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二十五
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こちらからは声はかけずに、頭を下げた。
おばちゃんは私を見据えたまま、ポロポロと涙を流して、手に持っていた元を全て落として私に抱きついた。
「良かった、ティーちゃんが元気そうで……」
「お久しぶりです、ミリおばちゃん」
「ティーちゃん、なんで何も言わずに居なくなったの。一年前、リオンの結婚式後に居なくなって、みんなで村中を辺りを探したんだよ」
「…………。」
それに私はなんて答えればいいの?「ごめんなさい?」当時の私にはショックが大きかった。心が傷付き、悲しみ、辛くて、この村にいることができなかった。
「迷惑をかけたことは謝ります。今日は両親への挨拶に戻っただけなので、すぐに村から出ます」
「また居なくなるの? 待って! ティーちゃんの家はどうするの? 両親の写真は?」
おばちゃんは私を必死に止めた。
「両親の写真だけ持っていきます……レオさん、行きましょう」
「出て行くなんて言わずに、その人と村に住めばいいのよ。気になるのなら、リオンに合わせないから」
私は「いい」と首を横に振った。
私は全ての想いを捨てて、この村を出たから、ルース村に戻るなんて選択肢はない。
隣のレオさんの手を取り、しばらく見つめ合った。
(私の答えは決まっている)
「ルース村には戻らず、旦那様の国で暮らします」
「ティー、行こうか」
「はい、レオさん。今日はミリおばちゃんに会えて良かった。おばちゃん、いつも両親のお墓を見てくれて、感謝いたします。数年後に村に来れたら、お墓を旦那様の国に移しますので……言葉が悪いですが。そのままにしておいてください。いま、両親にはそう伝えました」
必ず迎えに来ると両親に誓った。
「いや、私が好きでやってることなんだ。このままさせて、お願いティーちゃん!」
「ミリおばさん。そんな、気にしなくていいんです。ミリおばちゃんは、ミリおばちゃんの時間を大切にしてください。……では、失礼しますね」
「ティーちゃん」
「おばちゃん、いつも両親のお墓を手入れをしてくれて、ありがとうございます。また、会いましょう」
「うん、うん。またね、ティーちゃん!」
おばちゃんに頭を下げて両親のお墓を後にした。このまま宿屋に戻ろうと思ったけど、家に置いていった両親の写真だけ持っていこうと思い、レオさんに伝えた。
「レオさん、少しだけ私の元家に寄ってもいい?」
「いいよ、僕もティーの家を見たい」
手を繋ぎ、2人で並んで、私の家に向かった。
+
「家まで、誰にも会わなかった」
もし、会ったらなんて言おうか、考えていたけど、拍子抜けした。
「……もしかして、僕が怖いからかな? 余所者だから」
「たまたまだよ、レオさん」
「たまたまか、そうだね」
ちょうどお昼時だったからか、村の人に会わずに家に着いた。
お墓と一緒で、綺麗に草が刈られた元家。
(ここも、おばちゃんが手入れしてくれたのかな? ありがとう、ミリおばちゃん)
「レオさん、ここが私の家です。鍵は空いているとも思うので、両親の写真を持ったら、すぐに村を出ましょう」
「わかった……ここがティーの家か」
レオさんは家を見上げ、入る前に玄関前で頭を下げた。
私はレオさんの手を引き。
「入ろっ、レオさん」
「あぁ、おじゃまします」
「レオさん気にせず、靴のまま上がって」
一年以上ぶりの家。出て行った時と変わらない。あの日に捨てていったブーケとベールが、食卓のテーブルに乗っていた。
レオさんはそれを手に取り。
「これ、ティーが作ったの?」
「うん、全部私の手作りなの。縫い目がバラバラでょう?」
「綺麗に作ってあるよ、記念に持って行く?」
私は横に首を振る。
「これは他の人を想って作ったものだから、ここに置いて行く。レオさんとの結婚式には、ちゃんとレオさんを想って作った物を……って、あっ、言っちゃった」
リコさんに習いながら、ブーケとベールは自分で刺繍を入れたり、花を束ねて作り始めていた。
「僕を想ってか、嬉しいな。いまから楽しみにしているよ」
「はい、楽しみにしていてください」
