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 王城から帰り部屋にいると、コンコンとお母様が部屋に手のひらサイズの箱と手紙を持ってやってきた。

「ミタリア、リチャード殿下から贈り物が届いたわよ」

(また、王子から?)

 お母様からいつも届く花束ではなく、手のひらサイズの箱を受け取った。それを開けると中に王子とお揃いの銀製の腕輪が入っていた。一緒に渡された手紙には「これなら簡単に外れないから普段の時に使って」と一言王子の直筆で書かれていた。

(普段? 王城に行く時もかな?)

「さあ、ミタリア。リチャード殿下にお礼の手紙を書きなさい」

「はい、お母様」
 
 王子のプレゼントは私だけではなく、お父様には高価な万年筆、お好きなお酒。お母様には王都で人気の手鏡、化粧筆などがセットになった化粧ポーチ。

 両親は王子からのプレゼントだと、大喜びで大切に使っていた。王子はお腹をモニモニするだけの意地悪王子だと思っていたけど、素敵なプレゼントは嬉しい……な。

 知らないうちに箱から出して、ブレスレットを手にして、にまにましていた。

(はっ! いやいや、優しいのは今だけよ。ヒロインに会えば王子も変わるわ!)

 でも、プレゼントをもらったのだからお礼に、恋愛の本と狼の絵柄を刺繍を施したハンカチにした。手渡しだと恥ずかしいからお礼の手紙と一緒に王子へ送った。


 翌日の昼下がり。王子の部屋でお茶をしていた。

「ミタリア嬢、本と可愛い刺繍入りのハンカチをありがとう。大切にするよ」

「はい、私も素敵なブレスレットをありがとうございます」

 こくんと頷き、素敵な王子のイケメンスマイルに目を逸らしてしまった。

「ミタリアは平然と俺の前でへそ天するくせに、なに照れてるんだよ?」

「それはそれ、これはこれです」

「そう? 貰った本を読んだよ。好きな話で不覚にも涙ぐんでしまった……」

 たくさんの本を読んでいる王子も知らないだろうと、古い作品で私の好きな恋愛の本を渡したのだ。

(王子もその本で泣いたんだ)

「なんだよ、その顔。俺が泣いたのがおかしいのか?」

 私はぶんぶん首を振った。

「違います、私もその本で感動して泣いたから……殿下も同じだなって……嬉しかったんです」

 そう伝えると、うっ、王子は眉をひそめた。

「お前って……か、可愛いな。ちゃんと俺がやった、お揃いのブレスレットもつけてくるし」

 手を伸ばせば相手の手が掴めるほどの小さなテーブル。王子に手を取られて手の甲にキスされた。

「リ、リチャード殿下?」

「ミタリア、リチャードでいい」

(えっ、ええ?)

 びっくりている間に、プチっと私のブレスレットが外されて、ぽふんと私は獣化した。

(なっ、何?)

「これで、ミタリアの獣化は俺の手の中にある。勝手に違う場所で2度と獣化はさせねぇからな」

 抱っこされて、ぽん、とオフトゥンの上に放り投げられた。
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