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侍女兼便利屋

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盗人リンダさんはあの後すぐにテレザ様の尋問があり、全てを告白しました。

何故、人の大切な物を取ったのかの問にリンダさんは「みんなの焦った顔が興奮したから」と、「私をバカにしていた奴が顔を真っ青にして、探している姿が堪らなくゾクゾクしてやみつきになってしまった」と、言われたようでテレザ様が盛大な溜息と共に教えてくれました。

取られた物は無事、皆さんの元に帰りました。

それでも、リンダさんのやった事は許されることではなく、解雇通告が下りました。

まあ、その方がリンダさんにとってもいい事だと思います。
ここにいれば、今回の事で更にリンダさんが孤立してしまいます。
中には暴言を吐く者もいるでしょう。

リンダさんはご両親の元に帰り、暫くは療養する事になるそうです。

「……これにて、一件落着ですか……」

目の前の卵を撫でながらポツリと言いうと、卵がピクっと動きました。

「……貴方も不安でしたね。もう、大丈夫ですよ」

微笑みながら卵を撫でました──


◇◇◇


「マリアンネ、貴方、エルを勝手に使ったわね」

ギクッ!!
……やはり勝手に影の方を使うのはまずかったですかね。

殿下に呼ばれて来てみれば、やはりと言うか、小言を言われる様な気はしていたんです。

「……申し訳ありません。今回は事が事でしたので、エルさんにお願いをさせていただきました」

私は素直に頭を下げ、殿下に謝ります。

「はぁ~、今回の事は私も対応が遅れたから、これ以上責めるつもりはないわ」

おや?案外すんなりご自身の非を認めましたね。

確かに、殿下が早急にエルさんをつかって犯人を突き止めていれば、私の休日がエルさんに消えることは無かったんです。

「でも、一言欲しかったわね。……貴方達二人で会ってること知らなかったわよ?」

何か、変な空気になってきましたね。
殿下は笑顔で話している筈なんですが、その笑みが恐ろしいです。

「……報告が遅れて申し訳ありません。てっきりエルさんが、お話しているものだと思い込んでおりました」

「そうね。普通であればエルが、報告する事だわ」

殿下がキッと天井を見上げました。
すると、ガタッと音が……

──今、エルさんの顔は真っ青でしょうね。

「この際、ハッキリ言っておくけど、私はマリアンネが他の男と二人きりで会うなんて嫌なの」

「はぁ……」

「本当は貴方を檻に入れて鎖に繋いでおきたいのを、グッと堪えているのよ!!感謝してちょうだい!!」

殿下はフンッと得意気にしておりますが、それは犯罪ですよ?
感謝するもなにも、やってはいけない事です。
そんな事、子供でも知っていますよ。

「……まあ、そんな事しても貴方は逃げるでしょうけど」

殿下は、諦めたように溜息混じりでテーブルに突っ伏してしまいました。

何ですか、このいじけ虫は……
私にどうしろと?

チラッと天井を見上げますが、当然エルさんは現れません。

──このまま放置……は、まずいですかね。

バンッ!!!

「ラインハルト!!!てめぇ、またサボってやがるな!!」

困り果てた時に、ドアが勢いよく開き宰相様のご子息で、今は殿下の従者であるオスカー様が飛び込んできました。

オスカー様は、いじけ虫になっている殿下を無理やり起こし
「休んでる暇があるなら、仕事しやがれ!!」と一喝しました。

流石は次期宰相様、殿下の扱いにも慣れていますね。

「……何よ、オスカー。私は今仕事する気分じゃないの」

「お前はいつもだろ!?いつ、その気になるんだ!?」

殿下とオスカー様が言い合いを始めてしまいましたが、これは日常茶飯事。通常運転です。

──と言うか、私はもう戻って宜しいでしょうか?

「マリーごめんな。またこいつに捕まってたのか?」

「いえ、オスカー様に謝っていただくことなど何一つありません」

オスカー様は私の頭を撫でながら、謝ってくれました。
オスカー様は、私の顔を見る度にこうして、頭を撫でてくれるのです。

なんでも、昔飼っていた猫にそっくりだと言われたのがきっかけでした。

「ちょっと!!なに勝手にマリアンネに触ってんのよ!!」

「──おかしな質問だな。何故マリーを触るのにお前の許可が必要になる?」

もっともな事を言われ「グッ」と殿下が黙りました。
オスカー様、素晴らしいです。

そうして殿下はオスカー様に叱られながら、ブツブツ言いながらも書類の山に手をつけ始めました。

──こんな方が時期国王で大丈夫なのでしょうか?

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