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墓荒らし

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──何故……!?

私の名を呼んだ人物、それは…………

──ユリウス様!?

そう。グロッサ国の次期国王にして聖騎士団団長でもあるユリウス様が今、目の前におられます。
後ろには副団長のマルクス様の姿があるので、お忍びと言う訳では無さそうです。

ユリウス様は私を見つけると「ふっ」と優しく微笑みました。
その顔を見て、忘れていた記憶が蘇りました。
グロッサ国を出る前の事を……

ブワッ!!

自分でも分かるほど顔が真っ赤になり思わず顔を背けると、目ざとい殿下に肩を掴まれました。

「……マリー?その顔は何?何でユリウス殿を見て真っ赤になっているの?……詳しく話を聞かせてもらいましょうか?」

顔は笑っていますが、目が笑っていません。
しかも、肩を掴んでる手に力を込められ、地味に痛いです。

「──っつ!!……殿下、痛いです。それに、殿下に話すようなことはありませんよ」

「そうですよ。これは私とマリーの問題……な?」

私が痛がっているのを察したユリウス様が殿下から離してくれました。
ですが、ユリウス様の腕の中に収められ、私の心臓は破裂寸前です。

この様子をニヤニヤしながら伺っている便利屋の皆さんに殺意が湧きますが、この際そんな事言っている場合ではありません。早く助けてください!!

「いい加減にせんか」

そんな声が聞こえたかと思えば、フワッと私の体が持ち上がり、ゴリさんの元へ。
この様なことが出来る声の主は当然、シャーロット様です。

「久しぶりじゃの?ハル坊」

クスッと妖艶に微笑むシャーロット様はとても美しく、皆さん一様に目を奪われました。

しかし、目を奪われない方もおりました。

「……シャーロット……貴方、その呼び名は止めてって言ってるじゃない」

殿下は睨みつけながら文句を仰りましたが、当のシャーロット様はまったく気にしてないご様子。

前に「ハル坊」と言われていたのは殿下の事でしたか……
よく考えてれば、シャーロット様は国の英雄。殿下が知らないはずありませんでした。

「さて、こんな所でくだらん揉め事をしている場合では無かろう。奴ら、本格的に動き出したようじゃ」

シャーロット様はキッと鋭い目つきで私達に伝えてきました。
本格的に動き出したという事は、早く手を打たなければ町の住民にも被害が及ぶという事です。

更にシャーロット様は、ある仮定を示しました。
それは、ファニーさん自身もアンデッド化しているのではないか。という事。
元々ファニーさんは魔術経験ゼロ。そんな方が禁断魔術に手を出したのですからそれ相応の代償は当たり前です。
何の知識もなく魔術を使えばその代償は増大。
そして、その代償は自身の命。
ファニーさんはアンデッドを作る度、命が削られているはずだとシャーロット様から聞きました。

しかし、命にも限界があります。
これ程までにアンデッドを制作している所を見ると、ファニーさんの命はもう……
そこで、自分自身に魔術を施しアンデッド化しているのではないかと言うのがシャーロット様の見解でした。

「それ程迄に東の神父を恨んでおるという事じゃ」

東の神父様は恨まれるような事もしておりません。
全てはファニーさんの勘違いなのです。

──なぜ、私はもっと早くその事実に巡り合わなかったのでしょう。

さすれば、この結末も変わっていたかもしれません。
ファニーさんが命を落とすことも無かったかもしれません……
悔いても悔いてもこの現実が覆すことはありません。

──あぁ、私は本当に無力……

天を仰ぎ、そう、自分を戒めました。
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