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侍女兼便利屋
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「本日も晴天ですねぇ」
洗濯物を干しながら、空を見上げると雲ひとつない綺麗な青空です。
こんな日は、何処かに出かけたくなりますね。
令嬢だった頃は、こんないいお天気の日にはよく屋敷を抜け出して野原を駆け巡り、爺やに怒られましたね。
……爺やはどうしているんでしょうか。
我が家の没落の日、爺や達使用人には出来るだけのお給金を渡し散り散りになりました。
爺やは最後まで、父様母様のそばに居させて欲しいと懇願していましたが、父様達と一緒にいたら爺やまで落ちこぼれのレッテルが貼られてしまうと、父様は頑なに承諾しませんでした。
──屋敷を去る爺やの後ろ姿は見るに堪えませんでした。
ウチの使用人達は皆が優秀でしたから、すぐに他が見つかるはずです。
「マリー!!そこが終わったら料理長が呼んでるわ!!」
「はい、すぐに向かいます」
昔を懐かしんでる場合ではありませんでした。
今は目の前の仕事に精を出さなければいけませんね。
私はすぐに残った洗濯物を干し終え、調理場へと足を運びました。
◇◇◇
「料理長、お呼びでしょうか?」
「ああ、マリーか。すまない、少し頼まれてくれくれるか?」
この方は、まだお若いのに料理長まで昇り詰めた強者です。
若いからと言って侮ってはいけません。
料理の腕前は素晴らしいです。
料理長の料理を食べたいが為に、用もないのに城に来て料理を食べる貴族の方もいます。
「何用でしょうか?」
「すまないが、これをカデュール公爵家まで配達頼めないか?」
料理長に手渡された籠の中を見ると、色とりどりの野菜や肉が挟まったサンドイッチが入っておりました。
──美味しそうですね……
「これは駄賃だ」
そう言うと紙袋を渡されました。
中には、先程のサンドイッチ。
「……分かりました。行ってまいります」
「頼んだ」
まあ、こんな美味しそうな物を頂いたら仕方ありませんね。
紙袋を自室に置いて、カデュール公爵家へ向けて城を出ます。
カデュール公爵邸は町の中心から少し離れた所にある、大きな屋敷です。
城から馬車を使わなくても、徒歩で十分の距離です。
ゆっくり街の様子を眺めながらカデュール公爵邸を目指すのもいいですね。
すると、すぐに屋敷が見えてまりました。
──相変わらず立派なお屋敷ですね。
門番に届け物を届けに来たことを伝えると、屋敷に招かれましたが、私としてはすぐに帰りたいところです。
──帰ってゆっくり頂いたサンドイッチを食したいのですが……
コンコン
そんな事を思っていると、ドアがノックされカデュール公爵夫妻がやってまりました。
まさか、ご本人が来るとは思ってみなかったので驚きました。しかも、ご夫婦揃ってです。
「お久しぶりね、マリー」
「お久しぶりです。フラン様」
実は私、カデュール公爵夫妻とは顔馴染みなのです。
その理由は簡単、フラン様と母様がまさかのお友達なんです。
……なんでも、フラン様が母様の強さに惚れ、何としてでもお友達になりたいフラン様が母様に付きまとい、見事お友達の座を勝ち取ったと言う事です。
フラン様も中々の変わり者です。
「クレアは元気かしら?」
「はい。屋敷にいた時よりも生き生きしております」
没落をした際、フラン様はすぐ様私たちの元へ駆けつけて父様を騙した輩を探し出し吊し上げにすると騒いでおりましたが、母様が止めてくれました。
「そんな必要はない」と。
もしかすると、母様も貴族の生活にうんざりしていたのかも知れません。
「こちらが、頼まれた品になります」
さっさと渡してお暇しましょう。
「あら、ありがとう。……でも、マリーを呼んだのはこれを届ける為だけじゃないのよ?」
フラン様がニヤッと嫌な微笑みを返してきました。
──これは、嵌められましたか?
洗濯物を干しながら、空を見上げると雲ひとつない綺麗な青空です。
こんな日は、何処かに出かけたくなりますね。
令嬢だった頃は、こんないいお天気の日にはよく屋敷を抜け出して野原を駆け巡り、爺やに怒られましたね。
……爺やはどうしているんでしょうか。
我が家の没落の日、爺や達使用人には出来るだけのお給金を渡し散り散りになりました。
爺やは最後まで、父様母様のそばに居させて欲しいと懇願していましたが、父様達と一緒にいたら爺やまで落ちこぼれのレッテルが貼られてしまうと、父様は頑なに承諾しませんでした。
──屋敷を去る爺やの後ろ姿は見るに堪えませんでした。
ウチの使用人達は皆が優秀でしたから、すぐに他が見つかるはずです。
「マリー!!そこが終わったら料理長が呼んでるわ!!」
「はい、すぐに向かいます」
昔を懐かしんでる場合ではありませんでした。
今は目の前の仕事に精を出さなければいけませんね。
私はすぐに残った洗濯物を干し終え、調理場へと足を運びました。
◇◇◇
「料理長、お呼びでしょうか?」
「ああ、マリーか。すまない、少し頼まれてくれくれるか?」
この方は、まだお若いのに料理長まで昇り詰めた強者です。
若いからと言って侮ってはいけません。
料理の腕前は素晴らしいです。
料理長の料理を食べたいが為に、用もないのに城に来て料理を食べる貴族の方もいます。
「何用でしょうか?」
「すまないが、これをカデュール公爵家まで配達頼めないか?」
料理長に手渡された籠の中を見ると、色とりどりの野菜や肉が挟まったサンドイッチが入っておりました。
──美味しそうですね……
「これは駄賃だ」
そう言うと紙袋を渡されました。
中には、先程のサンドイッチ。
「……分かりました。行ってまいります」
「頼んだ」
まあ、こんな美味しそうな物を頂いたら仕方ありませんね。
紙袋を自室に置いて、カデュール公爵家へ向けて城を出ます。
カデュール公爵邸は町の中心から少し離れた所にある、大きな屋敷です。
城から馬車を使わなくても、徒歩で十分の距離です。
ゆっくり街の様子を眺めながらカデュール公爵邸を目指すのもいいですね。
すると、すぐに屋敷が見えてまりました。
──相変わらず立派なお屋敷ですね。
門番に届け物を届けに来たことを伝えると、屋敷に招かれましたが、私としてはすぐに帰りたいところです。
──帰ってゆっくり頂いたサンドイッチを食したいのですが……
コンコン
そんな事を思っていると、ドアがノックされカデュール公爵夫妻がやってまりました。
まさか、ご本人が来るとは思ってみなかったので驚きました。しかも、ご夫婦揃ってです。
「お久しぶりね、マリー」
「お久しぶりです。フラン様」
実は私、カデュール公爵夫妻とは顔馴染みなのです。
その理由は簡単、フラン様と母様がまさかのお友達なんです。
……なんでも、フラン様が母様の強さに惚れ、何としてでもお友達になりたいフラン様が母様に付きまとい、見事お友達の座を勝ち取ったと言う事です。
フラン様も中々の変わり者です。
「クレアは元気かしら?」
「はい。屋敷にいた時よりも生き生きしております」
没落をした際、フラン様はすぐ様私たちの元へ駆けつけて父様を騙した輩を探し出し吊し上げにすると騒いでおりましたが、母様が止めてくれました。
「そんな必要はない」と。
もしかすると、母様も貴族の生活にうんざりしていたのかも知れません。
「こちらが、頼まれた品になります」
さっさと渡してお暇しましょう。
「あら、ありがとう。……でも、マリーを呼んだのはこれを届ける為だけじゃないのよ?」
フラン様がニヤッと嫌な微笑みを返してきました。
──これは、嵌められましたか?
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