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続編
隠しキャラ 2
しおりを挟むライオルに横抱きされ、お屋敷のエントランスホールに入ってきたルーシェとライオルを見たウィルソンは、吃驚して固まってしまった。
「ラ…イル、何をしている?」
ライオルは何事もないふうに話し出す。
「ウィルか。なぁ、こいつ連れて帰ってもいいか?」
「「はっ?」」
ウィルソンとルーシェが同時に不満の声を漏らす。
(私は物じゃないんだけど!)
ウィルソンは鋭くライオルを睨み、冷たい口調で言い放つ。
「ライル……ルーは私のモノだ。連れて帰るなど…例え友人でも許しはしない」
ウィルソンが殺気を出しながら牽制している。
それを見てライオルは更に愉しそうに笑う。
「これは珍しい……ウィルがこれ程感情を露にするとは」
ライオルの腕に抱き上げられながら、ルーシェは思った。
(お願いだから、私の意見をちゃんと聞いてよ!!)
あれから睨み合いになり、見かねたクラウスが止めに入った。
ウィルソンがライオルからルーシェを奪い取り、今度はウィルソンに抱えられ、手当てして貰うことになってしまう。
それでも自分でやると全力で拒否したのだが、聞き入れて貰えなかったのだ。
そして今、応接室のソファーで三人で座っているのだが、ルーシェはかなりの居心地の悪さを感じている。
(私……居なきゃダメ?)
とても逃げ出したい気分の中、先に口を開いたのはルーシェの隣に座っていたウィルソンだ。
「それで?何故ルーが怪我をして、ライルに抱えられて戻ってきたんだ?」
口調にかなりの苛立ちが含まれている。
ルーシェは自分が悪い訳でもないのに、なぜか罪悪感を持ってしまっていた。
そんなことはお構い無しのライオルは、向かい合ったソファーに優雅に腰掛けながら話し出す。
「ああ、コイツが打ち込みしてるのを見かけてな。そこで手合わせしたんだ」
「その時に怪我をさせたのか」
「そうだ。少し本気を出してしまってな。悪いことをしたが、俺が本気を出せるヤツは中々いない。ましてや女でここまで出来る者もな」
そう言ってライオルは笑ってルーシェを流し見る。
これだけの美形に見られると、ルーシェは真っ赤になってしまう。未だにこの手の男は苦手なのだ。
それを見て面白くないのはウィルソンだ。自分以外の男に頬を染めるのは許しがたいものがある。
「ルーは私の婚約者だ。誰にも渡さない。無理に連れて行くというなら手段は問わない」
「ふっ……あのウィルがここまで執着を見せるか…女相手に」
ウィルソンの、まるで敵に向けるような鋭く冷たい瞳に、ルーシェはゾッとしてしまう。
面白いものを見るかのように、ライオルはウィルソンを眺める。
ルーシェはそんな二人を見ておろおろしてしまう。
何故こうなってしまったのか甚だ疑問なのだが、とりあえず自分を無視して、話を勝手に進めないでほしい。
気まずい雰囲気を壊してくれたのはクラウスだった。
「坊っちゃま方、そろそろ出発しないと遅れてしまいますよ」
ナイスなタイミングで入って来てくれた。
(クラウスさん、大好き!)
今日は登城する予定らしい。
この場から解放される喜びで、ルーシェは安堵してホッと胸を撫で下ろす。
「今行く」
「ああ、そうだ。今夜の晩餐にまたあの料理人を呼んでくれないか?あの味が忘れられなくてな」
ライオルが思い出したようにクラウスに頼んでいる。
(もしやそれは、私のことか?)
クラウスがチラリとルーシェを見る。ルーシェは慌てて首を振った。
「本日は他の場所に行っておりますので、晩餐にはお呼び出来ないかと思われます」
「どうしてもダメなのか?俺が直接行って話をする」
その言葉にルーシェはギョッとしてしまう。
あの時はジェフが病気で仕方なく代理をしたのだ。気に入って貰えたのは嬉しいが、自分は専門の料理人ではない。
中々引き下がらないライオルに、クラウスが困り果てていた。
見かねたルーシェが思わず口を挟んでしまう。
「申し上げございませんが、本日は怪我をしておりますので、お作り出来ません」
「ルー!」
「まさか……お前があの時の料理人か?」
「左様でございます」
「これは本気で欲しくなってきたな」
「はっ?」
ウィルソンがルーシェを守るように抱きしめる。
「ウィ、ウィル様?」
「ライル……」
見たこともないような怖い顔で威嚇しながら、凄まじい殺気を放つウィルソン。
ルーシェはその様子に驚いてしまう。
「流石ウィルが選んだだけあるな。手に入れるだけの価値はある」
腕を組み、獲物を狙う動物のような目でルーシェを見る。
怖い。
本能的にそう思った。この瞳に捕らわれたら、ウィルソンと引き離されてしまいそうで。
ルーシェもウィルソンにギュッとすがりつく。
「無理やり奪うような真似はしないさ。ようは俺に、着いて来たいと思わせればいいんだろう?」
ニヤリと笑い、ウィルソンを挑発する。
「何度も言うが、彼女は私の婚約者だ。ライルに着いて行くことはあり得ない!」
「まだ婚約者だろ?」
バチバチと音が聞こえそうな程の二人のやり取りに、ルーシェはソッとため息を吐く。
どうやらまた大変なことに巻き込まれたようだ。
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