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第9話 ジャガイモ畑
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ガルドからこの辺りではマイナーなジャガイモを購入した。
まず近くのシャーリア村では扱っておらず、その向こうにあるデデム町にもなかったため、取り寄せをすることになり一か月ぐらい掛かった。
俺たちは魔石がたくさんあるのでお金は思った以上に裕福だ。
それで馬車一個分、まるごと買い付けることを条件に入手に成功したのだ。
「で、これがジャガイモです」
「おお、よく持ってきてくれた」
「これで全部じゃないので、毎週、持ってきます」
「おう、そうしてくれ」
俺は冬支度を始めたのだ。
小麦粉があるので主食はなんとかなるが、ビタミンなどは不足しがちだった。
そこで目を付けたのがジャガイモだ。
細切りにして炒めたり、鍋で蒸かすだけでもいい。
そしてなんといっても、この土地でも栽培できそうなのが最高だった。
「みんなでジャガイモを植えるぞ」
「おおおおお」
ということでさっそくジャガイモを四分の一に切って、城壁の外を耕して、そこへ植えていく。
すぐ先は森だけど、洞窟の入口の周りは俺たちが歩くため、草地が広がっているのだ。
ナイフを先端に縛った木の棒や槍を使って土を耕した。
ナイフもさらに追加で購入して、何人かに一人は持っている。
「ジャガイモ~♪ ジャガイモ~♪ ジャガイモ~♪」
新しいものが大好きなグレアが、適当な節をつけて歌う。
それを大人が真似してみんなで歌いながら畑仕事になった。
こうして俺たちは狩猟採集生活から半分は農耕生活へと進化を果たしたのだった。
さて、この森の崖には俺たち以外にもゴブリン一家が何軒か住んでいる。
それから他にも洞窟はあり、そこにはシルクスパイダーという大型のクモ型モンスターが生息していた。
「ということでシルクスパイダーと仲良くなりに行きます」
「おおおおお」
俺たちのパーティー五人が目星をつけてあった洞窟へと移動する。
「敵だと思われたら、俺たちが不利だから気を付けてね」
「お、おう」
「怖い」
「まあ、大丈夫、大丈夫」
貴族だったころにシルクスパイダーのことは文献で読んだことがある。
約二メートルの巨体なので、ゴブリンや人間すら食べるという噂があるが、実際にはそういうことは敵対しない限りは大丈夫らしい。
村ぐるみで飼ってスパイダーシルクを貰って特産品にしているところがあるのだと書かれていた。
あれからどうやら五十年ほど経過しているようだが、今も同じだろう。
洞窟は俺たちのルフガルよりかなり小さい。
入口も狭く、人が一人通れる程度だ。
「ごめんください」
もちろんシルクスパイダーは言葉を理解したりはしない。
一本道の洞窟の奥まで行くと、そこには巨大な黒いクモが巣を張っていた。
「オオカミ肉をお持ちしました。どうぞ」
肉を前に差し出す。
すると巣からクモが降りてきて、肉をぐるぐる巻きにして持っていく。
ものの数分でオオカミ肉はミイラのようになってしまった。
似たようなミイラの古いものをクモが足で器用に運び、こちらへ落としてきた。
「えっと、これを貰っていいってことですか?」
「……」
クモは応えてくれないが、たぶんそう言うことだろう。
「ありがとうございます」
お礼を言って、洞窟を出る。
手元には中身が食べられて空洞になったスパイダーシルクの塊が残された。
「これだけあれば、かなりの金額になるな」
「ゴブゴブ!」
スパイダーシルクはシルクの王様だ。
最高級の糸であり、これでドレスを作れば一財産であった。
前世の子爵家でも結婚式のときに一着作ったことがあるだけだ。
ゴブリンは陽気なので、みんなで踊りながらルフガルに戻る。
このぐるぐる巻きをメスに渡す。
あとはリーリアたちの仕事だった。
木の棒に、探り当てたスパイダーシルクの先端からぐるぐると巻いていく。
糸巻の作業だ。
「きゃっきゃ」
白い光沢のある糸が巻き取られていく。
グレアも最初は興味深そうに見ていたが、だんだん飽きて今は周りで遊んでいる。
スパイダーシルクの糸は本当に長く、どんどんと巻き取られていくが、終わりが見えない。
こうして巨大な糸巻がいくつもできあがっていく。
後日。ガルドが来訪したときにスパイダーシルクの糸巻を見せる。
「ふむ。とてもいい品に見えますね」
「だろ、スパイダーシルクだもん」
「そうですか。ちょっと値段が分からないので、後払いでもいいですか。町で売ってみます」
