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会場
しおりを挟むどこへ呼ばれても恥じない格好をして望んだ伯爵家のパーティー会場。
この日はオルノス侯爵家とも親交の深い、メナード伯爵家のパーティーであった。
すでに会場となるメナード伯爵家のパーティーホールにはたくさんの人が集まり、ミレールたちも入口から会場入りした。
「ねぇ! あの人って、エボルガー侯爵令嬢?!」
「まさか……。あの方は、ここまで上品でエレガントな装いなどできないはずだわ!」
「オルノス侯爵夫妻と共に入場したということは、御子息がエスコートしているのはエボルガー侯爵令嬢で間違えないな。劇的に変わったと噂されていたが……、あそこまで変わるとは」
「若かりし頃のミランダ夫人を見ているようだ。彼女の美貌は今でも変わらず健在なままだからな」
「ノア様がエスコートしていらっしゃる方が、やはりエボルガー侯爵令嬢のようよ。ご結婚されたというのは本当みたいね!」
噂話や醜聞が好物な貴族にとって、ミレールの存在は恰好の的だろう。
(どこへ行っても、大体の反応は同じね……)
王宮でもお茶会でも、他人の態度はさほど変わりなかった。
社交の場に出るのならばこうした噂話は付き物だ。
これまでも散々言われてきたが、やはり聞いていて気持ちいいものではなく、ミレールの心に暗い影をおとす。
エスコートしていたノアが立ち止まり、ミレールの手を取って、屈みながら自らの口元に寄せている。
「気にするな。俺がいるだろ?」
気遣ってくれるノアの言動に、ミレールの荒んでいた気持ちが次第に和んでいく。
「えぇ。ノアが隣にいてくれると、とても心強いです」
ノアの凛々しい顔を見上げて、にこりと優雅に笑ってみせた。
「あんたはそうやって笑っていればいい」
ぐいっと腰を寄せられてノアの顔が近づき、耳元でそう囁かれる。
「っ、――はいっ」
ドキドキしながら返事返したミレールの耳元から顔を離したノアに至近距離で笑いかけられると、さらに心拍数が上がっていく。
(距離が近すぎて、落ち着きません……!)
だがノアのおかげで、嫌な気持ちはどこかへ吹き飛んでしまった。
先に進んでいたオルノス侯爵夫妻は少し先で止まっており、誰かと話している。
「オルノス侯爵閣下! よくぞ我が家のパーティーに来てくださいました!」
「メナード伯爵。招待いただき、感謝する」
主催者であるメナード伯爵と挨拶を交わし、ノアの妻となったミレールも紹介された。
「噂には聞いておりましたが、このように美しいご令嬢を御子息の妻にできるとは……羨ましい限りですな」
「はははっ! ミレールは本当に素晴らしい義娘です。我が息子にはもったいないほど謙虚で慎ましやかだ。噂など、やはり噂に過ぎないということを、改めて痛感させられたよ」
恰幅のよいメナード伯爵とオルノス侯爵の話を周りの貴族達は耳を澄まして聞いていた。
それもあり、オルノス侯爵はわざと強調し、ミレールが噂されるような人間ではないと訴えてくれた。
「えぇ、本当ですよ。主人の言う通り、ミレールはこんなに美しいのに、心まで清らかな女性なんですもの! 私も義母として、これほど誇らしいことはありませんわ」
オルノス侯爵の隣で、ノクターンも声を上げて発言してくれていた。
ミレールが世間で散々な言われ方をしていることを、二人とも知っているのだろう。
(お義父さま、お義母さま……ありがとうございます!)
元々のミレールの評判なので仕方ないと割り切っていたが、二人の気遣いにじわりと目頭が熱くなる。
こうした公の場で言ってくれるのも、ミレールを尊重してくれてこそのものだ。
「そのようですな。私も初めてお目にかかりますが、お二方の仰っていることがよく分かります」
メナード伯爵の発言がどこまでが本音かわからないが、そう言ってもらえるだけ、ミレールはホッとしていた。
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