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第三章 獣人の国に咲いた魔女の毒花編

第28話

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「シーラン様‼︎」

男の魔衝撃を喰らって張ったばかりの障壁が割れた…シーラン様の苦痛に耐える声が聞こえる。

外に一歩でも出ようとすれば、気が付き、みんなはこっちを向く。

「出て来るな、シャルロット‼︎」

「耐えて、シャルロットちゃん」

「そこでお待ちください」

私を守る為に傷付いた体で私に来るなと言う。そんなみんなを見て泣かない様に歯を食いしばった。

私だってみんなの為なら頑張るよ、でも、あの男は私を狙っている、捕まるわけにはいかない。
 

「シーラン、無理をするな‼︎」


リズ様の声に窓近くまで駆け寄った、障壁を幾度も張り壊されて、耐えるシーラン様。


それを見て愉快そうに笑う男。


「うーん。ここまでかなぁ? もう竜よ魔力が消える頃だろう! お前はよく持った方だよ、でも、弱いなぁ」


「うるさい。まだだ、俺はまだやれる。守るんだ…シャルロットを‼︎」


「シーラン様やめて‼︎」


窓にしがみ付き声を上げて外を見ていた。


私もみんなと戦いたい‼︎

みんなを守りたい‼︎


トッ……トッ……クン…トッ……トックン、トックン…‼︎ 


 な、なに?


「きゃぁぁ!」


突如、熱い炎の様な熱に体が包まれた!

(あっ、ああ胸が焼ける様に熱い……)

私はその場に立っていれなくなり、胸を抑えて膝から崩れ床に倒れた。


胸の辺りが熱い、焼ける様に熱い!


私の魔力の変化にリズ様が気がついたのか、屋敷を見た…いままでいた窓枠に私がいないことに気がつく。

「シャルロットちゃん‼︎」

「リズ様どうしました」

「リオ…シャルロットちゃんの魔力がおかしい!」

そうわかっても襲いかかってくる、人々を押さえ込んでいて身動きが取れない。

シーランは男と対峙していて動けない!

シャルロットちゃん!


「…はぁ、はぁ」

はぁ熱い…

でも、この熱を私は知っている。前に…竜人王様に聖女の力を貰った時と同じ熱さだ。


……体の中の聖女様は私に何かを語り掛けている?

私に何かを教えようとしているの?

だったら教えて欲しい。みんなを…この町の人を助けたい。
 

〈…ほ…た……て〉


声が聞こえそうな時に外で爆発音がした。


「くはっ、誰だお前達は‼︎ 後ろからとは卑怯だね、必死過ぎ、お前達は必死すぎだ!くらえ‼︎【魔撃弾】」

男が攻撃を受けて、幾つもの【魔撃弾】出す。

それをシーラン様は手をかざして……


「【障壁】」


【障壁】を出して【魔撃弾】を受ける。


「もっともっと受けろよ、竜…あはは、あはは!」


突如男の声と多くの魔力を感じ、その後にシーラン様の魔力を感じた。


男とシーラン様との魔力差があるシーラン様が危ない!

その時声がした。

「数人でここを覆う障壁をいますぐに張れ。俺達でリズ王子、シーラン王子、リオをお守りするんだ!」


「はっ!」

「畏まりました!」


「「【障壁】」」


シーラン様達を守れと外から声が聞こえ、シーラン様とは違うたくさんの魔力で障壁が張られた。

誰かが来てくれたみたいだ!


よかったこれで……


「シャルロットお嬢様、どうなさったのですか!」


声と足音がして薄め目を開けるとマリーさんが、私に手を伸ばして体を触ろうとしている。

それを私は手を伸ばして拒否した。

「ダメ、マリーさん⁉︎ いま私に触っては…私の体は燃える様に熱くなっているから、火傷をしてしまうわ」

その拒否した手を握るマリーさん。

「大丈夫です、シャルロットお嬢様の手は熱くなんてありません」

嘘だ…マリーさんの手が赤くなってる、やめて触らないでと手を振っても、マリーさんは決して離さなかった。

「シャルロットお嬢様がいま必死に聖女の試練を受けているのに、何もできない私はお嬢様の手を握ることしか出来ません」


「聖女の試練?」


「アル様が仰っておりました『最初の熱は拒絶反応じゃないかな、それが終わり今度は聖女としての試練が来るかも。生まれ持った力ではないからね…それを使うとなると相当な試練があるんじゃないかな?稀な聖女の力だから』と仰っておりました」


だとすると…この熱に打ち勝てば私は聖女の力が使える様になる?

