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第14話「嘘」

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20代後半は、色々あったけど、付き合うような相手には出会わず、1回限りの男が続いた。
どうせ、僕は24歳から25歳まで付き合ったM君で、もう全てを経験した感じだったから何とも思わなかった。
僕の田舎にもゲイバーはあるんだけど、地元は怖いので、福岡や大阪に月2回程度、遊びに行っていた。
僕は20代に別れを告げ、30歳になった。

大阪のゲイバーに行ったときだった。
お客さんの中に、マッチョで、すごく男らしくて、顔もかっこ可愛い、僕のど真ん中のタイプの男がいた。
大阪と東京のゲイバーでの違いって、両方行ってみて、前からすごく感じていたんだけど、東京では、お互いタイプだと思ってても、なかなかどちらとも声を掛けないことが多かった。恥ずかしいのもあるんだと思うけど、少し冷たい感じがしていた。
大阪に行き始めて、東京とは全く違う雰囲気を体験した。
みんな積極的なのだ。

「お前のこと、めっちゃタイプなんやけど、俺のこと、イケるか?」

と、どストレートに聞いてくる。
周りが聞いていようが関係ないと言った感じでフレンドリーとも、ちょっと違うけど、とにかく気軽に、ぽんぽん声が掛かる。
で、まず寝てみて、お互い次も会いたいと思ったら会う。
そんな感じだった。
僕は関西在住ではないので、大抵の男は「そりゃ無理やわ」と言って、付き合うことにはならなかった。
20代後半になると、自分の好きなタイプも自覚するようになったこともあり、自分のタイプの男とSEXする回数が、東京にいた頃より多くなった。
また、この頃は、ゲイ友Kは、まだ東京にいたため、彼の影響を受けなくて、自分の思い通りに行動できたのも大きいと思う。

その、僕の、ど真ん中のタイプの男が、なんと僕に話しかけてきた。
「お前、可愛いやん。名前教えて」

「Tです」

「俺、お前のこと、タイプやけど、俺のことどう?」

「タイプです」

「俺、バックすんねんけど、Tは受け、できるか?」

いや、ここまでどストレートに聞かれるのは、びっくりだったけど、これが大阪だった。
彼の名前はA君。28歳と僕より2つ年下だった。

「Tはいくつ?」

彼が「タチ」だったことも理由かもしれないけど、僕はとっさに

「27歳です」

と嘘を付いた。

その後、僕の泊まっているホテルにA君を呼んでSEXした。
3歳も歳を誤魔化しているのに、A君は全く疑っていなかった。
SEX中も、SEXが終わっても

「Tはほんま、可愛いなあ」と言って抱いてくれた。

僕が関西在住じゃないことを話してもA君は

「月1~2回会える?」

と聞いてきた。

それから月2回のペースでA君と会うようになった僕は、歳を誤魔化していると言う罪悪感が日に日に強くなっていった。
A君が僕を大事にしてくれる度、A君に申し訳なかった。
ある時、A君が

「俺、タチやけど、SEX以外の時に甘えられる年上もいいなと思うことがある」

と僕に言った。

A君、気づいてる?
いや、そんなはずはない。
え?A君、年上でもいいの?
なら、僕が最初に会った時、嘘付かなくても、A君と付き合えた?
今更後悔しても遅かった。
彼を騙していると言う、日に日に募る罪悪感に苛まれ、本当はずっと一緒にいたかったけど、今更、歳、誤魔化してたとも言えず、結局僕からA君に

「長距離恋愛に疲れた」

と言う、これも「嘘」で、彼と別れた。

「なんでやねん」

彼は、その後も僕に連絡をくれたが、ますます罪悪感が強くなり、返信をしなかった。

これも、僕の人生の中で、大きな「後悔」となった。
自分でもバカだなあと思う。

この先、僕に、こんな純愛はなくなった。
別に嘘を付いてもお互いさまと言う世界に入っていった。
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