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グロッサ国

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「……驚いたでしょう?でも、それは過去の事です。今の私はレナード様に尽くす、ただの執事です」

リチャードさんの話を一通り聞き終わると、そう仰いながら微笑みました。
その言葉に嘘は感じ取れません。きっと本当の事でしょう。
そうなると、私達の推測が間違っているという事になります。

「……すみません。私達はリチャードさんが犯人だと決めつけておりました」

私は正直に犯人だと疑っていた事を話、深く頭を下げました。
リチャードさんは「ははっ、そうだと思っていましたよ」と、軽く笑い飛ばしてくれました。

「あの、すみません。一つ分からない事があるんですが……」

リチャードさんが犯人ではない事は分かりましたが、そうなると腑に落ちない点があります。

「何でしょうか?」

「貴方は、レナード様に利益の見込めない投資や土地を買わせていますよね?それは何故です?」

「あぁ、その事ですか……」

リチャードさんは困ったように笑うと、理由を教えてくれました。

「──……表向きでは利益が出ていなように見えて、実はしっかり利益に繋がっているんです。一部だけ見て判断したのではないでしょうか?そして土地に関してですが、あの土地の土壌はまだ生きています。上手く使えば価値が倍以上に跳ね上がります。そう言う土地は、安価な内に購入しといた方がいいのです」

なるほど……
しっかり計算されていたのですね。全てはレナード様の為、と言うことですね。
これで理解出来ました。

「レナード様の公務の件も分かりました。ですが、この件は私だけの問題ではないので、ゴリ……ボス達にも話を通しておきたいんですが……」

レニさんは物凄く嫌そうな顔をしておりますが、今後の事を考えると私一人だけ事情を知っているのは面倒……いえ、不便だと思うんです。

「──……そうですね。マリー様の誤解は解けましたが、他の方々の誤解は解けておりません。この話をした方が手っ取り早いでしょう」

リチャードさんは仕方ないというような顔をして仰いました。
あまり人に知られたくないような感じですが、そこは腹を括ってもらいましょう。

話は決まったので早速私達は小屋を出て、ルイスさんの待つ部屋へと向かいました。


◇◇◇


「──……そうか、リチャードは毒蜘蛛の一味だったのか……」

そう仰るのはゴリさんです。
私が部屋のドアを開けたら、仁王立ちしたゴリさんと目が合い「やぁ、マリー。どこ行ってたのかな?」と、素敵な笑みで襟元を掴まれ、問答無用で正座をさせられ今までの経緯を話させられました。
傍らではルイスさんとジェムさんが、呆れたように私を見ておりました。

─まだ帰ってこないと思っていたんですが、計算外でした……

「まだ戻ってこないと思ったか?残念だったな。今日は二交代制だ」

ゴリさんがそう仰りながら、不敵な笑みを向けてきました。
確かに、ゴリさんと一緒に護衛に付いていたヤンさんが部屋の隅で腕を組みながらこちらを見ておりました。
これは、わざと私に二交代制の事を黙っていましたね?

ジト目でゴリさんを見ると「ふんっ」と、得意げに微笑みました。

──嵌められました……

私の行動は全てゴリさんの想定内だったのです。

「……まぁ、まさかこんな大物を連れてくるとは予想外だったがな……」

ゴリさんは、リチャードさんとレニさんを見ながら頭を抱えました。

「……で、リチャードお前の過去は分かった。お前の話が本当ならば、毒蜘蛛の奴らの狙いはお前になるが?」

確かにそうなります。
しかし、それだと……

「ちょ、ちょっと待って、リチャードさんが狙われてるのは分かったけど、それなら俺らが呼ばれた意味なくない?」

ルイスさんが話を遮って話しかけてきました。
そうです。私達はゴリさんを名指しされた挙句、大金を積まれここまでやって来たのですよ?

「ええ、確かに毒蜘蛛彼らの狙いは私です。……しかし、ルッツ様の件は私には分かりません。お役に立てず申し訳ありませんが……」

「えぇ~?使用人あんた達の誰かが仕組んだんじゃないの?」

「なっ!?」

ルイスさんが疑いの目をしながらリチャードさんとレニさんを見ると、レニさんが怒りを露わにしました。
しかし、リチャードさんが素早く止めてくれました。

──……今のはルイスさんが悪いです。

流石は空気を読まない男NO.1です。

「──いや、俺に手紙を寄こしたのはリチャード達ではない」

ゴリさんはまるで出した犯人が分かっているような物言いをしました。

──このゴリラ、そろそろ話してくれないですかね?

そんな思いを知ってか知らずか、ゴリさんは更に話を進めていきました……
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