上 下
89 / 169
第三章 獣人の国に咲いた魔女の毒花編

閑話 青桜の場所 前編(アルボルと師匠)

しおりを挟む
(私達も戻るね)

(帰ります)

(じゃあーね)

竜人王様は癒しの木の下で静かに眠り体力を回復している、精霊さん達はルルさんに頼まれた役目を終えて、元の場所に帰って行った。

「またね」

彼女達が魔法陣から消えて行くのを見送り、癒やしの木の下で、持ってきてくれた図鑑を開いた。


ーーーその頃。

アル様は北の国の奥に住む師匠の所を訪ねていた。それは青桜の場所を知るためだ。

飛んできたホウキを降り、木造の一階建てのいかにも魔法使いが住みそうな佇まいの、その木製の玄関を叩いた。

「はーい」

中からは師匠とは別の聞き覚えのある声が帰ってくる、まさかと思い玄関が開くのを待った、やはり玄関が開くとそこには見知った顔がいた。

「あら、アルボルじゃない。どうしたの?」

「あらじゃなですよ。どうしてここにエシャロットがいるのですか?」

「レクオールさんとは、最近、お茶飲友達なったのよ」

そう言ってエシャロットは丸い目を細めた。ここに訪れる前に連絡を入れても、まず、いた試しがない、いつも客を待たせると噂が絶えない。変わり者としても有名な師匠にお茶飲友達?

「エシャロットお客って誰だった?薬屋?薬草屋かい?」

奥から師匠の声がしたけど、出てくる気はないのか、師匠の魔法の声蟲(せいちゅう)が飛んできた。

「違うわ、アルボルよ」

「へ、なーんだアルボルかぁ…いらっしゃい」

声蟲からの声で、歓迎されたのかされていないのか相変わらずの師匠だ、見た目は私と変わらないが歳がかなりは上だろう、私の子供の頃から見た目が変わっていない。

「アルボル、今日は何の用なんだい?」

私の周りを師匠の声がする声蟲が飛ぶ。会話をするには便利ですけどね。

「師匠の顔を見ながら話をします」

「へいへい、キッチンにいるよ」

エシャロットと声蟲にダイニングキッチンにまで案内をされた。声蟲は師匠の前に止まると、役目を終えたのだろうふっと消えた。

「アルボル好きに座って」

と言い、キッチンに立つエシャロットその背中を眺めながら聞いた。

「話の前に1つだけ聞いてもいいですか?エシャロットとはどういう関係なのでしょう」

「あーっ、茶飲友達だなあ、エシャロット」

「そうよ、それ以外に何があるって言うのよ、アルボル」

2人がそう言うのならそうなのだろう、しかし、お茶飲友達…師匠とエシャロットとは変な組み合わせ…あっ。

「もしかして…青桜の特効薬はやはり、師匠のお作りになった薬だったのですね」

「そうだが…儂がエシャロットを気に入って最後のを渡した」

「最後ですか……師匠お願いがあるのです、青桜の場所を教えてください、青桜の特効薬が必要なんです」

もしかすると、エシャロットにも話を聞いて知っているかもしれない、獣人の国に咲く魔女の毒花と赤い花の事と、私の兄貴のことも。

「アルボル…あの花はもう咲かないし、咲けないだろうよ」

「どうして!」

「お前に青桜の事を教えなかったのはその木がある場所だ、儂がお前達双子を保護した…場所。ラームス国にあるんだ」

「……ラームス…国」

あの嫌な思い出しかない忌々しい人間の国。
いまから昔ここには国などなかった…亜人種族達が種族ごと別に仲良く暮らしているだけだった。

そこに子供をさらうい、見世物として扱う人間どもが入り込んで来た。私と兄貴は両親を殺されさらわれた。

珍しい双子のエルフ。
女の子か男の子かわからない中性的な見た目。さらわれたすぐに拘束の魔法がかけられた首輪をつけられた。

子供の魔力では抜け出せない強力な魔法。
私と兄貴は日々見世物になっていた…ある時には女の子の格好、またある時には男の子の格好、裸の時もあった…それを人間は「お人形のように可愛い」と、二ヤニヤと笑い私達を珍しそうに眺めていた。

兄貴と私は恐怖に怯える毎日…一層このまま気が狂ってえば楽になれる、そう思わずには入れない日々を送っていた。

『誰か助けて』

見世物になって丁度、一年が過ぎた頃に私達は師匠と前竜人王に助けられた。師匠達はいまの亜人種族の場所に、人間が入れない国を作る計画を立てていた。

程なくして真ん中に竜人王の国、北にはリザードマンの国、西に獣人の国、南にエルフの国、東には魔法使い、魔女の国が出来ていった。

各所に目を光らせ人間が入り込めない国が出来た。師匠は魔法使いと魔女の国を任されていた、時が過ぎ、世代が変わりいまは私が指揮を取っている。

前竜人王から引き継いだ、若き竜人王ロワが誰でも来いと言い出した時は頭を抱えたね。

「師匠…そこに行けば青桜の木はあるのですね」

師匠は眉をひそめて首を振った。

「100年以上前まで綺麗に咲いていた…しかし、咲かなくなってしまったんだ青桜が…そして伐採された」
 

  ♢♢♢


青桜の木が伐採されたと悲しげに師匠は言った。

「伐採…青桜の木は切られてしまったのですか?」

「その木の場所がな…人間のラームス国の王城の旧庭園の真ん中なんだ…その時の人間の王が咲かないなら切ってしまえだとよ」

「酷い話よね、咲かないからって切っちゃうなんて…」

キッチンでお茶の他にサンドイッチを作っていたエシャロット、師匠の前に置いた紅茶のカップがわかるように師匠の手をとって添えた。

「師匠…目が?」

「見えないわけではない、見たくないんだよ。この話をすればおかしい奴だと、儂の事をアルボルは思うだろうな」

師匠はそう言って紅茶を飲んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。