+
タンスの上の両親の写真を手に取り、レオさんに見せた。
「私の両親です。お父さん、お母さん私の愛する人、レオさんです」
「初めまして、レオと言います。ティーのお母さん、ティーにそっくりだね。でも目元はお父さん似かな?」
「そう? 似てるかな」
「似てる、優しい目元とかね」
しばらく2人仲良く、両親の写真に語りかけていた。
乱暴に玄関が開く音がして振り向くとそこには、少し髪が伸びて、立派なスーツを着たリオン君がいた。
彼は急いできたらしく、ハァハァと息が切れていた。
「ティーが、ルース村に帰ってきたと聞いて、走ってきた」
ミリおばちゃんが伝えた? でもおばちゃんは男爵のお屋敷より離れた、お墓で別れたから伝えに行けない。
村の中を歩いて来たから、誰か見て彼に伝えたんだ。
「お久しぶりです、マント男爵様」
スカートを持ち、レオさんに教えてもらったカーテシーをした。
終わった後、レオさんに力強く、腰を引き寄せられた。
それを見た彼は目を細めた。
「そいつは誰だ! お前、俺がいないところで、浮気したのか?」
「浮気? 彼は私の旦那様です。男爵様には関係ありません。私の旦那様の前で、浮気なんて変な言わないでください」
「旦那ってなんだよ?」
声を上げて、リオン君は私を掴もうとした。
すかさず、レオさんが腕の中に守ってくれた。
彼には奥さんがいるはずなのに、なぜ?
「男爵様、私たちは用が終わったので失礼します。男爵様もマント家にお帰りください、奥様が心配されますよ」
「心配か……あいつ妊娠してから五月蝿いんだよ! アレするな、コレするなって! どこに行くの!って。俺が行くところまで口出してくる」
彼の奥様ーーセジール様が妊娠したんだ。
「マント男爵様、おめでとうございます。奥様を大事にしてください。……では、私たちは行きますね。レオさん行きましょう」
「あぁ、ティー」
「はぁ? 何言ってんだ? ここはお前の家だろう? 何処に行くきだ?」
「何処に行くって。旦那様のレオさんの国に戻ります」
「そいつの国?」
結婚していると(まだ、だけど)言えば、彼も屋敷に帰るだろうと思っていた。だけど、レオさんと家を出ようとした、私の手を「待て」と彼は掴んだ。
おばちゃんは私を見据えたまま、ポロポロと涙を流して、手に持っていた元を全て落として私に抱きついた。
「良かった、ティーちゃんが元気そうで……」
「お久しぶりです、ミリおばちゃん」
「ティーちゃん、なんで何も言わずに居なくなったの。一年前、リオンの結婚式後に居なくなって、みんなで村中を辺りを探したんだよ」
「…………。」
それに私はなんて答えればいいの?「ごめんなさい?」当時の私にはショックが大きかった。心が傷付き、悲しみ、辛くて、この村にいることができなかった。
「迷惑をかけたことは謝ります。今日は両親への挨拶に戻っただけなので、すぐに村から出ます」
「また居なくなるの? 待って! ティーちゃんの家はどうするの? 両親の写真は?」
おばちゃんは私を必死に止めた。
「両親の写真だけ持っていきます……レオさん、行きましょう」
「出て行くなんて言わずに、その人と村に住めばいいのよ。気になるのなら、リオンに合わせないから」
私は「いい」と首を横に振った。
私は全ての想いを捨てて、この村を出たから、ルース村に戻るなんて選択肢はない。
隣のレオさんの手を取り、しばらく見つめ合った。
(私の答えは決まっている)
「ルース村には戻らず、旦那様の国で暮らします」
「ティー、行こうか」
「はい、レオさん。今日はミリおばちゃんに会えて良かった。おばちゃん、いつも両親のお墓を見てくれて、感謝いたします。数年後に村に来れたら、お墓を旦那様の国に移しますので……言葉が悪いですが。そのままにしておいてください。いま、両親にはそう伝えました」
必ず迎えに来ると両親に誓った。
「いや、私が好きでやってることなんだ。このままさせて、お願いティーちゃん!」
「ミリおばさん。そんな、気にしなくていいんです。ミリおばちゃんは、ミリおばちゃんの時間を大切にしてください。……では、失礼しますね」
「ティーちゃん」
「おばちゃん、いつも両親のお墓を手入れをしてくれて、ありがとうございます。また、会いましょう」
