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幸せの帰り道 3
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レオが着いて来ないだろうと、言っていた彼女が。
魔法の国で、お別れした彼女が。
私たちよりも早く、ニャーロ街に先に着いていた。
なぜ? 私たちがここに来ることが、彼女にわかったのだろう。
「レオ、また会ったね」
「……はぁ」
人懐っこく、レオと私の後にくっついてくる彼女と、レオと同じくらいの長身でフードを被った二人が、彼女の後ろから着いて来ていた。
な、なんなのこの状態。
彼女はあの国の冒険者じゃないの?
何者?
「レオ、お昼だけど、何食べる?」
後ろを歩きながらズーッと私たちに話しかけてくるから。
私たちは街の人たちの注目を浴びていた。
それと、フードを被った長身のレオを含めたフード三人さんは。ニーャロ街の中で、頭ひとつ目立っていたからでもある。
レオは、レオで彼女に呼ばれても振り向かず、進んでいたのだけど。いきなり足を止めて振り向き。
「いい加減にしてください、ユズリーナ様!」
彼女をユズリーナ様と呼んだ。
+
街の中では目立つからと買い物を済ませて、私たちの荷馬車に戻ってきた。フードを被った二人は荷馬車の外に立ち、私たちは後ろに乗った。
乗って、いきなり声を上げたのは、ユズリーナ様と呼ばれた女性。
「レオはずるい、こんなに可愛い子と旅行をしているなんて! お父様から聞いたわよ、今度、この子と結婚もするんでしょ? わたしにも説明してよ!」
「ユズリーナ様、落ち着いてください。今回の旅は旅行ではなく、ティーの両親への結婚の挨拶です」
それを聞いた王女様は「まぁっ」と口元に手を当てた。
「そうだったの! で、ご両親は獣人レオとの結婚を許してくれた?」
獣人、レオ?
「ゆるすも何も……彼女の両親はすでに亡くなっておりますので、ご挨拶だけいたしました」
「あ、ごめんなさい……ティー、ごめんね」
「い、いいです……気にしないでください。……あのレオ、この方はレオのお知り合いだったの?」
誰が分からず話が先に進むから、1人だけのけ者のような気がして、思いっきり聞いてみた。
「驚きで、忘れていた。……ティーに紹介がまだだったね。この女性は俺たちのエルデ国の第二王女だ」
えっ、えぇ!
「エルデ国の第二王女様! わ、私、とんだ、失礼をいたしました……すみません」
床にぶつかるくらい、思いっきり頭を下げた。
「ティー、王女に頭なんて下げなくていい。最初に絡んできたのは王女だ。まったくいきなりあんな場所でSランクだと言うし、ティーに田舎娘だって失礼なことを言う、ほんと驚いたよ」
「それは悪かったわ。でも、レオがSランクは本当じゃない? だって見に行ったら、ティーがあんまりにも可愛いんだもの。それに田舎から出てきたって聞いていたから、それしか思いつかなかったの!」
「まったく、旅の間は面倒な事が起きないようにSランクは隠しているんです、いまはAランクとなっています。それに王女の絡み方は淑女らしからぬ下品でした。護衛のリンとエンも無理矢理、わがままを言って連れてきましたね」
レオに捲し立てられて、王女様は本当のことだったのか、ウグッと押し黙った。
その隣で、私は少しパニックっていた。
この女性が王女様で、護衛の方で、レオの知り合い?
