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墓荒らし

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「じ、自分も手伝います!!」

そう言えばジャックさんは東の神父様の支持者でしたね。
見たところ、お二人共無傷の様です。
シモーネさん達が体を張って頑張ってくれたのでしょう。

神父様は私達に深々頭を下げ、感謝の言葉を述べていました。
そして西の神父様は意識はあるものの、傷の具合は良くなく油断を許さない状況のようです。

西の神父とは幼なじみでして、娘のファニーの事も自分の娘の様に可愛がっていたんですが……まさか、私が彼女の恨みの原因になるなどとは……」

寂しげに俯きながら、ファニーさんのことを語ってくれました。
小さい頃はお転婆で何度も教会を泥だらけにされたとか、刺繍が好きでよく刺繍をしてくれたとか、とても楽しそうに語ってくれました。
そんなファニーさんが変わってしまったのは、やはりお母様が亡くなったことが原因の様です。

「私はあの子の為に自分の身を捧げてもいいと思っております。それで民が救われるのならば、私一人の命ぐらい容易いものです」

東の神父様は自分の命を捧げる覚悟までしていた様です。
しかし、それでは解決したとは言えません。
それに、もう取り返しのつかない所まで来てしまいました。
あの方はもう……

そんな事を考えていると──

「ちょっ!!皆、どき!!!」

クルトさんの声が聞こえたかと思ったら、教会に何かが突っ込んできました。

土埃が上がっている中、クルトさんは動きを止めることなく斬りかかっています。
目を凝らしてみると、前にクルトさんが相手をしたアンデッドの姿がありました。
あのアンデッドの剣は特殊な剣でしたね。

クルトさんは今回も傷だらけですが、前回と違い飛ばされたのがクルトさんでは無いということ。

「クルト。いけるか?──なんなら助太刀するが?」

「いらんいらん。あいつは僕のもんや。手出したら殺すで?」

ゴリさんが心配して声をかけたようですが、心配は無用のようです。
その証拠にクルトさん。とても楽しそうです。

「そうそう。フェンリルの一頭がこいつらのボスの匂い嗅ぎつけたみたいで、森の方走ってったで?」

クルトさんは思い出したかのように森の方を指さして教えてくれました。

フェンですね。
あの子はこの中で一番鼻が利きますからね。
すぐさま私は「ピーーーー」と指笛でルーナを呼びました。
あの子の姿がないということは、多分フェンを追ってくれているはずです。

「僕はこいつを片づけてから行くから先行っといて!!」

クルトさん目掛けて斬りかかって来たアンデッドをこの場から離すためにクルトさんは森とは逆の方へアンデッドを誘き寄せる為に走って行ってしまいました。

その姿が消える頃、ルーナがやって来ました。
やはりフェンの元にいたらしく、私を連れて行こうと必死です。
ですが、この人数では多すぎます。

「ゴリさん。私に行かせてください」

私は自ら手を挙げ、ファニーさんの元へ行くことを望みました。
当然他の皆様も同様です。

「いえ、皆さんはここに残ってください。私はファニーさんの友達です。私が行けば話ぐらいはできると思うんです」

それに、友達として私が止めたいのです。

皆さん一様に渋い顔をしておりましたが、私が一度決めたら聞かない事はご存知のはず。
じっとゴリさんの目を見ていましたが、遂にゴリさんが折れました。
但し、30分しても戻ってこなければゴリさん達が踏み込むという条件付きですが。

それでもいいです。
少しの時間でも二人で話せる時間があるのなら。

意を決してルーナと森へと入る寸前。

「……私も……連れ行ってくれ」

西の神父様がヨロヨロと教会の中から現れていました。
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