33 / 67
ハプニング
しおりを挟む
「おや、アリー?息を切らしてどうしたんだい?」
花の咲き乱れる庭園を急いで駆け抜けた。一刻も早くローに会いたかったからだ。
「はぁ、はぁ…、ごめん…なさい……。はぁ…、見つかって、しまって…」
「見つかる?」
「はい…、実は、私…、部屋から出るなと言われてまして…」
また庭園のテーブルセットに案内され、ざっくりとローに事情を話した。
「そうだったのかい。アリーは大変なんだね」
「いえ、元はと言えば…言い付けを守らない私がいけないんです…」
お茶も出してもらい、温かい飲み物を飲んだおかげが、気持ちが落ち着いて来た。
「私…、もう、ここには来れないです。また見つかってしまえば、ローさんにもご迷惑をかけてしまいます」
「わたしはいいんだよ。ただ、アリーとこうしてお茶を飲めなくなるのはとても悲しいね…」
アリシアはポロッと泣き出した。
「アリーっ、急にどうしたんだっ?!」
「だって、私…ローさんとお話するのっ、すごく…楽しみに、してたのにっ…」
「アリー……」
椅子に座って泣き出すアリシアに、ローは立ち上がってハンカチを差し出した。
アリシアは泣きながらそれを受け取る。
「ぅっ、くっ…すみ…ま、せん…」
「いいんだよ。わたしはね、嬉しく仕方ないのさ…。こんなに泣いてまで、わたしに会いに来たいなんて言われてね」
「本当、です。私…、これまでで、一番、楽しくてっ…。だから、もう、ここに来れないのが、悔しいっ…」
まだ嗚咽を漏らし泣いているアリシアの肩をローは抱き寄せた。
「アリー、ありがとうっ。もう、こんな思いになる事なんて、無いと思っていたよ…。君のおかげで、わたしもとても楽しかったんだ…」
貰ったハンカチを両手で掴み、顔を覆っているアリシアに、ローは優しく諭すように話しかける。
アリシアも次第に落ち着いて来た。
「すみません、ローさん。みっともなく、取り乱してしまって」
貰ったハンカチから顔を放し、涙に腫らした目元をゆっくりと出した。
「いいんだよ、アリー」
ローもアリシアの肩を離し、にこりと笑いかけた。
「まだ、ここに滞在するんだろう?機会はいくらでもあるさ。わたしが秘密の抜け道を教えてあげるよ」
「秘密の…抜け道…?」
「そうだよ。これはね…一部の人間しか知らない、秘密の通路なのさ」
一通り説明されたが、実際に見ていないアリシアには良くわからなかった。
どうして庭師であるローが、ここまで皇宮の内部に詳しいのか疑問も残る。
「使うかはわかりませんが、まだここに居なければならないんです…。もう、嫌なんですっ…、ただ呼ばれるまで部屋に待機していなければいけないなんてっ!わがままだと言われても仕方ありませんっ。もちろん、ローさんにご迷惑はおかけしません!」
顔を上げたアリシアが、必死にローに訴える。
「もちろん、いつでもおいで。わたしに迷惑なんて考えなくていいんだよ。どうせ老い先短い身だしね」
「縁起でもない事言わないで下さい…。ローさんがいなくなったら、すごく悲しいです…」
「…君に出会えて嬉しいのは、わたしの方なんだよっ。だから……うっ…ぐぅっ…!!」
突然ローが苦しそうに、胸を押さえてしゃがみ込んだ。
「ローさん?ローさんっ!?」
しゃがみ込んだローに寄り添うように、アリシアも急いで椅子から立ち上がり様子を伺う。
「ううっ!…くっ!」
顔が真っ青で、呼吸もかなり荒い、冷や汗も酷く、ローはその場に倒れ込んだ。
「ローさん!しっかりしてっ!」
意識も朦朧としているのか、ローはとても苦しそうにしていて問いかけに反応できていない。
アリシアは渾身の力でローを何とか支え、家の中のベッドに横たえた。
だが、ローの容態は一向に良くならない、呼吸が苦しくならないよう、咄嗟にシャツの前を開けた。
「ぐっ…、く、すり…」
ローは震える手で、棚の上にある瓶を差している。
「薬ですね?!」
棚にある瓶には固めた薬が何個も入っており、瓶には2粒服用と書かれていた。
アリシアは薬を手に乗せ、急いで水を汲みローの元へと駆け寄った。
「ローさん薬です!」
寝ていたローの体を少し起こし、薬を口に入れ、ゆっくりと水を飲ませていく。
「っ、ゴホッゴホッ…!」
「大丈夫ですか?!ローさん!!」
「はぁ、はぁっ…」
何とか薬は飲んでくれたが、顔色も戻らず予断を許さない状況だ。
「待っててローさんっ!誰か呼んできます!!」
再びベッドへ寝かせ、アリシアはローの体を少しだけ横に向かせた。もしもの時に吐瀉物が喉に詰まらないようにするためだ。
そのまま、急いで庭園を走り抜けた。
「あっ!!」
あまりに急いでいて、落ちていた小石に躓き派手に転んだ。
「つぅ…」
着ていたお仕着せが泥だらけになった。痛みに耐えながら勢いよく起き上がる。膝も擦りむいたのか血が滲んでいた。
アリシアは気に留めことなく、そのまま皇宮へと走り出した。
花の咲き乱れる庭園を急いで駆け抜けた。一刻も早くローに会いたかったからだ。
「はぁ、はぁ…、ごめん…なさい……。はぁ…、見つかって、しまって…」
