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第四章 獣人の国に咲いた魔女の毒花(竜人王祭編)

第2話

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 毒花と赤い花が減ることなく増えていたーーそれは獣人の国だけでは止まらず。
 竜人王様の国、魔法協会のある国、錬金術などのいる国、そしてアル様の故郷のエルフの国にまで広がっていた。
 
「やはり、青の花が原木一本では特効薬のできる量が足りない。今は花を焼き払うしかありませんね」

 アル様はそう決断して魔法協会から魔法使いが派遣された。
 そして各国の毒花と赤い花を火の魔法での焼き払いが始まった。その後は誰もその地に足を踏み入れない様に、障壁を張るという苦肉の策を取っていた。

 しかし、毒花や赤い花の量が多く魔法協会の魔法使いが回らない。
 痺れを切らした人々が真似をして花を消そうと火を放つーーしかし、その花は改良されており灰になるだけだった。
 その灰が地面に落ちると、そこから多くの芽を出し毒花に赤い花を咲す。燃え残った灰に触れるだけで体に毒が回る。
 赤い花に関しては、知るもの誰もが口を閉ざす。

 火を付け触ったものが多くなり、アル様は声を上げて人々を止めた。

「普通の火ではダメです。魔法を使えない人々は決して、花には手を出さない様にお願いします!」

 アル様一人では手が回らなり、師匠に頼み蟲声を各国へ飛ばし伝えた。

 ♢

 そんな中、今日の午前中にアル様からの連絡が入り魔法協会に集まった。アル様から今からエルフの国に行き、毒花、赤い花の根絶やし実験をするという内容だった。
 その実験の内容はこうだ。毒花に赤い花を焼き払い、そこにアル様達が集めた【魔吸根】を使い青桜の木を植えて咲かせる。
 青桜がその土地に根づけばその木に精霊が宿り、不思議な力を発揮してその土地の浄化をする役目になるのだとか……
 アオさんのいた土地ではわからないが、実際に他の土地で大昔ーー人間同士の争いで血に濡れた呪われた土地になり、人々が住めなくなってしまった。
 そこに緑の神が青桜の花の木を植えて浄化をしたのと、アル様が探し出した歴史書に記されていたらしい。
 今回は、その言い伝えが本当かどうかを、試してみることとなった。

(青桜の木を咲かせるのは私の役目だ……)

 精霊が宿り、土地の浄化が上手くいけば青桜の木を増やしていく。そうなれば花がもっと手に入り、レシピさえ知っていればその国で特効薬が作れるようになる。

(特効薬がすぐに手に入れば苦しむ人が減る)

 アル様達は竹ボウキでの移動。私はシーラン様に抱えてもらい、空からの移動をしていた。

「南の国に入るのは初めてだわ」
「俺もだ……この実験うまく行くといいな」

 シーラン様に抱えながら頷いた。あれからアル様は毒花と赤い花の対応の他に、人を使い各国中で兄を探してはいるが……見つからないと言っていた。どこかに身を潜めて機をうかがって、わたしの中のルルさんを狙っているのだろうか?

(胸の中がざわつく、なにか起きるそんな予感がした)

「シャルロット……どんなことが起ころうとも俺が守る」
「ありがとう、シーラン様」

「そのために竜人王様と兄上達とで訓練をしているんだ、俺は前より強くなった遠慮なく頼って欲しい」

 彼見上げると自信ありげに微笑んでいた、並んで飛んでいるリズ様とリオさんもだ。

「はい、存分に頼らせていただきますね」

 そう言い、彼の胸に頬を寄せた。

 ♢

 魔法協会からは三十分ほどかかり、問題の草原に着いた……野球場くらいの原っぱに、獣人の国で見た時と同じ、毒花に赤い花がひしめき合って咲いていた。
 やはり何度見ても綺麗な花だ。しかし、これらが全て毒花だと思うと、ゴクリと喉が鳴る。
 アル様とラーロさんもいつしなく、緊張をしているみたいだ。

 前日にエルフの国の王に話を伝えにいったアル様はーーその王に「その辺は周りに集落も無い、存分にやって構わない」と言われましたと、わたし達に伝えてくれた。

「直ちに、ここを焼き払いましょう。私にラーロ、リズ君あなたもこちらに火の魔法『業火』ができると伺っています」

「はい、アル様。リオは俺の魔力補助をしてくれ」
「かしこまりました、リズ様」

 魔力補助? あ、魔力が枯渇しない様に分けて貰うのだと、ラーロさんの魔法講座のときに習ったわ。分けるときには、確か後ろから抱きしめるだったかな?

 え、だとするとリズ様をリオさんが後ろから抱きしめる。その光景を浮かべてしまい、ドギマギしたのだけど、実際は手を繋いだだけだった。

(後ろから、抱きしめないの?)

 二人の光景を見て困惑していると、ふっと近くから笑い声が聞こえた。
 まさかと見れば、ラーロさんたらニヤニヤ笑っているわ……もしかすると、体のどこでもいいから密着して、互いの魔力質量を合わせばいいだけのこと⁉︎

 ラーロさんからかったわね! と視線を送るとコクリと頷きニヤリと笑った。むむむっ……酷い。

 しばらく、ニヤニヤ笑うとラーロさんと、頬を膨らませたわたしがいた。それを見てアル様はため息を吐き、ハイハイと手を叩く。

「はい、そこまでにしてね。シャルちゃんとシーラン君は周りに火が回りそうになったら、水の魔法で消化をお願いしますね」

「はい、わかりました!」

 毒花と赤い花の【根絶やし】実験が開始された。
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