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第1話 新幹線に乗って
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「生成AIの未来の創造?」
「うん」
「なんかかっこつけ」
「うぐう」
分かっている。なんかカッコよさげなタイトルをつけたかった。
僕は遠藤秀介、16歳高校一年生。
でもってこっちは向日葵明日香。同い年。というか幼馴染。
「でさ、あのねAIに萌えとかわかるかって話」
「なにそれ、あぁもう知らないわよ」
「だよな」
俺と幼馴染、世間では付き合っていることになっているが、実は付き合っていない。
確かに毎日一緒に登校して一緒に下校して、一緒に勉強したりしている。
でもそれは便利だからだ。そのほうが生活が楽なのだ。
俺はAIとか科学が好きで、彼女は自然崇拝の感情派。
意見が合う訳もなく、趣味が合う訳でもない。
俺は海外SF映画が見たいのに、彼女は邦題恋愛のべた甘いのがお好きとまあ、そりゃ反りは合わない。
「それで?」
「あぁ、この夏休みのお盆、実家のじいちゃんちへ帰るんだが、じいちゃんが『わしが死ぬ前に明日香を連れてこい。もう持たん』ってうるさくて」
「おじいちゃんね、昔一緒によく行ったもんね」
「じいちゃん。まだ俺たちが結婚すると思ってんだよ」
「だろなぁ。むかしラブラブだったもんね、私たち」
「あぁ、くっそ、そうだったよな」
二人して遠くを見つめる。
俺たちはもうとっくに相手に醒めてしまっていた。
なんだろう、明日香は飛び切りの美少女だけど、もう見飽きた。
内面は普通。悪くはないが、いまさらドキドキもしない。
彼女だってこんな底辺這ってる俺に好意なんか持ってないだろうし。
「さてどうしたもんか」
「一緒に行った方がいいよね。さすがに死んじゃったら……」
「だよな。まあ連れてったら満足するだろうし」
というような話をして、夏休み。
さっそく新幹線で移動だ。
予約した新幹線の二人席のシートに座る。
「カフェオレでいいか?」
「あ、買ってきてくれてたんだ。さんきゅ」
「ああ」
明日香は甘いカフェオレが好きだ。
俺はジンジャーエール。
あらかじめ時間もなかったのでコンビニで買っておいた。
「こういっちゃなんだけど、持つべきは何でも知ってる幼馴染だよね」
「だな」
「彼氏とかもう、幻想だし」
「まあ、そう言われるとムカつくけどな」
「だよね。ごめんぴょ。カフェオレ……ありがと」
「おお」
別に怒ってはない。あははと笑って過ごす。
新幹線は混雑しているが冷房が効いている。
白い夏ワンピースの明日香は肩が出ていて、こういうのなんていんだっけ、オープンショルダーだったか。
「なに、なんかついてる?」
「幽霊とかか?」
「え?」
「え?」
「怖い」
「いや、なんもついてないよ」
「なんだ、もう」
明日香が唇を尖らせてアヒルにする。
なんだかこういう子供っぽい顔をするのは久しぶりな気がする。
学校じゃあいい所のお嬢様だと思われてるからな。学校一の美少女とかもてはやされて。
対する俺はモブ1で、誰からも相手にされない。
いや、明日香は相手してくれるが、男も女も寄ってこない。
それで付き合ってると思われてるわけだ。
んで風当たりが非常に強いと。
『なんで、あいつ「なんか」が明日香さんの横に』
『似合わねえんだよ、底辺がさぁ』
悪口はいろいろ言われる。もちろん直接言ってくることはない。
あと明日香の前で言うこともない。なぜなら過去に明日香がそれでキレたことがあるからだ。
それで余計、俺たちの仲が深いということになったわけだけども。
いや、あれ以降、目立った場所では言われなくはなった。
ただのモブとして確立したのだ。
「アイスとか食べたかったよね?」
「あの硬い奴か?」
「うん」
「二人の愛でラブラブして溶かす、とかだよな、勘弁」
「そうだっけ、えへへ」
たまにちょっと天然なところもある明日香はペロっと舌を出して誤魔化す。
そのひとつひとつがかわいいからな、俺はもう慣れ切ってしまっているが、初見でこれだったら「一発で落ちてる」自信がある。
「またスマホ?」
「ああ、新作を書かないとな」
「小説? 飽きないの?」
「おう、毎回違うの書いてるからな、当たり前だけど」
「そうなんだ。見せてもらってもいい?」
「だめ」
「けち」
「明日香、これ見たら、興奮して眠れないぞ」
「えっそんなの書いてるの?」
「どんな想像してんだよ」
「ひっ、見せないで」
「まあいい」
ちなみに男女の恋愛小説だが普通に健全ものだ。
ただ、な、あ、うん。
ヒロインが明日香そっくりなんだ。
俺の仲ではヒロイン、イコール明日香とインプリンティングされている。
もうこれは俺の常識で性癖なのだろう。
だが現実と理想は異なる。
でも読んだら100%自分がネタだって分かるだろう。
そんなもの……読ませられるわけがない。
とまあ予約席だったので普通に目的の駅に到着した。
さてじいちゃんが迎えに来るはずだが……。
「うん」
「なんかかっこつけ」
「うぐう」
分かっている。なんかカッコよさげなタイトルをつけたかった。
僕は遠藤秀介、16歳高校一年生。
でもってこっちは向日葵明日香。同い年。というか幼馴染。
「でさ、あのねAIに萌えとかわかるかって話」
「なにそれ、あぁもう知らないわよ」
「だよな」
俺と幼馴染、世間では付き合っていることになっているが、実は付き合っていない。
確かに毎日一緒に登校して一緒に下校して、一緒に勉強したりしている。
でもそれは便利だからだ。そのほうが生活が楽なのだ。
俺はAIとか科学が好きで、彼女は自然崇拝の感情派。
意見が合う訳もなく、趣味が合う訳でもない。
俺は海外SF映画が見たいのに、彼女は邦題恋愛のべた甘いのがお好きとまあ、そりゃ反りは合わない。
「それで?」
「あぁ、この夏休みのお盆、実家のじいちゃんちへ帰るんだが、じいちゃんが『わしが死ぬ前に明日香を連れてこい。もう持たん』ってうるさくて」
「おじいちゃんね、昔一緒によく行ったもんね」
「じいちゃん。まだ俺たちが結婚すると思ってんだよ」
「だろなぁ。むかしラブラブだったもんね、私たち」
「あぁ、くっそ、そうだったよな」
二人して遠くを見つめる。
俺たちはもうとっくに相手に醒めてしまっていた。
なんだろう、明日香は飛び切りの美少女だけど、もう見飽きた。
内面は普通。悪くはないが、いまさらドキドキもしない。
彼女だってこんな底辺這ってる俺に好意なんか持ってないだろうし。
「さてどうしたもんか」
「一緒に行った方がいいよね。さすがに死んじゃったら……」
「だよな。まあ連れてったら満足するだろうし」
というような話をして、夏休み。
さっそく新幹線で移動だ。
予約した新幹線の二人席のシートに座る。
「カフェオレでいいか?」
「あ、買ってきてくれてたんだ。さんきゅ」
「ああ」
明日香は甘いカフェオレが好きだ。
俺はジンジャーエール。
あらかじめ時間もなかったのでコンビニで買っておいた。
「こういっちゃなんだけど、持つべきは何でも知ってる幼馴染だよね」
「だな」
「彼氏とかもう、幻想だし」
「まあ、そう言われるとムカつくけどな」
「だよね。ごめんぴょ。カフェオレ……ありがと」
「おお」
別に怒ってはない。あははと笑って過ごす。
新幹線は混雑しているが冷房が効いている。
白い夏ワンピースの明日香は肩が出ていて、こういうのなんていんだっけ、オープンショルダーだったか。
「なに、なんかついてる?」
「幽霊とかか?」
「え?」
「え?」
「怖い」
「いや、なんもついてないよ」
「なんだ、もう」
明日香が唇を尖らせてアヒルにする。
なんだかこういう子供っぽい顔をするのは久しぶりな気がする。
学校じゃあいい所のお嬢様だと思われてるからな。学校一の美少女とかもてはやされて。
対する俺はモブ1で、誰からも相手にされない。
いや、明日香は相手してくれるが、男も女も寄ってこない。
それで付き合ってると思われてるわけだ。
んで風当たりが非常に強いと。
『なんで、あいつ「なんか」が明日香さんの横に』
『似合わねえんだよ、底辺がさぁ』
悪口はいろいろ言われる。もちろん直接言ってくることはない。
あと明日香の前で言うこともない。なぜなら過去に明日香がそれでキレたことがあるからだ。
それで余計、俺たちの仲が深いということになったわけだけども。
いや、あれ以降、目立った場所では言われなくはなった。
ただのモブとして確立したのだ。
「アイスとか食べたかったよね?」
「あの硬い奴か?」
「うん」
「二人の愛でラブラブして溶かす、とかだよな、勘弁」
「そうだっけ、えへへ」
たまにちょっと天然なところもある明日香はペロっと舌を出して誤魔化す。
そのひとつひとつがかわいいからな、俺はもう慣れ切ってしまっているが、初見でこれだったら「一発で落ちてる」自信がある。
「またスマホ?」
「ああ、新作を書かないとな」
「小説? 飽きないの?」
「おう、毎回違うの書いてるからな、当たり前だけど」
「そうなんだ。見せてもらってもいい?」
「だめ」
「けち」
「明日香、これ見たら、興奮して眠れないぞ」
「えっそんなの書いてるの?」
「どんな想像してんだよ」
「ひっ、見せないで」
「まあいい」
ちなみに男女の恋愛小説だが普通に健全ものだ。
ただ、な、あ、うん。
ヒロインが明日香そっくりなんだ。
俺の仲ではヒロイン、イコール明日香とインプリンティングされている。
もうこれは俺の常識で性癖なのだろう。
だが現実と理想は異なる。
でも読んだら100%自分がネタだって分かるだろう。
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とまあ予約席だったので普通に目的の駅に到着した。
さてじいちゃんが迎えに来るはずだが……。
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