「見つかる?」
「はい…、実は、私…、部屋から出るなと言われてまして…」
また庭園のテーブルセットに案内され、ざっくりとローに事情を話した。
「そうだったのかい。アリーは大変なんだね」
「いえ、元はと言えば…言い付けを守らない私がいけないんです…」
お茶も出してもらい、温かい飲み物を飲んだおかげが、気持ちが落ち着いて来た。
「私…、もう、ここには来れないです。また見つかってしまえば、ローさんにもご迷惑をかけてしまいます」
「わたしはいいんだよ。ただ、アリーとこうしてお茶を飲めなくなるのはとても悲しいね…」
アリシアはポロッと泣き出した。
「アリーっ、急にどうしたんだっ?!」
「だって、私…ローさんとお話するのっ、すごく…楽しみに、してたのにっ…」
「アリー……」
椅子に座って泣き出すアリシアに、ローは立ち上がってハンカチを差し出した。
アリシアは泣きながらそれを受け取る。
「ぅっ、くっ…すみ…ま、せん…」
「いいんだよ。わたしはね、嬉しく仕方ないのさ…。こんなに泣いてまで、わたしに会いに来たいなんて言われてね」
「本当、です。私…、これまでで、一番、楽しくてっ…。だから、もう、ここに来れないのが、悔しいっ…」
まだ嗚咽を漏らし泣いているアリシアの肩をローは抱き寄せた。
「アリー、ありがとうっ。もう、こんな思いになる事なんて、無いと思っていたよ…。君のおかげで、わたしもとても楽しかったんだ…」
貰ったハンカチを両手で掴み、顔を覆っているアリシアに、ローは優しく諭すように話しかける。
アリシアも次第に落ち着いて来た。
「すみません、ローさん。みっともなく、取り乱してしまって」
貰ったハンカチから顔を放し、涙に腫らした目元をゆっくりと出した。
「いいんだよ、アリー」
ローもアリシアの肩を離し、にこりと笑いかけた。
「まだ、ここに滞在するんだろう?機会はいくらでもあるさ。わたしが秘密の抜け道を教えてあげるよ」
「秘密の…抜け道…?」
「そうだよ。これはね…一部の人間しか知らない、秘密の通路なのさ」
一通り説明されたが、実際に見ていないアリシアには良くわからなかった。
どうして庭師であるローが、ここまで皇宮の内部に詳しいのか疑問も残る。
「使うかはわかりませんが、まだここに居なければならないんです…。もう、嫌なんですっ…、ただ呼ばれるまで部屋に待機していなければいけないなんてっ!わがままだと言われても仕方ありませんっ。もちろん、ローさんにご迷惑はおかけしません!」
顔を上げたアリシアが、必死にローに訴える。
「もちろん、いつでもおいで。わたしに迷惑なんて考えなくていいんだよ。どうせ老い先短い身だしね」
「縁起でもない事言わないで下さい…。ローさんがいなくなったら、すごく悲しいです…」
「…君に出会えて嬉しいのは、わたしの方なんだよっ。だから……うっ…ぐぅっ…!!」
突然ローが苦しそうに、胸を押さえてしゃがみ込んだ。
「ローさん?ローさんっ!?」
しゃがみ込んだローに寄り添うように、アリシアも急いで椅子から立ち上がり様子を伺う。
「ううっ!…くっ!」
顔が真っ青で、呼吸もかなり荒い、冷や汗も酷く、ローはその場に倒れ込んだ。
「ローさん!しっかりしてっ!」
意識も朦朧としているのか、ローはとても苦しそうにしていて問いかけに反応できていない。
アリシアは渾身の力でローを何とか支え、家の中のベッドに横たえた。
だが、ローの容態は一向に良くならない、呼吸が苦しくならないよう、咄嗟にシャツの前を開けた。
「ぐっ…、く、すり…」
ローは震える手で、棚の上にある瓶を差している。
「薬ですね?!」
棚にある瓶には固めた薬が何個も入っており、瓶には2粒服用と書かれていた。
アリシアは薬を手に乗せ、急いで水を汲みローの元へと駆け寄った。
「ローさん薬です!」
寝ていたローの体を少し起こし、薬を口に入れ、ゆっくりと水を飲ませていく。
「っ、ゴホッゴホッ…!」
「大丈夫ですか?!ローさん!!」
「はぁ、はぁっ…」
何とか薬は飲んでくれたが、顔色も戻らず予断を許さない状況だ。
「待っててローさんっ!誰か呼んできます!!」
再びベッドへ寝かせ、アリシアはローの体を少しだけ横に向かせた。もしもの時に吐瀉物が喉に詰まらないようにするためだ。
そのまま、急いで庭園を走り抜けた。
「あっ!!」
あまりに急いでいて、落ちていた小石に躓き派手に転んだ。
「つぅ…」
着ていたお仕着せが泥だらけになった。痛みに耐えながら勢いよく起き上がる。膝も擦りむいたのか血が滲んでいた。
アリシアは気に留めことなく、そのまま皇宮へと走り出した。
21
お気に入りに追加
587
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ナイトプールで熱い夜
狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…?
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる