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3話

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「あはははははははははは!!!!!それでこのザマか!?」

目に涙を溜めながら爆笑するギロバスを恨めしそうに睨みつける咲の容姿はボロボロ。

ゾイに飛ばされた咲は無事に軍宿舎の目の前に落とされたまでは良かったが、顔は涙でぐしゃぐしゃ、髪は突風でボンバーヘッド。足腰は抜けて立てず、地面に突っ伏したまま。

「……笑い事じゃありませんよ。死ぬかと思ったんですから」
「あははははは!!!サキは本当に面白ぇな!!人間が召喚獣を召喚するなんて前代未聞だぞ!?」

「──で?その召喚獣は何処だ?」とギロバスがゾイを探していると、咲の影からゾイが出てきた。
その姿を見るなり、ギロバスが唸った。

「ほお~……こりゃ中々のもん引き当てたな」

どうやら見た目は可愛いゾイだが、そこそこ強いらしい。
中でも防御力はトップクラスらしい。

そもそも、茶封筒に入っていたのは今後必要になるであろう召喚獣や悪魔、モンスターの召喚術付紙だったらしい。
で、今回たまたま咲が召喚獣の紙を手にし喚び寄せてしまった。と言うのが一連の経緯だった。

「まあ、手に取ったのが召喚獣だったってのが不幸中の幸いだったな」

ギロバスが言うには、悪魔やモンスターの紙を手にしていれば人間である咲の命はまず無かっただろうと言われた。

その言葉を聞いた咲は全身の血の気が引き、魔王が中を見るなと忠告していた理由がこれなのだと分かった。

「あ、あ、あ、あ、あの、これは、お咎めが……」
「あぁ~……………すまん。こればっかは庇いようがねぇ」

ギロバスは間を空けたが、どうにもならいと潔く咲に謝った。

「安心しろ、骨は拾ってやる」
「嫌だ~~~~~!!!!!!!」

素敵な笑顔で言われた。
事実上の死刑勧告。

「遅いと思って来てみれば……何事だ?」

後ろから今一番聞きたくない方の声が聞こえた気がした。
しかし、咲にはその顔を確認するのが恐ろしすぎて出来ずにいた。

ギロバスが困ったように苦笑いしながら、魔王に一連の経緯を説明してくれた。
咲は肌に感じる威圧感に怯えながら俯いていると、目線の先に靴先が映った。

その靴先は、紛れもなく魔王の物……

「……おい、人間。お前はまともに使いも出来ないのか?」

腹の奥底に響く様な低い声……お、怒っていらっしゃる……?

「もももももも、申し訳ありません!!!弁解の余地もございません!!」
「……ほお?自分の非を認めるとはいい心掛けだな」

腕を組みながら不敵な笑みを浮かべる魔王を見て、咲は終わった。と胸に手を当て、今までの人生を振り返った。

そんな咲を見て、魔王は呆れたように溜息を吐いた。

「全く……無事ならそれでいい」

そんな言葉と共に、咲の頭にポンッと優しく手が置かれた。
一瞬何が起こったのか分からず目を白黒させていた咲だが、目の前で心配そうに顔を覗き込んでいる魔王を見てようやく事態を把握した。

「え、え、じゃあ、お咎めなし!?──へぶっ!!」

目を輝かせて問いかけると、すかさず頭をはたかれた。

「んな訳あるか、しばらくで正座して反省していろ」
「えっ!?ここで!?」

「せめて、宿舎の中……」と言いかけた所で、射るような睨みで黙らされた。

渋々、砂利の上に正座する咲の姿に耐えかねたギロバスが笑いだした。

「あははははは!!サキ、この程度で許されて良かったなぁ!!」
「これはこれでいい晒し者ですよ」

ここは宿舎の目の前。こうしている間にも咲の横を怪訝そうにしながら通り過ぎる魔族達がいるのだから晒し者で間違いない。
口を尖らせ文句を言うと、ギロバスは頭を抱えた。

「お前なぁ~……いいか?この召喚付紙は軍事機密のようなものだ。それを事故とはいえ、勝手に使用したのはお前だろ?」
「──ぐッ!!」

痛いとこをつかれた。

「通常、軍事機密を漏洩した者は禁固300年以上の実刑か死罪の上晒し首だ。今回は召喚獣を勝手に喚んでいる点から更に厳しい罪に問われるだろうなぁ?」
「えっ!?」

ここでようやく自分の犯した罪の重さを知り顔面蒼白になった。
魔王は咲の顔色を見て「今頃知ったのか?」と呆れるように口にした。

「だから物凄い温情がかかってんだよ。魔王様に感謝しろよ?」
「魔王様!!ありがとうございます!!」

土下座でお礼を言うと「ふんっ」と照れたように顔を背け、城へと戻って行った。

その姿をギロバスと笑いながら見送ったが、それは魔王には内緒だ。
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