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リゲルとアケルナーって、ほんっと面倒!

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 まったく! 急な国賓級の来客なんて、冗談じゃないよ。
 大公城の窓から光が降り注ぐながぁ~い廊下を颯爽と歩いて、後ろからはメリダとサラがついてきてる。
 この子達もいざとなったら戦闘に入れるくらいの実力者だからさ。私の侍女として側付きになるんだから、そのくらいは出来てもらわないとね。なんだかんだ命を狙われることも少なくないし。

「シリウス公妃様。おはようございます!」

 歩いてる廊下で使用人とすれ違うと、気さくな笑顔で挨拶してくる。

「おはよう、マルニ。ベッテルさんはどこにいるかな?」
「ベッテル侍従長ですか? でしたら、先ほどいらしたお客様のお相手をしてましたが……」

 マルニは二十代前半で元々ドラコニス公爵領にいた頃からの臣下だった。私が町から連れてきた使用人とは違うけど、人当たりが良くて孤児たちを差別しないとこも気に入ってる。
 ま、そんな奴がいたら即解雇だけど……

「わかった。ありがとう」
「いえ! とんでもございません」

 ペコリと一礼してるマルニの側を通り過ぎた。

「奥様。この時期にジュピター神聖国の聖王様が移動するのはおかしいです」
「えぇ。今の時期は神聖国の豊穣祭の時期で、本来なら聖王様は収穫祭に向けて神聖国で祈りを捧げる期間に入るはずですわ」

 サラとメリダはそれぞれ頭も良いから、色々意見を出してくれてとっても助かる。ホント、万能メイドだよ。

「う~ん。そうなんだよねぇ……多分、わざわざこんな場所まで来たのには理由があると思うんだ。おそらく、本来の目的は謁見じゃなくて、依頼に近い感じだろうね」

 話した後に口の端をニッと上げてる私に、サラとメリダが二人して顔を見合わせてる。

「神聖国の聖王様たってのご依頼ということですか?」
「ですが……、奥様はもう冒険者業は引退されてますわ」

 光が差してる廊下を歩きながら、また長い階段下って、ようやく下の階まで降りてきた。

「聖王は本来不在が許されない時期。そんな尊いお方が、わざわざこんな遠方の大公国まで直々に足を運んだ。……って、ことはだ。要するに神聖国の危機的状況ってことだよね」
「「神聖国の危機的状況っ!?」」

 後ろから聞こえてきた二人の声が綺麗にシンクロしてる。

「ハハッ、これは面白くなりそうだな」

 その場でまた笑って、サラとメリダを従えたまま廊下を歩く足を早めた。


 ◇◆◇


 下の階まで降りたら、アケルナーとリゲルか待ち構えてた。二人共ドラコニス大公国の魔法騎士団の制服を身に着けてる。もちろんマントには大公国の家紋が刻まれてて、一年が経つ頃にはすっかり馴染んじゃってるよね。

「総大将! すいぶん遅かったじゃないか!」
「シリウス公妃殿下。ジュピター神聖国の聖王様がお見えです」

 リゲルは相変わらず腕組みながらキャンキャン吠えてるけど、アケルナーはだいぶ落ち着いてきた。
 で、結局この二人って同性婚したんだ。
 私が自ら同性婚に関する法律を作り上げてドラコニス大公国では同性婚が認められるようになった。
 そのおかげもあって、同性愛者の人たちの人口も増えたんだけど……周りの宗教団体からの批判が結構凄かった。
 まぁ、秘密裏に手を回して無理やり解決させたけど。

「おい、リゲル。お前もいい加減、公妃って呼べよ。お前の旦那はちゃんと呼んでるだろ」
「っ……! べ、別に、間違ってないんだからいいだろ!」
「間違っていないが、正解でもない。公式の場でその呼び方はやめろ。――わきまえろ、と言ってるのがわからないか……?」

 緩やかな殺気とともに鋭い視線で睨みつけてると、リゲルは一瞬怯んでから、プイッと顔を横へと反らしてた。

「くッ! わ、わかったよ! 了解しました!」

 ったくッ! リゲルって変にプライドが高いからか、どうしても私に対する態度を変えられないんだよね!
 その点、アケルナーはなんの抵抗もなく呼んでるんだけど、逆に私の方が抵抗があるんだよ。
 アケルナーっていつまで経ってもホント苦手。
 相変わらず手合わせしろってうるさいし、魔力循環とか魔法原理についても暇さえあれば聞いてくるし。
 リゲルはリゲルであーだこーだって文句ばっかだし、だからこの二人を採用するのは嫌だったんだよね。

 今更なんだけどさー……
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