116 / 177
グロッサ国
47
しおりを挟む
ルーナを見送った次の日、私達はユリウス様に呼び出され再び登城となりました。
しかも、今回呼ばれた場所は謁見の間。
大きな扉を開けると、壇上には国王様が鎮座しております。
私は元令嬢なので礼儀作法は弁えておりますが他の方々は平民の為、足がすくんで動けない模様。
「無作法で大丈夫だ」とゴリさんが伝えても、国王様の威圧感に負けて皆さん顔色が宜しくありません。
「わははははは!!!そう強ばるな。私は堅苦しいのが苦手でな。普段通りに振舞ってくれて構わん」
国王直々にその様なお言葉を頂いたので、少しは気が楽になったのか皆さん顔色が戻ってきました。
「お前達には感謝している。この国の膿である毒蜘蛛を壊滅してくれた。礼を言う」
「いえ、今回の件は私の身内の仕業でもありました。礼を言われる筋合いはありません」
ゴリさんは今回の結末を簡単に説明し、明日にはこの国を出ることを伝えました。
「そんな慌てて戻ることもなかろう?お前達の敬意を表し派手に夜会を開く予定であったのだぞ?」
国王様の隣にいたユリウス様も明日出発する事に驚いておりましたがルーナを先に戻している為、長居は無用です。
それに、夜会など出席したくありません。
ここにいるのは皆、平民ですからね。
どこぞの貴族達に馬鹿にされるのが目に見えています。
「そうか。──……まったく、お前はいつも急だな」
「……お互い様だろ?」
大きな溜息を吐きながら国王様はゴリさんに皮肉交じりに仰いました。
互いに見つめ合ったお二人は暫くすると「ふっ」と笑みがこぼれ、そこからは他愛のない話で盛り上がっておりました。
こうして国王様との謁見が終わり、ユリウス様の執務室へと通されました。
「あぁ~、緊張したぁ~」
そう仰りながらソファに倒れ込んだのは、当然ルイスさんです。
「ルイスでも緊張するの?」
その様子を見たティムさんが馬鹿にしたように口にすれば「緊張ぐらいするだろ!?人間だもの!!」とルイスさんがすかさず言い返しておりました。
この二人は相変わらずです。
「あははは。お前達は相変わらず面白いな」
声を掛けてきたのはこの部屋の主、ユリウス様でした。
その後ろにもう一方おりますね。
「紹介しよう、コイツはマルクス。副団長兼私の側近だ」
「お初にお目にかかります。マルクス・ローデンと申します。この度の件、同行出来ず申し訳ありませんでした」
マルクス様は頭を下げ謝罪の言葉を口にしました。
「いや、謝罪など要りませんよ。副団長まで出てしまったら騎士団を纏める人間がいなくなってしまいますから」
ゴリさんが丁寧に対応する中、シモーネさんがマルクス様を見つめながら「……あの人、いい……」と頬を染めております。
まさかの副団長狙いですか!?
まあ、確かにシモーネさん好みの細マッチョ。更には王城勤めの副団長兼王子の側近。将来性は抜群です。
「あ、あの、私シモーネって言います。好きな食べ物はコーラゲン豊富な豚足。座右の銘は果報は自ら探せ。彼氏、旦那なし。旦那様に求める条件は一途な愛。ご両親との同居も可。スリーサイズは──」
「喋り過ぎだ!!」
頬を赤らめながら積極的にマルクス様に迫るシモーネさんに、ゴリさんが拳骨をお見舞いしておりました。
被害にあったマルクス様は終始苦笑いでしたが、そこはシモーネさん。
「女慣れしてないのかしら?益々いいわ……」
なんて、ポジティブ思考……逆に羨ましいです。
「──……すみません。うちの者は色々変わってまして……私でも手に余るぐらいなんです……」
ゴリさんの溜息混じりの愚痴に、ユリウス様とマルクス様は「……あぁ……」と何やら察した模様。
──……一番の変わり者はゴリさんでは?