「後払いでいいから、頼んだよ」
「任された」
というふうな会話あって、ガルドの持ち帰りとなった。
結果は次来る時となった。
まず近くのシャーリア村では扱っておらず、その向こうにあるデデム町にもなかったため、取り寄せをすることになり一か月ぐらい掛かった。
俺たちは魔石がたくさんあるのでお金は思った以上に裕福だ。
それで馬車一個分、まるごと買い付けることを条件に入手に成功したのだ。
「で、これがジャガイモです」
「おお、よく持ってきてくれた」
「これで全部じゃないので、毎週、持ってきます」
「おう、そうしてくれ」
俺は冬支度を始めたのだ。
小麦粉があるので主食はなんとかなるが、ビタミンなどは不足しがちだった。
そこで目を付けたのがジャガイモだ。
細切りにして炒めたり、鍋で蒸かすだけでもいい。
そしてなんといっても、この土地でも栽培できそうなのが最高だった。
「みんなでジャガイモを植えるぞ」
「おおおおお」
ということでさっそくジャガイモを四分の一に切って、城壁の外を耕して、そこへ植えていく。
すぐ先は森だけど、洞窟の入口の周りは俺たちが歩くため、草地が広がっているのだ。
ナイフを先端に縛った木の棒や槍を使って土を耕した。
ナイフもさらに追加で購入して、何人かに一人は持っている。
「ジャガイモ~♪ ジャガイモ~♪ ジャガイモ~♪」
新しいものが大好きなグレアが、適当な節をつけて歌う。
それを大人が真似してみんなで歌いながら畑仕事になった。
こうして俺たちは狩猟採集生活から半分は農耕生活へと進化を果たしたのだった。
さて、この森の崖には俺たち以外にもゴブリン一家が何軒か住んでいる。
それから他にも洞窟はあり、そこにはシルクスパイダーという大型のクモ型モンスターが生息していた。
「ということでシルクスパイダーと仲良くなりに行きます」
「おおおおお」
俺たちのパーティー五人が目星をつけてあった洞窟へと移動する。
「敵だと思われたら、俺たちが不利だから気を付けてね」
「お、おう」
「怖い」
「まあ、大丈夫、大丈夫」
貴族だったころにシルクスパイダーのことは文献で読んだことがある。
約二メートルの巨体なので、ゴブリンや人間すら食べるという噂があるが、実際にはそういうことは敵対しない限りは大丈夫らしい。
村ぐるみで飼ってスパイダーシルクを貰って特産品にしているところがあるのだと書かれていた。
あれからどうやら五十年ほど経過しているようだが、今も同じだろう。
洞窟は俺たちのルフガルよりかなり小さい。
入口も狭く、人が一人通れる程度だ。
「ごめんください」
もちろんシルクスパイダーは言葉を理解したりはしない。
一本道の洞窟の奥まで行くと、そこには巨大な黒いクモが巣を張っていた。
「オオカミ肉をお持ちしました。どうぞ」
肉を前に差し出す。
すると巣からクモが降りてきて、肉をぐるぐる巻きにして持っていく。
ものの数分でオオカミ肉はミイラのようになってしまった。
似たようなミイラの古いものをクモが足で器用に運び、こちらへ落としてきた。
「えっと、これを貰っていいってことですか?」
「……」
クモは応えてくれないが、たぶんそう言うことだろう。
「ありがとうございます」
お礼を言って、洞窟を出る。
手元には中身が食べられて空洞になったスパイダーシルクの塊が残された。
「これだけあれば、かなりの金額になるな」
「ゴブゴブ!」
スパイダーシルクはシルクの王様だ。
最高級の糸であり、これでドレスを作れば一財産であった。
前世の子爵家でも結婚式のときに一着作ったことがあるだけだ。
ゴブリンは陽気なので、みんなで踊りながらルフガルに戻る。
このぐるぐる巻きをメスに渡す。
あとはリーリアたちの仕事だった。
木の棒に、探り当てたスパイダーシルクの先端からぐるぐると巻いていく。
糸巻の作業だ。
「きゃっきゃ」
白い光沢のある糸が巻き取られていく。
グレアも最初は興味深そうに見ていたが、だんだん飽きて今は周りで遊んでいる。
スパイダーシルクの糸は本当に長く、どんどんと巻き取られていくが、終わりが見えない。
こうして巨大な糸巻がいくつもできあがっていく。
後日。ガルドが来訪したときにスパイダーシルクの糸巻を見せる。
「ふむ。とてもいい品に見えますね」
「だろ、スパイダーシルクだもん」
「そうですか。ちょっと値段が分からないので、後払いでもいいですか。町で売ってみます」
「後払いでいいから、頼んだよ」
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