さっき微かに聞こえた声は〈この炎に熱に打ち勝て〉と言ったのかも。


だったら私はこの熱に打ち勝つしかない‼︎


   ♢♢♢


「…くっ、はぁ!」

「シャルロットお嬢様‼︎」

「マリーさん大丈夫だよ。みんなが外であの男と戦ってるのだもの私だって戦う、マリーさんもいま戦っているでしょう」

そうですねと、頷くマリーさんを見て微笑んだ。

マリーさんはいま外に、コッホ騎士団長が率いる隊が来ていると教えてくれた。

コッホ騎士団長より一足先に戻ったマリーさんは男に捕まり、お面と衣装を着せられて操られていた。人間に混ざり吹き飛ばされ壁に激突をした時に、周りの人間とは違い術が切れてマリーさんは正気に戻ったと教えてくれた。

人間に手を出せず出るタイミングを測り、町の入り口付近で待機中のコッホ騎士団長と隊の人。人間と一緒にマリーさんが吹き飛ぶ姿を見て、キレてコッホ騎士団長が男に突撃をしてしまったらしい。

「ここにいては危ない。マリーはシャルロット様のところに行くんだ!」

コッホ騎士団長に言われて、マリーさんは私のところに来てくれた。 
 
「シャルロットお嬢様知っていますか?この事で私も普通の人間では無いことが分かりました」

普通の人間⁉︎

「…あ、そっか。ふふっ、マリーさんも私と同じだね」

ええ、とマリーさんは微笑んだ。


「…ふぅ…くっ…ふぅ」

「大丈夫ですか? シャルロットお嬢様」

「うん。大丈夫だよマリーさん」

気を抜くと炎の熱にやられて気を失いそうだ、喋り続ければ気が逸れて大丈夫かもと、マリーさんと何気ない会話をしていた。


〔…あーっ、あ、チビ竜、シャルちゃん聞こえる、聞こえたら返事をしてください〕


声が水晶玉から聞こえた。


「アル様⁉︎……聞こえてますよ」


〔シャルちゃん、中はいまどうなっていますか?〕


「シーラン様とリズ様、リオさんが男と戦闘中、いまはコッホ騎士団長が率いる達が合流をして一緒に戦っています」
 

〔そっか…こっちは黒鳥を倒して、男が張った障壁を壊そうとしているんだ〕

「そうなんですか」


すぐ近くにアル様達がきている、そう思うとホッとした。


〔シャルちゃんは大丈夫?何処か怪我をしていない?〕

〔こら、エシャロット解除術に集中して〕

〔はぁーい、わかってるって。師匠これどうしたらいいの?術式が違うんだけど〕

〔大丈夫だ、儂の教えた通りやればいい〕


〔ごめんね、シャルちゃん。中の奴が使う術が私達が使う術と少し違うから、正直手こずっているよ〕


アル様達が手こずってる⁉︎

〔でも、もう少ししたら解除出来るから待っていてね〕

「はい」

そこで会話を終わろうとしたのだけど、マリーさんが話しかけた。

「アル様聞いてください…シャルロットお嬢様に聖女の試練が…」

「マリーさんそれは言っちゃ、ダメ」


止めたけどアル様に聞こえた後だ。


〔え、シャルに聖女の試練がいまきているの?〕


「はい、お嬢様の体が炎の様に熱く燃えています」


〔シャルちゃん…無理しちゃダメだからね〕

〔小娘…〕


〔無理しないでね、シャルちゃん〕


「無理はしません…けど、私はこの熱に打ち勝ちたいのでわがままを言わせていただきます。私にどんどん話しかけてください!」


〔……わかったわ。シャルちゃん〕


〔小娘、そこで待っていろ、いますぐに側に行ってやる!〕

〔こら、ロワ。1人で魔力を上げない!〕

〔竜人王様…ダメですって!〕

〔若き竜人王よ…お前は、前竜人王とまったく変わらないな、協調性がない!〕

〔すまぬ…〕

竜人王がみんなに攻められてる。

「ふふふ、はは。竜人王様笑ってごめんなさい。でも、ありがとうございます。私頑張る」

「はい、お嬢様頑張りましょう」

その後もみんなは私に話しかけてくれた。魔法の事、竜人王様の失敗談、エシャロットさんの美容講座など色々あって笑った。


外ではシーラン様、リズ様とリオさんは守られて、コッホ騎士団長が率いる隊が男と戦闘中。

赤い月が昇る暗闇の外では、アル様達がそれを壊そうと奮闘中だ。

私にはこれしか無い、聖女の試練を乗り越えて力を手に入れる。

この試練に打ち勝ってやるんだからね‼︎

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