「──ゴホンッ。まあ、なんだ。改めて礼を言う。今回の件は貴殿らが居なければ成し遂げれなかった。感謝する」
ユリウス様とマルクス様が深々頭を下げ、私達に感謝の言葉を伝えてきました。
まあ、お礼を言われて悪い気はしませんが、今回の件は私達の目的の方が九割を締めているのでお礼を言われる筋合いはありませんがね。
──私達は私達の為だけに動いたに過ぎません。
正直、この国の事など微塵も考えておりません。
ゴリさんも言葉は違えど、私と同様の意見をユリウス様に返しました。
「……そうか。お前らはそう言うとは思っていたがな」
ユリウス様は「ふっ」と微笑みながら仰いました。
それでも謝礼は渡したいと仰って下さり「欲しい物があれば遠慮せず言え」と一国の王子らしい心意気です。
「では、借き──ふぐっ!!」
私が返済をお願いしようとしたら、ティムさんに口を塞がれました。
「……謝礼も結構だ。元はと言えば、俺の兄貴が仕出かした事だしな」
ゴリさんの言葉を聞き、言葉を飲み込みました。
黒幕はゴリさんのお兄様。ここで謝礼を貰ってしまっては筋違いですね。
少々残念ですが、仕方ありません。
「……そうか……」
ユリウス様はそう仰るや否や侍女を呼びつけ、私達の目の前に軽食や菓子を並べさせました。
「せめてもの礼だ。遠慮せず食ってくれ」
どうやらユリウス様の粋な計らいによるものらしいです。
そこからは、執務室と言うのも忘れて飲んだり食べたり大変楽しいひと時でした。
……因みにシモーネさんはマルクス様にアプローチを掛けまくり、見かねたヤンさんにより強制退場となりました。
しかも、今回呼ばれた場所は謁見の間。
大きな扉を開けると、壇上には国王様が鎮座しております。
私は元令嬢なので礼儀作法は弁えておりますが他の方々は平民の為、足がすくんで動けない模様。
「無作法で大丈夫だ」とゴリさんが伝えても、国王様の威圧感に負けて皆さん顔色が宜しくありません。
「わははははは!!!そう強ばるな。私は堅苦しいのが苦手でな。普段通りに振舞ってくれて構わん」
国王直々にその様なお言葉を頂いたので、少しは気が楽になったのか皆さん顔色が戻ってきました。
「お前達には感謝している。この国の膿である毒蜘蛛を壊滅してくれた。礼を言う」
「いえ、今回の件は私の身内の仕業でもありました。礼を言われる筋合いはありません」
ゴリさんは今回の結末を簡単に説明し、明日にはこの国を出ることを伝えました。
「そんな慌てて戻ることもなかろう?お前達の敬意を表し派手に夜会を開く予定であったのだぞ?」
国王様の隣にいたユリウス様も明日出発する事に驚いておりましたがルーナを先に戻している為、長居は無用です。
それに、夜会など出席したくありません。
ここにいるのは皆、平民ですからね。
どこぞの貴族達に馬鹿にされるのが目に見えています。
「そうか。──……まったく、お前はいつも急だな」
「……お互い様だろ?」
大きな溜息を吐きながら国王様はゴリさんに皮肉交じりに仰いました。
互いに見つめ合ったお二人は暫くすると「ふっ」と笑みがこぼれ、そこからは他愛のない話で盛り上がっておりました。
こうして国王様との謁見が終わり、ユリウス様の執務室へと通されました。
「あぁ~、緊張したぁ~」
そう仰りながらソファに倒れ込んだのは、当然ルイスさんです。
「ルイスでも緊張するの?」
その様子を見たティムさんが馬鹿にしたように口にすれば「緊張ぐらいするだろ!?人間だもの!!」とルイスさんがすかさず言い返しておりました。
この二人は相変わらずです。
「あははは。お前達は相変わらず面白いな」
声を掛けてきたのはこの部屋の主、ユリウス様でした。
その後ろにもう一方おりますね。
「紹介しよう、コイツはマルクス。副団長兼私の側近だ」
「お初にお目にかかります。マルクス・ローデンと申します。この度の件、同行出来ず申し訳ありませんでした」
マルクス様は頭を下げ謝罪の言葉を口にしました。
「いや、謝罪など要りませんよ。副団長まで出てしまったら騎士団を纏める人間がいなくなってしまいますから」
ゴリさんが丁寧に対応する中、シモーネさんがマルクス様を見つめながら「……あの人、いい……」と頬を染めております。
まさかの副団長狙いですか!?
