35 / 177
侍女兼便利屋
35
しおりを挟む
「マリー、少しいいだろうか?」
いつものように、城の中を行き来していると料理長ことエリック様に呼び止められました。
あまりお話したくありませんでしたが、お断りできる身分では無いので、仕方なく了承しました。
「……この間はすまなかった。驚いたろ?」
この間と言うのは、エリック様に意気地がないので、ご両親のカデュール公爵に結婚の話を持ちかけてもらった、あの事ですね。
「ええ。ですが、こちらとしては婚約にしろ、結婚にしろご本人の口から聞くのが筋だと思っております」
「そ、そうだよな……」
エリック様は、そう言うと俯き手をモジモジさせるばかりで次の言葉が返ってきません。
──少々イライラしてきましたね。
私はこういう、はっきりしない方が大嫌いなのです。
白なら白、黒なら黒と物事をはっきりさせたいのです。
フラン様には申し訳ありませんが、これではエリック様との結婚は死んでもありえませんね。
よくもまあ、こんな方が料理長まで昇り詰めれましたね。
……まあ、料理の腕は一流ですからね。
「あの、お話がないようでしたら失礼致します」
「待ってくれ!!」
頭を下げ、この場を去ろうとしたらエリック様に腕を掴まれました。
「……この際はっきり言わせて貰いますが、私は暇では無いのです。今は業務中ですのでそんなモジモジ、ウジウジされていると非常に迷惑なんです」
「す、すまん……」
エリック様はシュンと更に項垂れてしまいました。
その姿はまるで叱られた犬の様。
──なるほど、人ではなく犬として見れば苛立ちませんか?
「それで、お話とは何でしょう?」
仕方なく、エリック様の言い訳を聞くことにしました。
「この間は騙して悪かった。本当は俺から言おうとしたんだ。しかし、マリーの顔を見ると頭が真っ白になって言葉が出てこないんだ」
私の顔を見ると、記憶障害になるんでしょうか?
それは私に会わない方がいいです。
「だが!!この気持ちは本当なんだ!!俺はマリーと、け、け、け、け」
毛?
「結婚したい!!俺の妻になってくれ!!」
「お断ります」
「即決!!!!?」
エリック様はその場に崩れ落ちました。
──まったく忙しい方ですね。
まあ、ご自身の口から言えたことは称賛しましょう。
よく、頑張りました。
しかし、それとこれとは別問題。
「……あのですね、エリック様もご存知の通り、私は落ちぶれた元令嬢です。しかも、多額の負債を抱えた劣悪物件です。エリック様とは不釣り合いです」
「そんなもの俺が何とかする!!」
いえ、すみません。建前です。本当の理由はエリック様の性格が私には不向きです。
この方と一生を共にした時に考えられる、私の精神的苦痛が一番の理由です。
「……とりあえず、エリック様とは結婚出来ません。他を当たってください」
そう伝え、その場を去ろうとすると再び腕を掴まれました。
「待ってくれ!!俺はマリーが運命の人だと思っている!!」
そんな運命は断ち切って下さい。
私の運命の方はエリック様ではありません。
「俺のどこが気に入らない!?直すから教えてくれ!!」
──これは、絶好のチャンスじゃないですか?
ここで、一刀両断してしまえば諦めも着くというもの。
「──そうですね。では言わせて頂きますが、エリック様の性格が私には合いません。男性なら物事をはっきりお答えなさい!!」
「は、はい……」
ビシッと指を指し言い切ると、エリック様は小さく返事をしました。
「返事が小さいです!!もっと大きく!!」
「はいっ!!!!」
エリック様はビシッと起立し、大きな声で返事しました。
……これではまるで、犬の躾ですね。
私は、はぁ~と溜息を吐きながらエリック様をその場に残し、仕事へと戻る事にしました。
いつものように、城の中を行き来していると料理長ことエリック様に呼び止められました。
あまりお話したくありませんでしたが、お断りできる身分では無いので、仕方なく了承しました。
「……この間はすまなかった。驚いたろ?」
この間と言うのは、エリック様に意気地がないので、ご両親のカデュール公爵に結婚の話を持ちかけてもらった、あの事ですね。
「ええ。ですが、こちらとしては婚約にしろ、結婚にしろご本人の口から聞くのが筋だと思っております」
「そ、そうだよな……」
エリック様は、そう言うと俯き手をモジモジさせるばかりで次の言葉が返ってきません。
──少々イライラしてきましたね。
私はこういう、はっきりしない方が大嫌いなのです。
白なら白、黒なら黒と物事をはっきりさせたいのです。
フラン様には申し訳ありませんが、これではエリック様との結婚は死んでもありえませんね。
よくもまあ、こんな方が料理長まで昇り詰めれましたね。
……まあ、料理の腕は一流ですからね。
「あの、お話がないようでしたら失礼致します」
「待ってくれ!!」
頭を下げ、この場を去ろうとしたらエリック様に腕を掴まれました。
「……この際はっきり言わせて貰いますが、私は暇では無いのです。今は業務中ですのでそんなモジモジ、ウジウジされていると非常に迷惑なんです」
「す、すまん……」
エリック様はシュンと更に項垂れてしまいました。
その姿はまるで叱られた犬の様。
──なるほど、人ではなく犬として見れば苛立ちませんか?