「ちょっと待って、話をまとめると……皆様はレオの知り合い?」
「そうだよ、他の国でエルデ国の第二王女だとバレると大事になるから。だから、あんな下手くそで、変な芝居に乗るしかなかった」
「芝居が下手くそで悪かったわね」
王女様……下手くそでもなかったけど。
「そうだったんだね……びっくりした」
「ごめん、ティー。もう一つ言うと、ギルドでエルデ国に報告もしていたんだ」
「国に報告?」
話を聞くと、レオの森を守る仕事は国王陛下から直々に命名されて、ついた職。ギルドでモコさん達と手紙などで連絡しあって、森の状態を確認していたらしい。
「大変な仕事なのに、私のためルース村に着いて来てくれて。ありがとう、レオ」
「当たり前だよ。僕とティーは結婚するんだから、まず初めに両親に挨拶はしないとね」
レオと見つめ合っていた。
そこに「仲良すぎ!」と叫び、荷馬車の床を王女様はバンと叩いた。
「ほんとに本当なの? ティーはライオン姿のレオもちゃんと好きなの? 前のあいつのように、いまの姿が好きとか言わなわよね」
王女様にグイグイこれられた。
これは、私もちゃんと答えられる。
「わ、私はレオの全てが好きです。1番はライオン姿が好き……もふもふで可愛いし、温かくて、大きくて、優しくて……全てが好きです!」
「まぁ、レオ聞いた? 全部好きですって! ティー、わたしも、もふもふが可愛いのは分かるわ、モコは可愛い……マジで、半端なく、食べちゃいたいくらいに可愛い」
「ユズリーナ様……心の声が漏れてますよ」
ハッとして、レオの背中をバシバシ叩き。
「レオ、よかったじゃない! 今度はちゃんと素敵な人を見つけたのね。もふもふが嫌いだと、あいつに酷いことを言われて落ち込んだレオを、随分と見て来たから心配していたの!」
落ち込んだレオ?
アイリス様のことかな?
「そうだ、ユズリーナ王女。僕の心配はもう心配いらない。さぁ、王女は国に帰った帰った。モコが心配してるぞ、ちゃんと旅に出るって言って出て来たのですか?」
「言ったわよ、ちょっとレオに会いにいってくるって、物凄く止められたけど、無理矢理来てしまったわ」
「王女はティーよりも年上の癖に、いつまでたっても落ち着かない。いまに、モコに愛想尽かされますよ」
「それは困るわ! モコが好きだもの。お父様を説得して、いずれはお嫁にもらってもらうんだから!」
私が住む、エルデ国の第二王女様は、実に可愛らしい人だった。
魔法の国で、お別れした彼女が。
私たちよりも早く、ニャーロ街に先に着いていた。
なぜ? 私たちがここに来ることが、彼女にわかったのだろう。
「レオ、また会ったね」
「……はぁ」
人懐っこく、レオと私の後にくっついてくる彼女と、レオと同じくらいの長身でフードを被った二人が、彼女の後ろから着いて来ていた。
な、なんなのこの状態。
彼女はあの国の冒険者じゃないの?
何者?
「レオ、お昼だけど、何食べる?」
後ろを歩きながらズーッと私たちに話しかけてくるから。
私たちは街の人たちの注目を浴びていた。
それと、フードを被った長身のレオを含めたフード三人さんは。ニーャロ街の中で、頭ひとつ目立っていたからでもある。
レオは、レオで彼女に呼ばれても振り向かず、進んでいたのだけど。いきなり足を止めて振り向き。
「いい加減にしてください、ユズリーナ様!」
彼女をユズリーナ様と呼んだ。
+
街の中では目立つからと買い物を済ませて、私たちの荷馬車に戻ってきた。フードを被った二人は荷馬車の外に立ち、私たちは後ろに乗った。
乗って、いきなり声を上げたのは、ユズリーナ様と呼ばれた女性。
「レオはずるい、こんなに可愛い子と旅行をしているなんて! お父様から聞いたわよ、今度、この子と結婚もするんでしょ? わたしにも説明してよ!」
「ユズリーナ様、落ち着いてください。今回の旅は旅行ではなく、ティーの両親への結婚の挨拶です」
それを聞いた王女様は「まぁっ」と口元に手を当てた。
「そうだったの! で、ご両親は獣人レオとの結婚を許してくれた?」
獣人、レオ?
