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侍女兼便利屋

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「マリアンネ、今日も憎たらしいほど綺麗ね」

「……ありがとうございます」

ここは、王城の一室。
そして、私の目の前には見目麗しい殿方。
こんな喋りをしていても、殿方です。
この方は、このエンバレク国の第一王子ラインハルト・エンバレク様。
どういう訳か、ここ最近付きまとわれて困っています。

「……殿下、退いてください。仕事の邪魔です」

「殿下なんて呼ばないでちょうだい、ハルトと呼んでちょうだい」

──この王子、面倒臭いですね。

この方は、容姿端麗で老若男女誰にでも優しく、聡明。更に次期国王が約束されている超優良物件ですが、この口調のお陰で女性との噂が全くなく、未だに婚約者が居ない残念王子なんです。

──まぁ、この方は男色と言う噂もありますが、人の色恋沙汰など興味はありません。

そんな事を考えていると、壁にカサカサと動く黒い影を発見。

ドスッ!!

すぐさま太腿に付けていた短剣を投げ、駆除致します。

「流石、ね。お見事」

そうです。実は私元貴族です。
それも、武闘家貴族や脳筋貴族と呼ばれていた子爵令嬢でした。
何故王城で働いているかと申しますと、ウチの父親。ルドルフ・オスヴェルダは友人に騙され、多額の借金を抱えてしまいました。
そして、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となりました。

──まったく、父様は脳みそまで筋肉で出来ていました。

私はその借金を返す為、父様の少ないツテを使い、どうにか城で侍女という立場ですが、職に就けました。

因みに、父様と母様は町外れの小さな一軒家に住み、イノシシやシカなどを狩って町に売りに行き、生計を立てています。
流石私の親です。逞しい限りです。
正直、あの二人に関しては貴族の時より今の方が生き生きしております。

──娘の私に借金を丸投げして、自分達は好きな事をしてるとは……。親じゃなければ臓物を売り飛ばしている所です。

「──それにしても、中々いい光景ねぇ」

殿下の目の先を見ると、先程捲りあげたスカートがそのままで、太腿が露になっておりました。

「お見苦しい物をお見せして、申し訳ありません」

すぐにスカートを整え、先程投げた短剣を回収に行きます。

「……ねぇ、マリアンネ。借金はどれ程あるの?」

「そうですね、ざっと5億8千万ピール位ですか?」

改めて口に出すと、気の遠くなるような金額に目眩がしますね。

「……それ、私が返しましょうか?」

「結構です」

殿下にだけは死んでも借りは作りたくないです。
後々、どんな見返りを求められることやら。
そちらの方が借金より、何億倍も恐ろしい。

「でも、そんな大金、侍女の給金じゃ知れてるでしょ?」

その通りです。侍女だけではこの額の借金は返し終えれません。
なので、私はこの武力を生かした副業を黙ってしております。

「……因みにだけど、王族に関わる仕事をしている者は副業禁止だと言うことは知っているわよね?」

ピクッと一瞬肩が震えました。
王族に関わる者。これは暗に城で働いている侍女も含まれると言っています。

「──もちろん、存じ上げております」

「……そう、それならいいけど」

分かっておりますが、背に腹はかえられないのです。




借金返済まで残り……5億8千万ピール
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