上 下
117 / 177
グロッサ国

48

しおりを挟む
さあ、帰路に着く日がやってまりました。
帰路に着く日も天気に恵まれ、快晴です。
色々な事があり離れるのは少し、寂しい気もしますが本来在るべき場所に戻るのが一番です。

「ちょっと!!ジェム!!もっとそっち押さえてよ!!」

「こんなに無理だって!!」

こちらに来る時同様、身支度に時間が掛かっている様子。
特に、シモーネさんが……
それもそのはずです。鞄に入り切らないほどの服や化粧品。更には健康食品まで……

昨日、ジェムさんを連れ出して買い物い物に行ったかと思えば、帰ってきたジェムは大変お疲れでしたし、買った物の量にも驚かされました。

「もう、時間だよ-!?」

待ちくたびれたティムさんが呼びに来ました。
何とか詰め込んだシモーネさんとジェムさんが慌てて外へと掛けて行ったので、私もその後を追って外へ。
すると、他の皆さんは既に馬車の中におりました。

その場所の前には別れを惜しみ泣きじゃくるレニさんと、それを宥めるように優しく頭を撫でるレナード様の姿もありました。

「──世話になったな」

「とんでもありません。貴方がたには感謝してもしきれません。……道中お気をつけて。また、こちらに来る際は遠慮なく声を掛けてください。盛大に歓迎致します」

ゴリさんとレナード様はにこやかに握手を交し、私達は大きく手を振りながら別れの挨拶をしました。


◇◇◇


「……えっと……これは、どう言うこと?」

戸惑いを隠しきれず、ルイスさんが口を開きました。

戸惑っているのはルイスさんだけではありません。私達も同様に戸惑っております。
何故なら──……

「あぁ~、やっと来た!!遅いじゃない!!」

「ほんまやで。このまま僕らだけで行ってまおうかと思っとったで」

港に停めておいた船に乗り込もうとした時、甲板から声が掛かったのです。
甲板を見上げると爆乳ことセクスさんと剣士のドゥオさんの姿があったのです。

「あれ~?そこにいるのウーナじゃない?何?あんた、この一味に入ったの?」

私達が戸惑っている間に目ざとくニルスさんを見つけたセクスさんが声をかけました。

「二人共久しぶりだね。そうだけど……君ら、もしかして……?」

その言い草……もしや……?

「そう!!私達も仲間に入れて貰う為に、わざわざ貴方達を待っていたのよ!!」

「「はぁぁぁぁ!!!??」」

思わず皆さんと声が被りました。
ゴリさんに至っては、頭を抱えて唸っております。

「ちょ、ふざけんじゃないわよ!!ニルスだけでもお断りなのに、なんであんたらまで入れなきゃいけないのよ!!」

ゴリさんより先に声を荒らげたのは、当然シモーネさん。

「やぁねぇ。私の方がお色気担当に向いてるからって僻み?」

「はぁぁぁぁ!?胸だけのあんたは娼婦にでもなればいいじゃない!!娼婦の方があんたにはお似合いよ~。小汚いおっさんに可愛がってもらったら?」

ケラケラ笑うシモーネさんと顔を歪めて静かに怒っているセクスさんは更にヒートアップして話にならないので放置します。

二人が揉めている隙にゴリさんはドゥオさんを呼び寄せ、ここいる経緯を聞き出し出そうとしています。

──おかしいですね。このお二人は騎士に差し出したはずですが?

「急ですんません。なんせ僕ら行く場所無くしてしもうて。知り合いもおらんし、この国にいれば死ぬまで追われることは必須。それなら、いっそこの国を出よう思ってな。……で、あんたらの仲間に入れてもらえば一石二鳥やん。ってなってな」

サラッと国外逃亡する事と仲間に入る事を言って述べました。

──……私達を逃亡の加担者にしないでください。

「いや、この船に乗っている時点でお前らが逃亡する気でいるのは分かる。俺が聞きたいのは、どうやって牢を抜け出したかだ」

「あはははは!!そこか!?嫌やなぁ。セクスの能力忘れたとは言わせへんよ?」

「「あぁぁぁ!!!」」

不敵な笑みを浮かべるドゥオさんに言われて察しました。

セクスさんの能力は怪力。
牢などあってないようなものでした……

──……今頃牢番あたりが慌てていることでしょう。

牢番の方を哀れに思いながら、ふと気づきました。
今ここには、セクスさんとドゥオさんしかおりません。

──……トゥオルさんはルイスさんに敗れその場で死亡が確認されましたが、もう一人いましたよね?
船内にいる気配はありませんし、どこにいるのでしょう?

「……あの、もう一人の方は何処です?」

私が声を掛けると「あぁ、セプテムか?」とすぐに答えが返ってきました。

「アイツも誘ったんやけど断れてん。一人で気ままに生きてく言うてたわ」

何処か寂しげに仰るドゥオさんにゴリさんは「……そうか」と一言。

「──で?こっちの説明は一通り済んだで?今度はそっちや。僕らをこの国から逃がし、更には仲間に入れてくれるんやろ?」

だいぶ話が飛躍しておりますが、まあ、目を瞑りましょう。
さあ、ゴリさんの出した答えは?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

品がないと婚約破棄されたので、品のないお返しをすることにしました

斯波@ジゼルの錬金飴② 1/18発売予定
ファンタジー
品がないという理由で婚約破棄されたメリエラの頭は真っ白になった。そして脳内にはリズミカルな音楽が流れ、華美な羽根を背負った女性達が次々に踊りながら登場する。太鼓を叩く愉快な男性とジョッキ片手にフ~と歓声をあげるお客も加わり、まさにお祭り状態である。 だが現実の観衆達はといえば、メリエラの脳内とは正反対。まさか卒業式という晴れの場で、第二王子のダイキアがいきなり婚約破棄宣言なんてするとは思いもしなかったのだろう。

精霊王の愛し子

百合咲 桜凜
ファンタジー
家族からいないものとして扱われてきたリト。 魔法騎士団の副団長となりやっと居場所ができたと思ったら… この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。 “あんたはモブで可哀相”。 お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?

夫婦で異世界に召喚されました。夫とすぐに離婚して、私は人生をやり直します

もぐすけ
ファンタジー
 私はサトウエリカ。中学生の息子を持つアラフォーママだ。  子育てがひと段落ついて、結婚生活に嫌気がさしていたところ、夫婦揃って異世界に召喚されてしまった。  私はすぐに夫と離婚し、異世界で第二の人生を楽しむことにした。  

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

処理中です...