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グロッサ国

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ルーナを見送った次の日、私達はユリウス様に呼び出され再び登城となりました。
しかも、今回呼ばれた場所は謁見の間。
大きな扉を開けると、壇上には国王様が鎮座しております。
私は元令嬢なので礼儀作法は弁えておりますが他の方々は平民の為、足がすくんで動けない模様。

「無作法で大丈夫だ」とゴリさんが伝えても、国王様の威圧感に負けて皆さん顔色が宜しくありません。

「わははははは!!!そう強ばるな。私は堅苦しいのが苦手でな。普段通りに振舞ってくれて構わん」

国王直々にその様なお言葉を頂いたので、少しは気が楽になったのか皆さん顔色が戻ってきました。

「お前達には感謝している。この国の膿である毒蜘蛛を壊滅してくれた。礼を言う」

「いえ、今回の件は私の身内の仕業でもありました。礼を言われる筋合いはありません」

ゴリさんは今回の結末を簡単に説明し、明日にはこの国を出ることを伝えました。

「そんな慌てて戻ることもなかろう?お前達の敬意を表し派手に夜会を開く予定であったのだぞ?」

国王様の隣にいたユリウス様も明日出発する事に驚いておりましたがルーナを先に戻している為、長居は無用です。
それに、夜会など出席したくありません。
ここにいるのは皆、平民ですからね。
どこぞの貴族達に馬鹿にされるのが目に見えています。

「そうか。──……まったく、お前はいつも急だな」

「……お互い様だろ?」

大きな溜息を吐きながら国王様はゴリさんに皮肉交じりに仰いました。
互いに見つめ合ったお二人は暫くすると「ふっ」と笑みがこぼれ、そこからは他愛のない話で盛り上がっておりました。

こうして国王様との謁見が終わり、ユリウス様の執務室へと通されました。

「あぁ~、緊張したぁ~」

そう仰りながらソファに倒れ込んだのは、当然ルイスさんです。

「ルイスでも緊張するの?」

その様子を見たティムさんが馬鹿にしたように口にすれば「緊張ぐらいするだろ!?人間だもの!!」とルイスさんがすかさず言い返しておりました。
この二人は相変わらずです。

「あははは。お前達は相変わらず面白いな」

声を掛けてきたのはこの部屋の主、ユリウス様でした。
その後ろにもう一方おりますね。

「紹介しよう、コイツはマルクス。副団長兼私の側近だ」

「お初にお目にかかります。マルクス・ローデンと申します。この度の件、同行出来ず申し訳ありませんでした」

マルクス様は頭を下げ謝罪の言葉を口にしました。

「いや、謝罪など要りませんよ。副団長まで出てしまったら騎士団を纏める人間がいなくなってしまいますから」

ゴリさんが丁寧に対応する中、シモーネさんがマルクス様を見つめながら「……あの人、いい……」と頬を染めております。

まさかの副団長狙いですか!?

まあ、確かにシモーネさん好みの細マッチョ。更には王城勤めの副団長兼王子の側近。将来性は抜群です。

「あ、あの、私シモーネって言います。好きな食べ物はコーラゲン豊富な豚足。座右の銘は果報は自ら探せ。彼氏、旦那なし。旦那様に求める条件は一途な愛。ご両親との同居も可。スリーサイズは──」

「喋り過ぎだ!!」

頬を赤らめながら積極的にマルクス様に迫るシモーネさんに、ゴリさんが拳骨をお見舞いしておりました。

被害にあったマルクス様は終始苦笑いでしたが、そこはシモーネさん。

「女慣れしてないのかしら?益々いいわ……」

なんて、ポジティブ思考……逆に羨ましいです。

「──……すみません。うちの者は色々変わってまして……私でも手に余るぐらいなんです……」

ゴリさんの溜息混じりの愚痴に、ユリウス様とマルクス様は「……あぁ……」と何やら察した模様。

──……一番の変わり者はゴリさんでは?

「──ゴホンッ。まあ、なんだ。改めて礼を言う。今回の件は貴殿らが居なければ成し遂げれなかった。感謝する」

ユリウス様とマルクス様が深々頭を下げ、私達に感謝の言葉を伝えてきました。

まあ、お礼を言われて悪い気はしませんが、今回の件は私達の目的の方が九割を締めているのでお礼を言われる筋合いはありませんがね。

──私達は私達自分の為だけに動いたに過ぎません。

正直、この国の事など微塵も考えておりません。
ゴリさんも言葉は違えど、私と同様の意見をユリウス様に返しました。

「……そうか。お前らはそう言うとは思っていたがな」

ユリウス様は「ふっ」と微笑みながら仰いました。
それでも謝礼は渡したいと仰って下さり「欲しい物があれば遠慮せず言え」と一国の王子らしい心意気です。

「では、借き──ふぐっ!!」

私が返済をお願いしようとしたら、ティムさんに口を塞がれました。

「……謝礼も結構だ。元はと言えば、俺の兄貴が仕出かした事だしな」

ゴリさんの言葉を聞き、言葉を飲み込みました。
黒幕はゴリさんのお兄様。ここで謝礼を貰ってしまっては筋違いですね。
少々残念ですが、仕方ありません。

「……そうか……」

ユリウス様はそう仰るや否や侍女を呼びつけ、私達の目の前に軽食や菓子を並べさせました。

「せめてもの礼だ。遠慮せず食ってくれ」

どうやらユリウス様の粋な計らいによるものらしいです。

そこからは、執務室と言うのも忘れて飲んだり食べたり大変楽しいひと時でした。

……因みにシモーネさんはマルクス様にアプローチを掛けまくり、見かねたヤンさんにより強制退場となりました。
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