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侍女兼便利屋

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卵が私の元に来て数日が経ちましたが、未だに還る気配がありません。
私が撫でると、反応があるので死んでいるという事は無さそうですが……

「私に姿を見せるのが嫌なんですか?」

撫でながらそう呟けば、ピクピクッと動いて返事を返してくれます。

「ふふっ。恥ずかしがり屋ですか?」

思わず笑みが零れます。
最初は面倒だと思っていましたが、ここまで来ると愛情も少なからず出てきますね。

ふと窓の外を見ると、月が綺麗に光っていました。

今日は綺麗な満月ですね……
満月の夜は不思議な事が起こると昔から言われていますが、どうですかね。

ちょっと期待をしながら、私はベッドへと入り眠気が襲ってくるまで、読みかけの本を読むことにしました。



………パキッ……ペキッ……

しばらくすると、何かが割れる音が部屋に響き渡りました。

──もしや!?

すぐさまベッドから降りて卵を見ると、頂上の殻が割れています。

「頑張ってください!!もうすぐですよ!!」

卵に向かって力強く言うと、卵を一生懸命破るくちばしがみえました。

「もう少し……もう少しです!!」

パリンッ!!!

……キュ?

生まれました!!!
とても、とても可愛いグリフォンです!!

「貴方はグリフォンだったのですね」

生まれたばかりのグリフォンは、私を親だと思っているのか、一生懸命私の方に歩み寄り体を擦り付けてきました。

その姿の愛らしい事!!
この際親バカと言われても仕方ありませんが、うちの子が一番です!!

私はそっと手で撫でると、産毛の触り心地が最高でした。

「貴方に名前を付けてあげなくてはいけませんね」

……そうですね……。満月の夜に生まれて来たので……。

「──ルーナ……」

キュ?

「貴方はルーナです。満月の綺麗な夜に生まれてきた貴女にはピッタリです」

微笑みながらルーナを撫でると、とても嬉しそうに私の手に頭を擦り寄せて来ました。

──この世に、こんな愛らしい生き物がいたなんて……

この日、私は生まれたばかりのルーナと一緒に眠りにつきました。


◇◇◇


次の日、ペット同室の許可を得る為テレザ様の元を訪れました。

テレザ様はルーナを見るなり、フワフワの毛に顔をうずめて満足そうでした。
当然、許可は降り無事にルーナをペット……もとい、家族として迎えました。

「さて、グリフォンは何を食するのでしょうか?」

キュルル、キュルル

バサバサと羽を広げ、外へ飛んでいってしまいました。

「ルーナ!!!」

急いで後を追います。
ルーナは森を目指している様でした。

──お腹が空きすぎてしまったのでしょうか?

森に入ると、ルーナは更にスピードを上げました。
私は見失わない様にするのが精一杯です。

──どこまで行くのですか?

木々を飛び越えながらルーナを追いかけていきますが、なにぶん人と幻獣。
スピードの差は明らかです。徐々に引き離されて行きました。

──このままでは、見失ってしまいますね。……仕方ありません。

私はヘアピンを取り、スカートを破き糸を作りピンに括りつけルーナに向かって投げます。
上手いこと尻尾に付けれました。これで見失う事は無いでしょう。

ルーナは更に奥に飛んでいき、姿が見えなくなりました。
私は糸を手繰りながらルーナの元へ急ぎました。

姿が見えなくなって暫くすると、獣の鳴き声が聞こえました。

「ルーナ!!!」

慌ててルーナの元へ駆けつけると、そこには自分より大きな体の狼を食べているルーナの姿がありました。

……この狼はルーナが?

キュル

ルーナは自慢げな顔で、私に向かって一声鳴きました。
血だらけの顔ですが、とても可愛い顔です。

「ルーナは素晴らしいですね。こんな大きな獲物を捕まえれるんですね」

流石はグリフォンという所です。
ルーナは狼を綺麗に食べ尽くすと、満足したように私の肩に乗ってきました。

「ご馳走様ですね。城に戻りましょうか」

キュルル!!

それからルーナはお腹が空くと外へ飛んでいき、満足すると私の部屋に戻ってくるようになりました。

餌代が掛からなくて素晴らしい子です!!



新しい家族……ルーナ(グリフォン)
餌代……無料(森の獣達)

借金返済まで残り5億8千100万2100ピール
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