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グロッサ国

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「細マッチョが世界一かっこいいに決まってるでしょ!?あの腕に抱かれたいって思わないの!?」

「馬鹿じゃないの!?仔犬系男子が一番でしょ!?自分好みに躾けれるのよ!?最高じゃない!!」

シモーネさんと爆乳の方の言い争いが聞こえます。
ゴリさんは盛大に溜息を吐き、ユリウス様及び騎士の方々は目が点に。
ヤンさんはその場に座り込み一服中。その傍らにはジェムさん。
ルイスさん、ティムさんは「女の喧嘩は長くなるから、終わったら教えて」と何処かに行ってしまいました。

「あんた、そんな性格だと男も寄ってこないわよ?」

「あら、心配ご無用よ。私は色気も胸もあるもの。どっかの誰かさんと違って男がほっとかないの。他人の事より、自分の事を心配したら?」

「何ですってぇぇ!!!?あぁ言えばこう言うとこ、本当腹立つわね!!」

「まあ、下品な言い草。教養もないのかしら?」

いや、貴女方何の話をしているんですか?
真面目に殺り合う気あるのでしょうか?

「もぉ--頭来た!!!あんた、覚悟しなさいよ!!」

シモーネさんは太腿に付けていた、折り畳み式の剣を取り出すと爆乳の方に斬りかかりました。
しかしその剣はあっけなく折られ、シモーネさんがあっけに取られました。

――確か、リチャードさんがこの方は怪力だと仰っていましたね……

「あんた……女の癖にこの怪力って……ゴリラかよ……」

「なんですって!?」

シモーネさんは折られた剣を眺めながら、ボソッと呟いた言葉を聞き逃さなかった爆乳の方がすぐさま反応しました。

「私だってね、こんな力望んでないわよ……だけどね、こんな力だって欲してくれる人がいるの!!あんたに分かる!?私がどんな思いで生きてきたか!?」

どうやら、この方も苦労していたようです。

「……給仕の仕事をすれば力加減を間違えて何枚も皿は割ってクビになるし、身体を売ろうとしたけど抱き着いたら男が失神するし……全部この力のせいよ!!」

「……あんた……」

「同情はいらないわよ。私はウーナに拾われて幸せなの。あの人の為ならなんだってするわ!!」

そう言うなり、足元に落ちていた剣の破片をシモーネさん目掛けて投げつけてきました。
破片はシモーネさんの頬を掠め、木に刺さりました。

シモーネさんはどこか悲しげに、爆乳の方を見ています。

「はんっ、何その顔?同情はいらないって言ったでしょ?……それとも、私の為に死んでくれる?」

「あはは」と笑い飛ばしておりますが、この方もどこか寂しそうです。

「あんたの為に死ぬのなんて御免よ」

「そう……じゃあ、続きと行きましょう!?」

素早く動きシモーネさんの首を掴んだまま木に押し付けました。

「ぐっ……」

その力にみしみしと木が音を立ててしなっています。
シモーネさんの首が先に折れるか、木が先に倒れるか……

「……かはっ……」

シモーネさんは苦しそうにもがいておりますが、力の差がありすぎます。

「おいっ!!お前らの仲間だろ!?助けなくていいのか!?」

ユリウス様がシモーネさんを心配して声をかけてきました。

――便利屋を舐めてもらっちゃ困りますよ?

これぐらいで殺られるようでは、便利屋は務まりません。
その証拠に、ほら、御覧なさい……

「ぐはっ!!」

シモーネさんじゃない声が聞こえ、慌ててユリウス様が振り向くと腹部から血を流した爆乳の方がうずくまっていました。

「あ……あんた……いつの間に……」

「……誰も武器が一つなんて言ってないわよ?」

シモーネさんの片手には血に染まった小刀が握られていました。

形勢逆転ですが、シモーネさんはあまり嬉しくなさそうでした。

「……何……してんのよ……早く……とどめ……刺しなさいよ……」

倒れている爆乳の方は、早く殺せとシモーネさんに伝えました。
暫くすると、何かを決意したシモーネさんが爆乳の方を担いでこちらに戻ってきました。

「ゴリさん、ごめんなさい。私にはとどめは刺せないわ」

「なっ!?」

ゴリさんはシモーネさんのすでに気持ちは分かっていたらしく、頭を掻きながら「まったく……」と一言仰っただけで何も言われることはありませんでした。

まぁ、爆乳の方は不満なご様子ですが……

「何……言ってんのよ!?私は……負けてまで……生き延びたくない……!!」

バチンッ!!

シモーネさんが爆乳の方の頬を叩きました。

「生きたくない!?馬鹿な事言ってんじゃないわよ!!あんた、人生楽しまずに死んでいいの!?もっとお洒落しなさいよ!!もっと美味しい物を食べて、もっと楽しみなさいよ!!私よりいい男を作ってみなさいよ!!」

叫びに近いシモーネさんの思いが伝わったのか、爆乳の方は俯きながら涙を流しているようでした。
そして「うるさい……言われなくても……あんたよりいい男作ってやるわよ」と仰ったので、私とゴリさん、ユリウス様は「素直じゃない」と思いながらも、黙って二人を見守っておりました。
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