じた。
ここよりもローさんの庭園の方が温かみを感じるのはどうしてかしら…。
あまりに整いすぎて、逆に不自然さを感じてしまう……。
窓に手を当て、ポッカリと浮かぶ雲が流れる景色を目で追っていた。
あの流れる雲のように、自分も自由に広々とした空を流れて行ければいいのに。
アリシアは切実に願う。
アリシアの立場はいつも中途半端だ。
子爵家にいた時も、大公家に来てからも、この皇宮へ訪れてからも……。
窓の外を見ていたら、いつの間にか鳥たちが広いバルコニーの手摺りに集まって来ていた。
ここ最近、この体質が特に強くなった。
なぜかはわからない。
大きな開き戸の窓を開けて、外へと足を進めた。
「また…集めて来てくれたの?ありがとうっ!」
手摺りに止まっていた鳥たちの嘴には、ローの心臓に効くヤツメ草が咥えられていた。
アリシアが両手を差し出すと、鳥たちが次々と飛び立ち、アリシアの両手にヤツメ草を落としていく。
全て終わる頃にはアリシアの両手には、こんもりとするほどのヤツメ草でいっぱいになっていた。
アリシアはその草をバルコニーのテーブルに置き、お仕着せのポケットに入っている袋を取り出した。
「沢山食べて。またお願いね」
袋には鳥たちの好物である雑穀が入っており、鳥たちはアリシアの両手に群がりながら我先にと餌を食べていた。
アリシアはバルコニーの床にも撒き、バルコニーが鳥たちで埋め尽くされていた。
「あなた達のおかげよ?ローさんが歩けるまで元気になったの。だから遠慮せずにいっぱい食べてね」
沢山あったエサもすぐに無くなってしまった。
「ありがとう。またお願いね!」
次々と鳥たちか飛び立つ中、急に部屋側の窓からジェイデンが現れ、多くの鳥たちが一斉に空へと舞い上がった。
バサバサバサッーー!!
「あっ……」
アリシアはバルコニーから飛び立った鳥たちを見上げた。
ジェイデンは息を乱しながら、ずんずんアリシアの元へと進んでいく。
理由もわからず向かってくるジェイデンに、アリシアは反射的に身構えた。
「やっ……!」
元夫のジムだと、この勢いのままアリシアを平手で叩いていた。それがアリシアにとっての日常であった。
怒りや腹いせをぶつけるられる日々。条件反射で咄嗟に身構えた。
しゃがみ込んだまま体を固くし、瞳をキツく閉じながら顔を両手で覆って、衝撃に備えていた。
「──」
思ったような衝撃は訪れず、アリシアはキツく閉じていた瞳をゆっくり開けた。
視界の先にはジェイデンが息を乱しながら立ち上がり、しゃがみ込んでいるアリシアを見下ろしていた。
こうしていると自分の体質が発覚して、両親がアリシアを部屋へ閉じ込めていた時の事を思い出す。
あの頃も今もやはり同じだ。
自分の自由を奪われるのは我慢ならなかった。
私はもう誰にも束縛されたくない。
ようやく…あの夫から逃れられたのに、どうしてまた捕まってしまったの?
バルコニーへと繋がる窓の前に立って外を眺めていた。
皇宮はとても広く、皇帝陛下が住まう場所ゆえ優雅に整えられている。
だが、その造形美にアリシアはどこか虚しさを感じた。
ここよりもローさんの庭園の方が温かみを感じるのはどうしてかしら…。
あまりに整いすぎて、逆に不自然さを感じてしまう……。
窓に手を当て、ポッカリと浮かぶ雲が流れる景色を目で追っていた。
あの流れる雲のように、自分も自由に広々とした空を流れて行ければいいのに。
アリシアは切実に願う。
アリシアの立場はいつも中途半端だ。
子爵家にいた時も、大公家に来てからも、この皇宮へ訪れてからも……。
窓の外を見ていたら、いつの間にか鳥たちが広いバルコニーの手摺りに集まって来ていた。
ここ最近、この体質が特に強くなった。
なぜかはわからない。
大きな開き戸の窓を開けて、外へと足を進めた。
「また…集めて来てくれたの?ありがとうっ!」
手摺りに止まっていた鳥たちの嘴には、ローの心臓に効くヤツメ草が咥えられていた。
アリシアが両手を差し出すと、鳥たちが次々と飛び立ち、アリシアの両手にヤツメ草を落としていく。
全て終わる頃にはアリシアの両手には、こんもりとするほどのヤツメ草でいっぱいになっていた。
アリシアはその草をバルコニーのテーブルに置き、お仕着せのポケットに入っている袋を取り出した。
「沢山食べて。またお願いね」
袋には鳥たちの好物である雑穀が入っており、鳥たちはアリシアの両手に群がりながら我先にと餌を食べていた。
アリシアはバルコニーの床にも撒き、バルコニーが鳥たちで埋め尽くされていた。
「あなた達のおかげよ?ローさんが歩けるまで元気になったの。だから遠慮せずにいっぱい食べてね」
沢山あったエサもすぐに無くなってしまった。
「ありがとう。またお願いね!」
次々と鳥たちか飛び立つ中、急に部屋側の窓からジェイデンが現れ、多くの鳥たちが一斉に空へと舞い上がった。
バサバサバサッーー!!
「あっ……」
アリシアはバルコニーから飛び立った鳥たちを見上げた。
ジェイデンは息を乱しながら、ずんずんアリシアの元へと進んでいく。
理由もわからず向かってくるジェイデンに、アリシアは反射的に身構えた。
「やっ……!」
元夫のジムだと、この勢いのままアリシアを平手で叩いていた。それがアリシアにとっての日常であった。
怒りや腹いせをぶつけるられる日々。条件反射で咄嗟に身構えた。
しゃがみ込んだまま体を固くし、瞳をキツく閉じながら顔を両手で覆って、衝撃に備えていた。
「──」
思ったような衝撃は訪れず、アリシアはキツく閉じていた瞳をゆっくり開けた。
視界の先にはジェイデンが息を乱しながら立ち上がり、しゃがみ込んでいるアリシアを見下ろしていた。
11
お気に入りに追加
586
あなたにおすすめの小説



【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる