上 下
168 / 169
番外・シャルロットの休暇 (短編)

竜人王様と、元国王陛下と元王子(前編)

しおりを挟む
 今朝早く、竜人王様からの呼び出しがあった。
 朝食を終わらせて、竜人王様が待つ王の間を目指した、久しぶりに王城の中を歩くわたしたち。

 リズ様がある通路に差し掛かると、辺りを見回した。

「そういや、この廊下でシャルロットちゃんに出会ったんだよね」

「あぁ、俺たちのことを見て美形さんとイケメンさんなんて、呼んだんだよな」

 兄弟は昔の思い出を話しだす。それは、わたしの恥ずかしい思い出だ。

 反論するのなら。そのときはクレア元殿下に酷いことを言われた後で、ここが乙女ゲーム⁉︎ だとパニックになっていた時だ。

 でも、初めてみた2人は本当に美形でイケメンだった。

「ほ、本当のことだもの。わたしは見たままのことを正直に言っただけよ、美形さんとイケメンさん!」

「なんだよ、俺にぶつかっておでこ真っ赤にしてたくせに!」

「そうそう、真っ赤だったね」

 そのことまで覚えてるんだ。

「もう、シーラン様とリズ様は忘れてください!」

 嫌だね! っと逃げ出した2人を追っかけた。その後ろでは私達を見て呆れるリオさん。

「逃げるな! 2人とも待ちなさい!」

 ここでみんなに会えたから、わたしのいまがあるんだよ。学園は全然通えなかったし、悪役令嬢みたいなことは出来なかったけどね。

 ほんと、どんどんと乙女ゲームから外れていっちゃうし、わたしに魔法が使えて、竜人の国を救っちゃうなんて思わなかった。


 なんて、みんながいたから竜人の国を竜人王様を救えたんだ。


 竜人の国を救った後に毒花とかの問題が出てきて、必死に足掻いて、手を繋いで、平和になった国。

 
 もう、大変なことばかりだったよ。


 この世界はゲームではなく、わたしの住む世界。これからもずーっと、みんなと歩んでいく世界なんだ。


 ーー大切なみんなにも、愛する人にも会えたからね。


 ♢


 王の間に付き扉を開けた。早朝でも日が入らない王の間は薄暗い。

 しかし、竜人王様はシャンデリアのろうそくをつけるのが面倒だったか。

 灯りの魔法を使い王の間を明るくさせて、寝巻きのまま王座に肘を掛けて座っていた。


「よく来たな、小娘、チビども!」

 
 緊迫しない雰囲気とあのお姿……スノー王妃が見たら怒られますよ。
 でも、このまったり感はこの国が平和だと、言っているのかもしれない。

 わたしはスカートを掴み、シーラン様達は胸に手を開けて会釈をした。

「おはようございます、竜人王様」

「今日は何用で俺達をここへ呼んだのですか?」


「うむ、ワレは忘れておった。あやつ達の病状も回復した、このまま牢屋に入れておくのもな。それで、あの2人をどうするか決めてくれ」

 ……うん?

 まったく話が見えない。竜人王子様は誰のことをおっしゃっているの?
 
 それはみんなも同じのようで、話が見えない上に、謎の2人の話に首を傾げていた、


「あの竜人王様に質問します。2人とは誰のことをおっしゃっているのですか?」


「あぁ、2人とは人間の元王国と王子のことだ」


 竜人王子様は言い終わると手のひらを出し、そこに鏡のような物を出現させた。

 その鏡に映されたのは丸々に太った2人。


 ーーまさか、あれが⁉︎


 それにそこは牢屋の中なの? と聞きたいくらいになんでも揃っていた。
 牢屋の中で2人はゆるゆるな服を身につけて、ベッドに寝転がってだらしなく本を読み、何か食べているもよう。


「「竜人王様⁉︎ 本当にあの2人が元国王と殿下ですか? 見る影がないです!」」


 余りの衝撃で、鏡に指を刺して王の間で叫んでしまった。


「すまぬ、あまりにも此奴ら煩いからな。黙らせようと、手をかけ過ぎてしまったようだ……」


「手をかけすぎですよ、竜人王様!」

「ほんと、これは酷い!」

「これが元国王と王子……見る影がありませんね」
 

 すべて竜人王様のせいだわ。


「だから、謝ったであろう? 此奴らの処分と言うか……これからどうするかを、お主らで決めてくれとも頼んでいたであろう? で、どうする?」


 ーーで、どうするって……


 そんなこと色々ありすぎて、毎日が忙しくて、2人のことなんて忘れていたわ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」 婚約者との茶会。 和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。 獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。 だから、グリシアも頷いた。 「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」 グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。 こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?

曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」 エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。 最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。 (王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様) しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……? 小説家になろう様でも更新中

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。