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グロッサ国

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しばらくすると、ヤンさんとジェムさんが戻って参りました。
レナード様の様子を伺いましたが、特におかしな点は無かった様です。

「あの人、ずっと机に向かって書類整理ばっかでさ。見てるこっちの方が疲れたよ」

あちらはあちらで大変だった様で、ジェムさんはソファーに寝転がりました。

「…………」

「『真面目に仕事してる奴に悪い奴はいない』と、仰っておりますが、ヤンさん。その偏見はやめた方が良いですよ?」

私の言葉にヤンさんは「何故だ?」と問い掛けてきました。

「まず、真面目に仕事してると何故言いきれます?もしかしたら、仕事と全然関係のない書類なのかもしれません。──次に、仕事をしているから悪い奴ではないと言うのは、おかしいです。盗賊にしろ、殺し屋にしろ仕事の一種です。この方達は悪党と呼ばずして何と呼びますか?」

私は一気に捲し立てました。
ヤンさんは私の気迫に押されたのか「そ、そうか。すまん……」と謝罪して来ました。

分かってくれれば良いんです。

私が満足気でいると、ルイスさん達はあきれたようにこちらを見ておりました。

「──……あぁ~と、大分話がズレたけど、公爵は普通に仕事してただけで怪しい点は無かったと?」

「あ、あぁ、そうそう」

ティムさんの問い掛けに、ジェムさんが答えました。
ジェムさん達の話を聞く限り、レナード様は害が無いような気もしますが、簡単に信用してはいけません。

「すまん。遅くなった」

そんな事を話していると、ゴリさんも戻って参りました。

皆さん集まったところで、改めて情報交換と参ります。

私とルイスさんはリチャードさんと侍女の件。シモーネさんとティムさんはリチャードさんの偽物の件。ヤンさんとジェムさんはレナード様の件。
全てを聞き終えたゴリさんは、いつになく真剣な顔をしておりました。

「……リチャードの偽物の件だが、多分毒蜘蛛の奴が侵入していると思われる。ティムお前が探ってくれ」

「えぇ!?僕だけ!?」

「お前ならすぐに尻尾を掴めるだろ?」

ゴリさんはティムさんに指示を出しましたが「何で僕だけ……」と、ティムさんはブツブツ呟いておりました。

──ゴリさんは、ティムさんの腕を見込んでいるんですよ。

「……この屋敷の中も危険って事よね」

シモーネさんがボソッと言われました。

確かに、毒蜘蛛の方が出入りしている時点で安らぐ場所は何処にもありませんね。

しかしそうなると、レナード様の命の危険も増しますよ?

ゴリさんは私が何を言いたいのか分かったらしく「交代で警備にあたる」と、仰りました。

──まぁ、そうなりますね。
私達がここに来た理由はレナード様の護衛ですからね。

そこで、本日の夜間警備は私とルイスさんに決まりました。

「何かあったらすぐに俺を呼べ。無理は絶対するな。特にマリー!!絶対に一人で突っ走るなよ!?」

ゴリさんは私の顔に唾がかかりそうな距離で言われましたが、ゴリさんを呼びに行ってる間に逃げられるのでは?

「…………善処します…………」

それでも、ゴリさんを安心させる為に、ここは大人しく言うことを聞いておきましょう。

「……ルイス、いざとなったらお前が止めろ」

「はぁぁ!?無理だよ!!俺が逆に殺られるじゃん!!」

大丈夫です。敵と味方ぐらいは見極められます。

「さて、じゃあ、腹ごしらえでもしとくか」

ゴリさんの合図で私達は食堂へ、夕食をいただきに向かいました。
夜は長いです。腹ごしらえはしっかりしなければいけません。
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