「それで、お話とは何でしょう?」
仕方なく、エリック様の言い訳を聞くことにしました。
「この間は騙して悪かった。本当は俺から言おうとしたんだ。しかし、マリーの顔を見ると頭が真っ白になって言葉が出てこないんだ」
私の顔を見ると、記憶障害になるんでしょうか?
それは私に会わない方がいいです。
「だが!!この気持ちは本当なんだ!!俺はマリーと、け、け、け、け」
毛?
「結婚したい!!俺の妻になってくれ!!」
「お断ります」
「即決!!!!?」
エリック様はその場に崩れ落ちました。
──まったく忙しい方ですね。
まあ、ご自身の口から言えたことは称賛しましょう。
よく、頑張りました。
しかし、それとこれとは別問題。
「……あのですね、エリック様もご存知の通り、私は落ちぶれた元令嬢です。しかも、多額の負債を抱えた劣悪物件です。エリック様とは不釣り合いです」
「そんなもの俺が何とかする!!」
いえ、すみません。建前です。本当の理由はエリック様の性格が私には不向きです。
この方と一生を共にした時に考えられる、私の精神的苦痛が一番の理由です。
「……とりあえず、エリック様とは結婚出来ません。他を当たってください」
そう伝え、その場を去ろうとすると再び腕を掴まれました。
「待ってくれ!!俺はマリーが運命の人だと思っている!!」
そんな運命は断ち切って下さい。
私の運命の方はエリック様ではありません。
「俺のどこが気に入らない!?直すから教えてくれ!!」
──これは、絶好のチャンスじゃないですか?
ここで、一刀両断してしまえば諦めも着くというもの。
「──そうですね。では言わせて頂きますが、エリック様の性格が私には合いません。男性なら物事をはっきりお答えなさい!!」
「は、はい……」
ビシッと指を指し言い切ると、エリック様は小さく返事をしました。
「返事が小さいです!!もっと大きく!!」
「はいっ!!!!」
エリック様はビシッと起立し、大きな声で返事しました。
……これではまるで、犬の躾ですね。
私は、はぁ~と溜息を吐きながらエリック様をその場に残し、仕事へと戻る事にしました。
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
ひめさまはおうちにかえりたい
あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)
妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
はじまりは初恋の終わりから~
秋吉美寿
ファンタジー
主人公イリューリアは、十二歳の誕生日に大好きだった初恋の人に「わたしに近づくな!おまえなんか、大嫌いだ!」と心無い事を言われ、すっかり自分に自信を無くしてしまう。
心に深い傷を負ったイリューリアはそれ以来、王子の顔もまともに見れなくなってしまった。
生まれながらに王家と公爵家のあいだ、内々に交わされていた婚約もその後のイリューリアの王子に怯える様子に心を痛めた王や公爵は、正式な婚約発表がなされる前に婚約をなかった事とした。
三年後、イリューリアは、見違えるほどに美しく成長し、本人の目立ちたくないという意思とは裏腹に、たちまち社交界の花として名を馳せてしまう。
そして、自分を振ったはずの王子や王弟の将軍がイリューリアを取りあい、イリューリアは戸惑いを隠せない。
「王子殿下は私の事が嫌いな筈なのに…」
「王弟殿下も、私のような冴えない娘にどうして?」
三年もの間、あらゆる努力で自分を磨いてきたにも関わらず自信を持てないイリューリアは自分の想いにすら自信をもてなくて…。
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる