157 / 177
墓荒らし
40
しおりを挟む
──何故……!?
私の名を呼んだ人物、それは…………
──ユリウス様!?
そう。グロッサ国の次期国王にして聖騎士団団長でもあるユリウス様が今、目の前におられます。
後ろには副団長のマルクス様の姿があるので、お忍びと言う訳では無さそうです。
ユリウス様は私を見つけると「ふっ」と優しく微笑みました。
その顔を見て、忘れていた記憶が蘇りました。
グロッサ国を出る前の事を……
ブワッ!!
自分でも分かるほど顔が真っ赤になり思わず顔を背けると、目ざとい殿下に肩を掴まれました。
「……マリー?その顔は何?何でユリウス殿を見て真っ赤になっているの?……詳しく話を聞かせてもらいましょうか?」
顔は笑っていますが、目が笑っていません。
しかも、肩を掴んでる手に力を込められ、地味に痛いです。
「──っつ!!……殿下、痛いです。それに、殿下に話すようなことはありませんよ」
「そうですよ。これは私とマリーの問題……な?」
私が痛がっているのを察したユリウス様が殿下から離してくれました。
ですが、ユリウス様の腕の中に収められ、私の心臓は破裂寸前です。
この様子をニヤニヤしながら伺っている便利屋の皆さんに殺意が湧きますが、この際そんな事言っている場合ではありません。早く助けてください!!
「いい加減にせんか」
そんな声が聞こえたかと思えば、フワッと私の体が持ち上がり、ゴリさんの元へ。
この様なことが出来る声の主は当然、シャーロット様です。
「久しぶりじゃの?ハル坊」
クスッと妖艶に微笑むシャーロット様はとても美しく、皆さん一様に目を奪われました。
しかし、目を奪われない方もおりました。
「……シャーロット……貴方、その呼び名は止めてって言ってるじゃない」
殿下は睨みつけながら文句を仰りましたが、当のシャーロット様はまったく気にしてないご様子。
前に「ハル坊」と言われていたのは殿下の事でしたか……
よく考えてれば、シャーロット様は国の英雄。殿下が知らないはずありませんでした。
「さて、こんな所でくだらん揉め事をしている場合では無かろう。奴ら、本格的に動き出したようじゃ」
シャーロット様はキッと鋭い目つきで私達に伝えてきました。
本格的に動き出したという事は、早く手を打たなければ町の住民にも被害が及ぶという事です。
更にシャーロット様は、ある仮定を示しました。
それは、ファニーさん自身もアンデッド化しているのではないか。という事。
元々ファニーさんは魔術経験ゼロ。そんな方が禁断魔術に手を出したのですからそれ相応の代償は当たり前です。
何の知識もなく魔術を使えばその代償は増大。
そして、その代償は自身の命。
ファニーさんはアンデッドを作る度、命が削られているはずだとシャーロット様から聞きました。
しかし、命にも限界があります。
これ程までにアンデッドを制作している所を見ると、ファニーさんの命はもう……
そこで、自分自身に魔術を施しアンデッド化しているのではないかと言うのがシャーロット様の見解でした。
「それ程迄に東の神父を恨んでおるという事じゃ」
東の神父様は恨まれるような事もしておりません。
全てはファニーさんの勘違いなのです。
──なぜ、私はもっと早くその事実に巡り合わなかったのでしょう。
さすれば、この結末も変わっていたかもしれません。
ファニーさんが命を落とすことも無かったかもしれません……
悔いても悔いてもこの現実が覆すことはありません。
──あぁ、私は本当に無力……
天を仰ぎ、そう、自分を戒めました。
私の名を呼んだ人物、それは…………
──ユリウス様!?
そう。グロッサ国の次期国王にして聖騎士団団長でもあるユリウス様が今、目の前におられます。
後ろには副団長のマルクス様の姿があるので、お忍びと言う訳では無さそうです。
ユリウス様は私を見つけると「ふっ」と優しく微笑みました。
その顔を見て、忘れていた記憶が蘇りました。
グロッサ国を出る前の事を……
ブワッ!!
自分でも分かるほど顔が真っ赤になり思わず顔を背けると、目ざとい殿下に肩を掴まれました。
「……マリー?その顔は何?何でユリウス殿を見て真っ赤になっているの?……詳しく話を聞かせてもらいましょうか?」
顔は笑っていますが、目が笑っていません。
しかも、肩を掴んでる手に力を込められ、地味に痛いです。
「──っつ!!……殿下、痛いです。それに、殿下に話すようなことはありませんよ」
「そうですよ。これは私とマリーの問題……な?」
私が痛がっているのを察したユリウス様が殿下から離してくれました。
ですが、ユリウス様の腕の中に収められ、私の心臓は破裂寸前です。
この様子をニヤニヤしながら伺っている便利屋の皆さんに殺意が湧きますが、この際そんな事言っている場合ではありません。早く助けてください!!
「いい加減にせんか」
そんな声が聞こえたかと思えば、フワッと私の体が持ち上がり、ゴリさんの元へ。
この様なことが出来る声の主は当然、シャーロット様です。
「久しぶりじゃの?ハル坊」
クスッと妖艶に微笑むシャーロット様はとても美しく、皆さん一様に目を奪われました。
しかし、目を奪われない方もおりました。
「……シャーロット……貴方、その呼び名は止めてって言ってるじゃない」
殿下は睨みつけながら文句を仰りましたが、当のシャーロット様はまったく気にしてないご様子。
前に「ハル坊」と言われていたのは殿下の事でしたか……
よく考えてれば、シャーロット様は国の英雄。殿下が知らないはずありませんでした。
「さて、こんな所でくだらん揉め事をしている場合では無かろう。奴ら、本格的に動き出したようじゃ」
シャーロット様はキッと鋭い目つきで私達に伝えてきました。
本格的に動き出したという事は、早く手を打たなければ町の住民にも被害が及ぶという事です。
更にシャーロット様は、ある仮定を示しました。
それは、ファニーさん自身もアンデッド化しているのではないか。という事。
元々ファニーさんは魔術経験ゼロ。そんな方が禁断魔術に手を出したのですからそれ相応の代償は当たり前です。
何の知識もなく魔術を使えばその代償は増大。
そして、その代償は自身の命。
ファニーさんはアンデッドを作る度、命が削られているはずだとシャーロット様から聞きました。
しかし、命にも限界があります。
これ程までにアンデッドを制作している所を見ると、ファニーさんの命はもう……
そこで、自分自身に魔術を施しアンデッド化しているのではないかと言うのがシャーロット様の見解でした。
「それ程迄に東の神父を恨んでおるという事じゃ」
東の神父様は恨まれるような事もしておりません。
全てはファニーさんの勘違いなのです。
──なぜ、私はもっと早くその事実に巡り合わなかったのでしょう。
さすれば、この結末も変わっていたかもしれません。
ファニーさんが命を落とすことも無かったかもしれません……
悔いても悔いてもこの現実が覆すことはありません。
──あぁ、私は本当に無力……
天を仰ぎ、そう、自分を戒めました。
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。
実家が没落したので、こうなったら落ちるところまで落ちてやります。
黒蜜きな粉
ファンタジー
ある日を境にタニヤの生活は変わってしまった。
実家は爵位を剥奪され、領地を没収された。
父は刑死、それにショックを受けた母は自ら命を絶った。
まだ学生だったタニヤは学費が払えなくなり学校を退学。
そんなタニヤが生活費を稼ぐために始めたのは冒険者だった。
しかし、どこへ行っても元貴族とバレると嫌がらせを受けてしまう。
いい加減にこんな生活はうんざりだと思っていたときに出会ったのは、商人だと名乗る怪しい者たちだった。
騙されていたって構わない。
もう金に困ることなくお腹いっぱい食べられるなら、裏家業だろうがなんでもやってやる。
タニヤは商人の元へ転職することを決意する。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
捨てられ令嬢は、異能の眼を持つ魔術師になる。私、溺愛されているみたいですよ?
miy
ファンタジー
アンデヴァイセン伯爵家の長女であるイルシスは、『魔眼』といわれる赤い瞳を持って生まれた。
魔眼は、眼を見た者に呪いをかけると言い伝えられ…昔から忌み嫌われる存在。
邸で、伯爵令嬢とは思えない扱いを受けるイルシス。でも…彼女は簡単にはへこたれない。
そんなイルシスを救おうと手を差し伸べたのは、ランチェスター侯爵家のフェルナンドだった。
前向きで逞しい精神を持つ彼女は、新しい家族に出会い…愛されていく。
そんなある日『帝国の砦』である危険な辺境の地へ…フェルナンドが出向くことに。
「私も一緒に行く!」
異能の能力を開花させ、魔術だって使いこなす最強の令嬢。
愛する人を守ってみせます!
※ご都合主義です。お許し下さい。
※ファンタジー要素多めですが、間違いなく溺愛されています。
※本編は全80話(閑話あり)です。
おまけ話を追加しました。(10/15完結)
※この作品は、ド素人が書いた2作目です。どうか…あたたかい目でご覧下さい。よろしくお願い致します。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる