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2.エルフのラティア(2)
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「ゴーストの欠片はギルドで買い取ってくれたが、黒水晶は買ってくれないのか?」
「黒水晶はアクセサリーになっているので、加工品とか製品は買取していないんです。素材だけなんですよ。もしくは中古扱いですごく安いんです」
「そうなのか」
「はい」
ふむ。買取とかほとんどすべてドルボに任せっきりだったから知らなかった。
ソロで活動していたころは、売れるほど装備とか持っていなかったし。
「ところで、あの……」
ラティア嬢が困ったような顔をする。
「お名前は教えていただけませんか?」
「あ、俺か。名乗るほどのものではないが」
「そんな、貧乏な私にクエストとは名ばかりの仕事を与えて、施しをしてくれました。命の恩人です。野垂れ死ぬところだったんです」
「いや、あれは俺の都合で」
俺がギルドに行きたくないという理由だとは思っていないようだ。
貧乏な少女に施しをする名目だと勘違いしている。
「私、こんなに貧相なのに。こういう薄幸の少女が好きなんですか?」
「は? どういう意味だ」
「あの、あまりに私に都合がいいですよね。本当は体目当てで……」
なぜか半笑いで涙ぐんでいる。
「違う違う、誤解だ。施しも、ごほん、その、体目当ても、全部誤解だ」
「誤解?」
「そうだ。俺はギルドに行きたくない。目立ちたくないからな」
「ああ、そうですよね。換金した時、すごい、注目されちゃって。びっくりしました」
「だろう」
「あっ、はいっ」
今度は、納得したのか、にぱっと明るい笑顔を振りまく。
その純真さは聖女のようだ。
「それで、お名前は?」
「ルーク・ベラクリウス」
俺は名前それから、滅多に口にしない苗字を名乗る。
この聖女様に、嘘は吐きたくなかった。
「ベラクリウス、ど、どこかで」
「気のせいだろ」
「あっ、んんっ、思い出しました。伝説の魔法使い、バラエル・ベラクリウス様と同じ苗字!」
「あ、そうだな、うん」
「もしかして、ご先祖様とか?」
「そういう逸話は聞いたことがあるが、実際は遠い親戚か何かだろう。どうせ」
「そ、そうですよね」
うれしそうにしたり、ちょっとしょんぼりしたり、ラティア嬢は表情がよく変わる。
一割でも、俺にその表情筋を分けてほしいものだ。
そうしたら俺ももう少し、女の子にモテるようになるのに。
こんな朴念仁な俺だが、女性に興味がないわけではない。
むしろ逆だ。
美少女をめちゃくちゃにしたい。そんな衝動も幾分か思うこともある。
女性とベッドでにゃんにゃんしてみたい。
猫ちゃんは、どんな声で鳴いてくれるだろうか。ぐへへ。
いかんな。目の前の清純そうな表情で興味深そうに聞いてくれている美少女に申し訳が立たない。
「でもでも、ルーク様ってお強いんでしょう?」
「これでも個人Bランク、追放されたがパーティーはAランクだった」
「Aランク! すごい」
「俺の業績じゃない。俺は無名だからな」
「Aランクって言ったら『水竜の姫巫女』とか大剣使いドルボの『大殺の風雲児』とかですよね、ね?」
「うっ」
まさにそのドルボに追放されたわけだが。
ちなみに大殺とはドルボのことではなく、俺の魔法で即死することを意味している。
ただし、その事実を知っている人はごく少数だ。
「その大殺の風雲児が、そうだ」
「ええぇえ、なんで、そんな人がこんなところでソロで」
「まあ色々あって、パーティーを追放された」
「そんな!」
概要をかいつまんで説明したら、ラティア嬢は自分のことのように怒ってしまった。
「そんなの、あまりに酷いです。あんまりですよ」
「ああ」
「黒魔術師、ウォーロックだからって、ちょっと後ろで魔法撃ってるだけなのに」
「ぐ、それはまあ、事実だし」
「卑怯者だなんて、あんまりです。事実誤認です。パーティーが全滅したら死ぬのなんて一緒なのに」
「そうだな」
なんとか興奮している彼女をなだめる。
「わ、私なんか『最も役立たずのエンチャンター』なのに差別とかなくてみんな優しくしてくれるのに、ウォーロックの人は可哀想すぎですっ!」
「ああ、エンチャンターなのか」
「はい」
「そ、それは、なんかすまん」
しょんぼりしてしまった。
役立たずのエンチャンターとは言いえて妙だ。
事実、特定のパーティーでは無用の長物だった。
エンチャンターは、対象の人物のスキルを強化する特殊スキルを保有している。
剣士なら身体強化が強くなったり、ヒーラーなら回復力アップをしたり魔力タンク的な使い方をしたりできる。
しかし致命的な欠点があるのだ。
エンチャンターは、対象者と絶えず身体的接触をしていないと、その効果を十全に発揮できない。
つまり前衛と共にするのは「邪魔」なのだ。
そう言う意味で、ゴミ扱いされているクラスだった。
「そうか、しかしそれは、いいことを聞いた。俺には得しかない」
「はい?」
「俺とパーティーいや、ペアを組まないか」
「私なんかが?」
「私なんかではない。ラティア嬢こそが俺のペアにふさわしい」
「きゃっ、なんですかそれぇ、おだてても何も出ませんよ~」
「俺は本気だ」
真剣な表情で、ラティア嬢の瞳を見つめる。
恥ずかしそうに頬を染めるが、彼女も真剣な顔をして、見つめ返してくる。
「どういう意味なんですか? 惚れちゃいました?」
「違う。君のエンチャンターとしての力が欲しい」
ラティア嬢は、目を見開く。
本当に驚いているようだ。俺にとってエンチャンターは役に立つ。
「黒水晶はアクセサリーになっているので、加工品とか製品は買取していないんです。素材だけなんですよ。もしくは中古扱いですごく安いんです」
「そうなのか」
「はい」
ふむ。買取とかほとんどすべてドルボに任せっきりだったから知らなかった。
ソロで活動していたころは、売れるほど装備とか持っていなかったし。
「ところで、あの……」
ラティア嬢が困ったような顔をする。
「お名前は教えていただけませんか?」
「あ、俺か。名乗るほどのものではないが」
「そんな、貧乏な私にクエストとは名ばかりの仕事を与えて、施しをしてくれました。命の恩人です。野垂れ死ぬところだったんです」
「いや、あれは俺の都合で」
俺がギルドに行きたくないという理由だとは思っていないようだ。
貧乏な少女に施しをする名目だと勘違いしている。
「私、こんなに貧相なのに。こういう薄幸の少女が好きなんですか?」
「は? どういう意味だ」
「あの、あまりに私に都合がいいですよね。本当は体目当てで……」
なぜか半笑いで涙ぐんでいる。
「違う違う、誤解だ。施しも、ごほん、その、体目当ても、全部誤解だ」
「誤解?」
「そうだ。俺はギルドに行きたくない。目立ちたくないからな」
「ああ、そうですよね。換金した時、すごい、注目されちゃって。びっくりしました」
「だろう」
「あっ、はいっ」
今度は、納得したのか、にぱっと明るい笑顔を振りまく。
その純真さは聖女のようだ。
「それで、お名前は?」
「ルーク・ベラクリウス」
俺は名前それから、滅多に口にしない苗字を名乗る。
この聖女様に、嘘は吐きたくなかった。
「ベラクリウス、ど、どこかで」
「気のせいだろ」
「あっ、んんっ、思い出しました。伝説の魔法使い、バラエル・ベラクリウス様と同じ苗字!」
「あ、そうだな、うん」
「もしかして、ご先祖様とか?」
「そういう逸話は聞いたことがあるが、実際は遠い親戚か何かだろう。どうせ」
「そ、そうですよね」
うれしそうにしたり、ちょっとしょんぼりしたり、ラティア嬢は表情がよく変わる。
一割でも、俺にその表情筋を分けてほしいものだ。
そうしたら俺ももう少し、女の子にモテるようになるのに。
こんな朴念仁な俺だが、女性に興味がないわけではない。
むしろ逆だ。
美少女をめちゃくちゃにしたい。そんな衝動も幾分か思うこともある。
女性とベッドでにゃんにゃんしてみたい。
猫ちゃんは、どんな声で鳴いてくれるだろうか。ぐへへ。
いかんな。目の前の清純そうな表情で興味深そうに聞いてくれている美少女に申し訳が立たない。
「でもでも、ルーク様ってお強いんでしょう?」
「これでも個人Bランク、追放されたがパーティーはAランクだった」
「Aランク! すごい」
「俺の業績じゃない。俺は無名だからな」
「Aランクって言ったら『水竜の姫巫女』とか大剣使いドルボの『大殺の風雲児』とかですよね、ね?」
「うっ」
まさにそのドルボに追放されたわけだが。
ちなみに大殺とはドルボのことではなく、俺の魔法で即死することを意味している。
ただし、その事実を知っている人はごく少数だ。
「その大殺の風雲児が、そうだ」
「ええぇえ、なんで、そんな人がこんなところでソロで」
「まあ色々あって、パーティーを追放された」
「そんな!」
概要をかいつまんで説明したら、ラティア嬢は自分のことのように怒ってしまった。
「そんなの、あまりに酷いです。あんまりですよ」
「ああ」
「黒魔術師、ウォーロックだからって、ちょっと後ろで魔法撃ってるだけなのに」
「ぐ、それはまあ、事実だし」
「卑怯者だなんて、あんまりです。事実誤認です。パーティーが全滅したら死ぬのなんて一緒なのに」
「そうだな」
なんとか興奮している彼女をなだめる。
「わ、私なんか『最も役立たずのエンチャンター』なのに差別とかなくてみんな優しくしてくれるのに、ウォーロックの人は可哀想すぎですっ!」
「ああ、エンチャンターなのか」
「はい」
「そ、それは、なんかすまん」
しょんぼりしてしまった。
役立たずのエンチャンターとは言いえて妙だ。
事実、特定のパーティーでは無用の長物だった。
エンチャンターは、対象の人物のスキルを強化する特殊スキルを保有している。
剣士なら身体強化が強くなったり、ヒーラーなら回復力アップをしたり魔力タンク的な使い方をしたりできる。
しかし致命的な欠点があるのだ。
エンチャンターは、対象者と絶えず身体的接触をしていないと、その効果を十全に発揮できない。
つまり前衛と共にするのは「邪魔」なのだ。
そう言う意味で、ゴミ扱いされているクラスだった。
「そうか、しかしそれは、いいことを聞いた。俺には得しかない」
「はい?」
「俺とパーティーいや、ペアを組まないか」
「私なんかが?」
「私なんかではない。ラティア嬢こそが俺のペアにふさわしい」
「きゃっ、なんですかそれぇ、おだてても何も出ませんよ~」
「俺は本気だ」
真剣な表情で、ラティア嬢の瞳を見つめる。
恥ずかしそうに頬を染めるが、彼女も真剣な顔をして、見つめ返してくる。
「どういう意味なんですか? 惚れちゃいました?」
「違う。君のエンチャンターとしての力が欲しい」
ラティア嬢は、目を見開く。
本当に驚いているようだ。俺にとってエンチャンターは役に立つ。
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