上 下
26 / 35

にじゅうご

しおりを挟む
 そう私の試写会は終わったのだけど、エマ様はもう一つ金色の観察虫を出した。

「これね、お父様のだけど、面白いの見る?」

 と、始まったのはドラーゴ様たち会議の様子を映したものだった。

「サローナ、上座に座っているのがパパね」

 パパ? エマ様似の方が魔王様か。
 そのエマ様に似た男性の方の言葉で会議が始まった。

「第2回やられかた王選手権」

 やられかた王? 選手権?

「ちょっと嫌だわ。それ、見てはダメなものよ!」

「そうです、エマ様」

 ドラーゴ様とユバのお父様がお2人が慌てだした。

「ユバは見たことがあるの?」

「いいや、初めてだな」


 +


 エマ様が見ようと言ったのは、なんでも勇者との戦いで、やられた時にどうやってやられるかを四天王様と魔王様が競うというもの。

 見ていくとそれはシュールな映像だった。

 1人と1人勇者と戦い、敗れた後の敗北の言葉を言い、誰がいいかを決めているようだった。

 他の2人終わった後にドラーゴ様が手を上げた。

「3番ドラーゴいきま~す『ふっ、はははっ、私を倒すとは流石だ勇者よ……ぐふっ』と言った後に消えます」

 おーっ、と他の集まった人たちが手を叩く。
 その中で上座に座ったエマ様に似た、魔王は。

「ドラーゴは毎回、同じだな……でも、それが良い! 次!」

「4番ルチ行きます『参りました……勇者よ、さらばだ!』とこんな感じで良いですかな?」

「良い、最後に私だな……『勇者よ、よく我を倒した。これで、この世界の悪はいなくなる。この後の世界を良くするのも悪くするのもお前たち人間だ! 良い世界になると良いな……さらばだ!』でどうだ」

 1番大きな拍手が送られて、魔王様が1番に選ばれた。

「さすがは我らの魔王様だ、素敵なお言葉だ」

「ほんと素敵。人族がこの後、戦争もなく平和に生きてくれればいいのだけどね」

「そうだな、悪の根源となる私ーー魔王が倒れるんだ、後は自分たちで良い世界を作って欲しいものだな」

 と、魔王様の言葉で会議は終わった。

 その会議を見て私は不思議に感じた。
 どうして勇者にやられるセリフを四天王様と魔王様が考えているのか。

 魔王様たちは、やられることが前提なのか。

「サローナは、この会議のこと変に思った?」

「はい」

 私が頷くとエマ様は。

「私たちは長生きなの。ほんの100年しか生きない人族の勇者よりもはるかに強いわ。それに魔王はどう足掻いても悪にかなれない。人族の世界で何かあると魔王のせいにするから、だからどんな勇者が来ても『やられてしまいましょう』ってなったの」

「魔王様がいなくなったと思わせれば、私たちを襲って来なくなるわ」

「守るものもあるし、私たちとて戦いたくはないからね」

「サローナが持つ勇者の剣はね、この国のドワーフが使った物でね、それに切られると私たちの体力の三分の一だけが、見えるようになっているのよ」

 三分の一?

「皆さんは勇者よりも強いのですね」

「そうだな、今の話ではそうなる」

  みんなは普通に強いわよと笑った。

  

「この国で1番は初代様と勇者よね」

「そうね、私もサシで戦って負けたもの。かなり強いわ。その強い勇者が初代様の偉大さに惚れて、いまも一緒にいるわ」

 ドラーゴ様を倒した勇者様が、初代魔王様と一緒?

「サローナ、この提案は2人が考えたものなの。この世界が平和でいれるのは、私の曽祖父と曽祖母ーー初代様と魔王勇者様夫婦のお陰よね」

「いつまも仲の良い2人だ」

「俺も父上と母上と同じく憧れの人たちだ、サローナとそんな夫婦になりたい」

 そうなりたいと、微笑んで頷いた。


 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?

ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

その悪役令嬢、問題児につき

ニコ
恋愛
 婚約破棄された悪役令嬢がストッパーが無くなり暴走するお話。 ※結構ぶっ飛んでます。もうご都合主義の塊です。難しく考えたら負け!

【完結】幻姫と皇太子は身分を隠しお互いに惹かれ合う【全6話】

なつ
恋愛
幻姫。そう呼ばれているのは公爵家の娘カレン。幻と言われているのはただ単に社交界に顔を出さないと理由でそう呼ばれだした。 当の本人は「あんな愛想笑いの場の何が楽しいんだ」と自分のしたいことをして生きている。 襲われているカレンをたまたま皇太子が目撃し、助けようとするも自分の力で相手を倒す姿に惚れたのであった。 そう姫ではなくカレンは女帝に近いかっこいい女性。 男気が強いカレンと完全に心を奪われた皇太子との恋愛の話。

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

初恋と想い出と勘違い

瀬野凜花
恋愛
王都から領地に遊びに来ていた侯爵令嬢ソフィア・フェルノは、ある日公爵令息のルイス・ウォーレンと出会い、友だちになる。 ソフィアはフィーと名乗り、身分を隠してルイスと会い続けた。 王都に帰ることになったソフィアは、ルイスに別れを告げた。本当の身分を告げることができないまま。 ※小説家になろう様、エブリスタ様にも投稿しています。(外部リンク参照)

処理中です...