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墓荒らし

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次の日から早速調査開始となりましたが私は侍女の仕事がある為、不参加。
仕事の終わる夕方『マム』へ集合となっております。

「マリー、久しぶりだね」

城を駆け回っていると、ニコラ様に呼び止められました。
城の中で会うのは中々珍しいです。

「ニコラ様。お久しぶりです。団長様に御用ですか?」

「──いや、殿下にちょっとね」

「そうですか。殿下は執務室にいらっしゃるはずです。──それでは、失れい……」

てっきり団長様を探しているのかと思えば、殿下に御用らしいです。
私は殿下の居場所を教え、仕事に戻ろうと一歩足を踏み出した所でニコラ様に腕を掴まれました。

「丁度いいからマリーも一緒においで」

「は?──いや、私は見ての通り仕事中ですので」

腕を振り払おうとしますが、相手は副団長。力の差は歴然です。
慌てて手に持った籠を見せたのですが、その籠をニコラ様が奪うと「あっ、そこの君。これ頼めるのかな?この子ちょっと借りたいんだ」と歩いていた侍女を引き止め、爽やかな笑顔で頼めば嫌とは言えないですよね。
案の定、笑顔を向けられた侍女は顔を赤らめ私の籠を胸に抱き、足早に駆け出していきました。

「じゃ、行こうか?」

こうして、私は爽やかな笑顔の裏に悪魔を秘めたニコラ様により拉致されました。

コンコン

「殿下、失礼します」

執務室を開けると、殿下とオスカー様が何やら悩んでいるご様子で書類と睨みつけていました。

「あら、ニコラ……と、マリー?」

「先程偶然会いまして、マリーなら適任かと思い連れてきました」

殿下はニコラ様と一緒にいる私に驚いていましたが、ニコラ様の一言で納得したような顔になりました。

何やら不穏な気配がしますね……

──これは、逃げたもん勝ちですね。

そう思いニコラ様の隙を付き逃げ出そうと、ゆっくり後退りでドア目指して進んでいたのですが、あと一歩の所で満面の笑みのオスカー様に捕まりました。

「マリー、いい所に来た。まあ、茶でも飲んでけ」

オスカー様に逃げられないよう肩を掴まれたままソファーまで連れていかれ、無理やり座らせられました。
そして右隣にはニコラ様、左隣にはオスカー様と完全に逃げ道を塞がれました。

私が逃げられなくなった所で、目の前に殿下が座り話が始まりました。

──これは腹を括りかなさそうです……

諦めて話を聞いている内に巷で噂になっている墓荒らしの話だと言うことが分かって来ました。
そして教会の手の者が使用人として、この城に忍び込んでいるらしいと。

「──……そこで、マリー。お前の出番だ」

「……いや、今の話のどこに私が出る要素が含まれているのですか?」

「マリーには、その使用人を探って欲しいの」

「はい?」

殿下始め、オスカー様、ニコラ様が笑顔で私を見つめております。

「あの……お言葉ですが、殿下にはエルさんと言う立派な隠密が付いていると思うのですが?」

探るのは隠密でもあるエルさんの得意分野。
素人の私より適任かと思われるのですが?

「それがねぇ。エルには他の仕事を頼んでるのよぉ」

殿下は頬に手を当てて「残念だったわね」と何やら嬉しそうに仰りました。

「それならば、私よりも使用人に詳しいテレザ様の方がよろしいかと……」

私は次に侍女長のテレザ様の名を出しましたが「テレザにこれ以上仕事増やす気?」と言われると、何も言えないではないですか。
テレザ様は毎日遅くまで仕事をしているです。
侍女の仕事をこなしつつ、侍女長としての仕事も完璧にこなすテレザ様は侍女の鏡です。
そんなテレザ様に、これ以上仕事を増やすことは流石の私でもいただけません。

「──……マリー、すまんな。これは、信頼出来る者にしか頼めん仕事なんだ。俺達はお前の事を信頼しているから頼んでいる。……因みに給金は侍女の仕事とは別に支給しよう」

オスカー様は申し訳なさそうに私に懇願してきました。
正直乗り気ではありませんが、オスカー様にそこまで言われてしまったら引き受けない訳にはいきません。

──まあ、情報収集も出来て丁度いいですか。

仕方なく、了承しました。


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