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墓荒らし

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その後、一旦『マム』へと移動してきました。
殿下を見るなりミレーさんが卒倒し、旦那様のジャックさんとロンさんが奥へと運び入れていると、ナタリーさんがご出勤。

──この方は、こんな日に限って……

ナタリーさんは目の前の麗しい殿方を見るなり、目の色が変わり獲物を狩る女豹のような目つきでお茶を運んで来てくれました。
そして、少しでもお近ずきになりたいナタリーさんは、転びお茶を殿下に掛けるという荒業に出ました。
……が、オスカー様は横にいたルイスさんをすかさず盾にしたことにより殿下は無事。ルイスは頭からお茶をかぶりずぶ濡れとなりました。

「うわぁぁぁぁぁ!!!何してんだよ!!!」

当然ルイスさんはご立腹。
オスカー様はポンとルイスさんの肩に手を置き「いい仕事してくれた」と素敵な笑顔で伝えております。
ルイスさんは文句を言おうとしていましたが、オスカー様の黒い笑顔に恐れをなし何も言わずに渋々着替えに行きました。

お近ずきになれなかったナタリーさんは舌打ちをし、仕方なく調理場へと消えていきました。

とりあえず落ち着いたところで皆さん席につき、まずは私が聞きたい事を尋ねます。

「……なぜユリウス様がここにおられるのですか?」

「酷いな。別れ際に言っといたろ?と」

いや、確かに聞きました。
ですが、そんなもの社交辞令でしょう?

「私は片時も忘れた事は無かったんだがなぁ。マリーの唇のかんしょ……」

「いけません!!!!」

慌ててユリウス様の口を両手で抑えましたが、どうも手遅れの様です。

殿下はこの世の終わりかのような顔をし、オスカー様は目が飛び出しそうなほど目を見開き、シャーロット様は興味津々に耳を傾け、便利屋の皆さんはニヤニヤが止まりません。

「……まあ、お前に会いに来たと言うのも本当なんだが。陛下からの王令だ」

口を塞いでいたわたしの手を退かし、ユリウス様が話し始めました。

「陛下……ですか?」

「そうだ。お前達に我が国の膿であった毒蜘蛛を預けているからな。定期的にこちらの様子を見てこいとな」

毒蜘蛛と言う今や懐かしい単語が聞こえ、元毒蜘蛛のニルスさん、レナさん、クルトさんはビクビクしております。
しかし、報告はゴリさんが定期的に行っているはずですよ?
まさか、忘れているとか言うのでは?

「やはり文字だけでは分からないこともある。目で見た方がはっきりする。それで陛下は私をここに送ったのだ」

まあ、そう言われてしまえばそうなので、何も言えません。

「──で、この国に着いて早々何やら不穏な事が囁かれいてな。ユリウス殿に聞いたらアンデッドとやらがこの国を脅かしているらしいじゃないか。それなら、私達もと一緒に向かわせてもらった」

「借りた借りは返すのが礼儀だろ?」と意気揚々と仰っておりますが、それ、今この場で言うのはマズイです……
毒蜘蛛の件は殿下達には内密で行なった事。しかも、私は家族旅行という事になっているのですよ?

──……オスカー様と殿下の視線が痛いですね。

オスカー様と殿下のチクチクと突き刺さる視線に気付かぬ振りをしておりますが、冷や汗が止まりません。

「確か、お主は神速の持ち主じゃな。それは心強いではないか。──のう、マリー?」

物凄く楽しそうなシャーロット様が、更に畳み掛けました。

──シャーロット様。これ以上刺激するのはやめてください。

「そう言う訳で、私も今回の件に参加させてもらう。……何、寝所はマリーと一緒で構わない」

ユリウス様は私を抱き寄せ、頭にキスを落としてきました。
ボンッと再び私の顔は沸騰状態です。

「ユリウス殿。いくら親しいからと言ってレディに気安く触るのはお勧め出来ないわね」

殿下は表面上は笑顔でユリウス様の肩を掴み、言及しておりますが殺気がダダ漏れです。

「──殿下、抑えてください。……ユリウス様、グロッサ国第一王子を平民の家に泊めたとなれば、我が国の信頼にも関わります。故に、寝起きは城へお願いします」

オスカー様が合間に入り丁寧に説明しますが、ユリウス様は「気にしない」と一向に引きません。
最終的にマルクス様の「いい加減にしなさい」の一声で渋々了承してくれました。

疲れました……
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