「ゆるすも何も……彼女の両親はすでに亡くなっておりますので、ご挨拶だけいたしました」
「あ、ごめんなさい……ティー、ごめんね」
「い、いいです……気にしないでください。……あのレオ、この方はレオのお知り合いだったの?」
誰が分からず話が先に進むから、1人だけのけ者のような気がして、思いっきり聞いてみた。
「驚きで、忘れていた。……ティーに紹介がまだだったね。この女性は俺たちのエルデ国の第二王女だ」
えっ、えぇ!
「エルデ国の第二王女様! わ、私、とんだ、失礼をいたしました……すみません」
床にぶつかるくらい、思いっきり頭を下げた。
「ティー、王女に頭なんて下げなくていい。最初に絡んできたのは王女だ。まったくいきなりあんな場所でSランクだと言うし、ティーに田舎娘だって失礼なことを言う、ほんと驚いたよ」
「それは悪かったわ。でも、レオがSランクは本当じゃない? だって見に行ったら、ティーがあんまりにも可愛いんだもの。それに田舎から出てきたって聞いていたから、それしか思いつかなかったの!」
「まったく、旅の間は面倒な事が起きないようにSランクは隠しているんです、いまはAランクとなっています。それに王女の絡み方は淑女らしからぬ下品でした。護衛のリンとエンも無理矢理、わがままを言って連れてきましたね」
レオに捲し立てられて、王女様は本当のことだったのか、ウグッと押し黙った。
その隣で、私は少しパニックっていた。
この女性が王女様で、護衛の方で、レオの知り合い?
「ちょっと待って、話をまとめると……皆様はレオの知り合い?」
「そうだよ、他の国でエルデ国の第二王女だとバレると大事になるから。だから、あんな下手くそで、変な芝居に乗るしかなかった」
「芝居が下手くそで悪かったわね」
王女様……下手くそでもなかったけど。
「そうだったんだね……びっくりした」
「ごめん、ティー。もう一つ言うと、ギルドでエルデ国に報告もしていたんだ」
「国に報告?」
話を聞くと、レオの森を守る仕事は国王陛下から直々に命名されて、ついた職。ギルドでモコさん達と手紙などで連絡しあって、森の状態を確認していたらしい。
「大変な仕事なのに、私のためルース村に着いて来てくれて。ありがとう、レオ」
「当たり前だよ。僕とティーは結婚するんだから、まず初めに両親に挨拶はしないとね」
レオと見つめ合っていた。
そこに「仲良すぎ!」と叫び、荷馬車の床を王女様はバンと叩いた。
「ほんとに本当なの? ティーはライオン姿のレオもちゃんと好きなの? 前のあいつのように、いまの姿が好きとか言わなわよね」
王女様にグイグイこれられた。
これは、私もちゃんと答えられる。
「わ、私はレオの全てが好きです。1番はライオン姿が好き……もふもふで可愛いし、温かくて、大きくて、優しくて……全てが好きです!」
「まぁ、レオ聞いた? 全部好きですって! ティー、わたしも、もふもふが可愛いのは分かるわ、モコは可愛い……マジで、半端なく、食べちゃいたいくらいに可愛い」
「ユズリーナ様……心の声が漏れてますよ」
ハッとして、レオの背中をバシバシ叩き。
「レオ、よかったじゃない! 今度はちゃんと素敵な人を見つけたのね。もふもふが嫌いだと、あいつに酷いことを言われて落ち込んだレオを、随分と見て来たから心配していたの!」
落ち込んだレオ?
アイリス様のことかな?
「そうだ、ユズリーナ王女。僕の心配はもう心配いらない。さぁ、王女は国に帰った帰った。モコが心配してるぞ、ちゃんと旅に出るって言って出て来たのですか?」
「言ったわよ、ちょっとレオに会いにいってくるって、物凄く止められたけど、無理矢理来てしまったわ」
「王女はティーよりも年上の癖に、いつまでたっても落ち着かない。いまに、モコに愛想尽かされますよ」
「それは困るわ! モコが好きだもの。お父様を説得して、いずれはお嫁にもらってもらうんだから!」
私が住む、エルデ国の第二王女様は、実に可愛らしい人だった。
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