「うん、うん。またね、ティーちゃん!」
おばちゃんに頭を下げて両親のお墓を後にした。このまま宿屋に戻ろうと思ったけど、家に置いていった両親の写真だけ持っていこうと思い、レオさんに伝えた。
「レオさん、少しだけ私の元家に寄ってもいい?」
「いいよ、僕もティーの家を見たい」
手を繋ぎ、2人で並んで、私の家に向かった。
+
「家まで、誰にも会わなかった」
もし、会ったらなんて言おうか、考えていたけど、拍子抜けした。
「……もしかして、僕が怖いからかな? 余所者だから」
「たまたまだよ、レオさん」
「たまたまか、そうだね」
ちょうどお昼時だったからか、村の人に会わずに家に着いた。
お墓と一緒で、綺麗に草が刈られた元家。
(ここも、おばちゃんが手入れしてくれたのかな? ありがとう、ミリおばちゃん)
「レオさん、ここが私の家です。鍵は空いているとも思うので、両親の写真を持ったら、すぐに村を出ましょう」
「わかった……ここがティーの家か」
レオさんは家を見上げ、入る前に玄関前で頭を下げた。
私はレオさんの手を引き。
「入ろっ、レオさん」
「あぁ、おじゃまします」
「レオさん気にせず、靴のまま上がって」
一年以上ぶりの家。出て行った時と変わらない。あの日に捨てていったブーケとベールが、食卓のテーブルに乗っていた。
レオさんはそれを手に取り。
「これ、ティーが作ったの?」
「うん、全部私の手作りなの。縫い目がバラバラでょう?」
「綺麗に作ってあるよ、記念に持って行く?」
私は横に首を振る。
「これは他の人を想って作ったものだから、ここに置いて行く。レオさんとの結婚式には、ちゃんとレオさんを想って作った物を……って、あっ、言っちゃった」
リコさんに習いながら、ブーケとベールは自分で刺繍を入れたり、花を束ねて作り始めていた。
「僕を想ってか、嬉しいな。いまから楽しみにしているよ」
「はい、楽しみにしていてください」
+
タンスの上の両親の写真を手に取り、レオさんに見せた。
「私の両親です。お父さん、お母さん私の愛する人、レオさんです」
「初めまして、レオと言います。ティーのお母さん、ティーにそっくりだね。でも目元はお父さん似かな?」
「そう? 似てるかな」
「似てる、優しい目元とかね」
しばらく2人仲良く、両親の写真に語りかけていた。
乱暴に玄関が開く音がして振り向くとそこには、少し髪が伸びて、立派なスーツを着たリオン君がいた。
彼は急いできたらしく、ハァハァと息が切れていた。
「ティーが、ルース村に帰ってきたと聞いて、走ってきた」
ミリおばちゃんが伝えた? でもおばちゃんは男爵のお屋敷より離れた、お墓で別れたから伝えに行けない。
村の中を歩いて来たから、誰か見て彼に伝えたんだ。
「お久しぶりです、マント男爵様」
スカートを持ち、レオさんに教えてもらったカーテシーをした。
終わった後、レオさんに力強く、腰を引き寄せられた。
それを見た彼は目を細めた。
「そいつは誰だ! お前、俺がいないところで、浮気したのか?」
「浮気? 彼は私の旦那様です。男爵様には関係ありません。私の旦那様の前で、浮気なんて変な言わないでください」
「旦那ってなんだよ?」
声を上げて、リオン君は私を掴もうとした。
すかさず、レオさんが腕の中に守ってくれた。
彼には奥さんがいるはずなのに、なぜ?
「男爵様、私たちは用が終わったので失礼します。男爵様もマント家にお帰りください、奥様が心配されますよ」
「心配か……あいつ妊娠してから五月蝿いんだよ! アレするな、コレするなって! どこに行くの!って。俺が行くところまで口出してくる」
彼の奥様ーーセジール様が妊娠したんだ。
「マント男爵様、おめでとうございます。奥様を大事にしてください。……では、私たちは行きますね。レオさん行きましょう」
「あぁ、ティー」
「はぁ? 何言ってんだ? ここはお前の家だろう? 何処に行くきだ?」
「何処に行くって。旦那様のレオさんの国に戻ります」
「そいつの国?」
結婚していると(まだ、だけど)言えば、彼も屋敷に帰るだろうと思っていた。だけど、レオさんと家を出ようとした、私の手を「待て」と彼は掴んだ。
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