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二十一

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 あの日から1週間過ぎ、レオさんが休みの日にルフさんが家に訪ねて来た。
 私を誘拐、恐喝をした公爵令嬢アイリス・ラータナ嬢の罪が確定したと彼は言った。
  
 この国の宝。森の管理者レオさんの婚約者に危害を加えたために、彼女の罪は重いとされた。

「いらっしゃいませ、ルフさん。いま、お茶をいれますね」

「いらっしゃい、ルフ。キッチンで話そうか」

「そうだな、ティーちゃんにも聞いてもらわないと、いけない話だしな」

 テーブルに着いた2人にお茶を出して、私はレオさんの隣に座った。それを見てルフさんは話し出す。

「2人も気になっていたと思うけど。アイリスは婚約者に婚約破棄されて、北の山奥の修道院に髪をバッサリ切られて、入れられたよ」

「北の山奥の修道院にですか?」

「ティーは知らないか……修道院に貴族の令嬢が入れられると生涯独身、キビシ修道院暮らしを送らなければならないんだ」

「キビシイ修道院暮らしですか?」

「そっ、アイリスはそこの修道院の下っ端の修道女見習いだとよ。それに周りの修道女達はアイリスよりも位が低いものばかりかもな。その人達に使われて、彼女は頭を下げなくちゃならない」

「アイリスには妥当な罰だな」

「でな、その修道院のそばには亜人の里があって。週一で修道院に来るらしいから、どのような顔をして応対するんだろうな、にしし」

「修道院に来る亜人に手を出せば、アイリスの罪がますます重くなる。国外追放……か、更に上の罪になるかもな」

 可愛そうだと思ってしまうけど、痛い目にあったから同情はしない。  

「アイリスとは、2度と会わなくて済むな」

「そうだな。ルフ、話はこれだけか?」

「いや、もう一つある。アイリスの両親ラータナ公爵達はアイリスの婚約者に、相当な額のお金を無心していたらしくてな……それを返すため公爵家を売り、田舎の別宅に両親、年頃の娘、息子たちと夜逃げのように引っ越したんだと……しばらくしたら、没落するんじゃないかって話だ」

「アイリスのせいで、妹と弟ほ良い結婚相手に恵まれないだろうな。落ちぶれたらますます悲惨になる」

「仕方がない、レオ。罪を起こした者の末路だ。真っ当に生きていれば怒らないことだ」

 ルフさんの言葉にレオさんは頷いた。罪は罪、起こしてしまったら取り返しがつかない。アイリスお嬢様はいくら悔やんでも、その罪を生涯背負って、生きていかなくてはならない。

 話が終わるとフルさんは仕事に戻ると、王都に帰っていった。







 それから数ヶ月後の春先。レオさんが3ヶ月の休みが取れた。

「ティーさん、いきなりだけど、3日後にルース村に行こう」
 
「3日後ですか?」

 私の生まれ育ったルース村に残してきた、両親のお墓に婚約と、結婚をすると報告しに行くといった。

「王城の書庫で借りてきた、この地図なら細かく載っているから、ルース村が載っていないか探してみて」

 細かく記された初めて見る地図。王城から借りてきたと言って、レオさんが広げた地図には、北の最北にあるルース村が載っていた。

「レオさん、ありましたここです。ここがルース村です」

「へぇ、ここがティーの生まれた村か……こんな遠い所から、ここまで来たんだね」
 
「はい……あの時は無我夢中だったから、どれだけ移動したかなんて分からなかったけど。いま地図で見て、こんなに遠い所から私は来たんですね」

「そうだね、僕の所にお嫁に来てくれたんだ」

 レオさんが用意した地図でルース村の場所を確認した。

 移動はレオさんは人と乗る相乗り馬車が苦手だということで、小さな荷馬車も借りるこたにした。その荷馬車で寝泊まりしながら、マント領ルース村を目指す。

「ティー、夜はなるべく街に泊まってゆっくり日中に行こう。お金の心配はいらないからね」

「はい」

 地図で確認を終えて、2人並んで3日後に出る為の、荷物をまとめていた。
 レオさんは機嫌良く。

「あー、ティーの生まれた村に行く日が、待ち遠しい」

「何もない小さな村ですよ、風景は綺麗ですが……」

 荷物をまとめていた手を止め、レオさんは首を横に振る。

「僕にとってそこは、ティーの両親がいる所だからね。とっても楽しみで、緊張する場所だよ」

「楽しみで、緊張する場所ですか……私は素敵なレオさんを両親に紹介できる、幸せなところかな」

「幸せのところか……ティー。僕と一緒に幸せになろうね」

「はい、2人で幸せになりましょう」

 見つめ合い瞳を閉じると、レオさんの優しいくちづけが降ってきた。
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