まあ、確かにシモーネさん好みの細マッチョ。更には王城勤めの副団長兼王子の側近。将来性は抜群です。
「あ、あの、私シモーネって言います。好きな食べ物はコーラゲン豊富な豚足。座右の銘は果報は自ら探せ。彼氏、旦那なし。旦那様に求める条件は一途な愛。ご両親との同居も可。スリーサイズは──」
「喋り過ぎだ!!」
頬を赤らめながら積極的にマルクス様に迫るシモーネさんに、ゴリさんが拳骨をお見舞いしておりました。
被害にあったマルクス様は終始苦笑いでしたが、そこはシモーネさん。
「女慣れしてないのかしら?益々いいわ……」
なんて、ポジティブ思考……逆に羨ましいです。
「──……すみません。うちの者は色々変わってまして……私でも手に余るぐらいなんです……」
ゴリさんの溜息混じりの愚痴に、ユリウス様とマルクス様は「……あぁ……」と何やら察した模様。
──……一番の変わり者はゴリさんでは?
「──ゴホンッ。まあ、なんだ。改めて礼を言う。今回の件は貴殿らが居なければ成し遂げれなかった。感謝する」
ユリウス様とマルクス様が深々頭を下げ、私達に感謝の言葉を伝えてきました。
まあ、お礼を言われて悪い気はしませんが、今回の件は私達の目的の方が九割を締めているのでお礼を言われる筋合いはありませんがね。
──私達は私達の為だけに動いたに過ぎません。
正直、この国の事など微塵も考えておりません。
ゴリさんも言葉は違えど、私と同様の意見をユリウス様に返しました。
「……そうか。お前らはそう言うとは思っていたがな」
ユリウス様は「ふっ」と微笑みながら仰いました。
それでも謝礼は渡したいと仰って下さり「欲しい物があれば遠慮せず言え」と一国の王子らしい心意気です。
「では、借き──ふぐっ!!」
私が返済をお願いしようとしたら、ティムさんに口を塞がれました。
「……謝礼も結構だ。元はと言えば、俺の兄貴が仕出かした事だしな」
ゴリさんの言葉を聞き、言葉を飲み込みました。
黒幕はゴリさんのお兄様。ここで謝礼を貰ってしまっては筋違いですね。
少々残念ですが、仕方ありません。
「……そうか……」
ユリウス様はそう仰るや否や侍女を呼びつけ、私達の目の前に軽食や菓子を並べさせました。
「せめてもの礼だ。遠慮せず食ってくれ」
どうやらユリウス様の粋な計らいによるものらしいです。
そこからは、執務室と言うのも忘れて飲んだり食べたり大変楽しいひと時でした。
……因みにシモーネさんはマルクス様にアプローチを掛けまくり、見かねたヤンさんにより強制退場となりました。
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。
実家が没落したので、こうなったら落ちるところまで落ちてやります。
黒蜜きな粉
ファンタジー
ある日を境にタニヤの生活は変わってしまった。
実家は爵位を剥奪され、領地を没収された。
父は刑死、それにショックを受けた母は自ら命を絶った。
まだ学生だったタニヤは学費が払えなくなり学校を退学。
そんなタニヤが生活費を稼ぐために始めたのは冒険者だった。
しかし、どこへ行っても元貴族とバレると嫌がらせを受けてしまう。
いい加減にこんな生活はうんざりだと思っていたときに出会ったのは、商人だと名乗る怪しい者たちだった。
騙されていたって構わない。
もう金に困ることなくお腹いっぱい食べられるなら、裏家業だろうがなんでもやってやる。
タニヤは商人の元へ転職することを決意する。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
捨てられ令嬢は、異能の眼を持つ魔術師になる。私、溺愛されているみたいですよ?
miy
ファンタジー
アンデヴァイセン伯爵家の長女であるイルシスは、『魔眼』といわれる赤い瞳を持って生まれた。
魔眼は、眼を見た者に呪いをかけると言い伝えられ…昔から忌み嫌われる存在。
邸で、伯爵令嬢とは思えない扱いを受けるイルシス。でも…彼女は簡単にはへこたれない。
そんなイルシスを救おうと手を差し伸べたのは、ランチェスター侯爵家のフェルナンドだった。
前向きで逞しい精神を持つ彼女は、新しい家族に出会い…愛されていく。
そんなある日『帝国の砦』である危険な辺境の地へ…フェルナンドが出向くことに。
「私も一緒に行く!」
異能の能力を開花させ、魔術だって使いこなす最強の令嬢。
愛する人を守ってみせます!
※ご都合主義です。お許し下さい。
※ファンタジー要素多めですが、間違いなく溺愛されています。
※本編は全80話(閑話あり)です。
おまけ話を追加しました。(10/15完結)
※この作品は、ド素人が書いた2作目です。どうか…あたたかい目でご覧下さい。よろしくお願い致します。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる