保健師は考える

アキノナツ

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2.保健師の受難

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あの後、なんとか月曜日に出勤する事は出来ました。
ホント、なんとかです。
いるだけで保健室での対応のみです。
役立たずです。
出歩けませんでした。

ゴリラの野郎…。

目が覚めた時、静かだったのは部活指導に出てたとの事。
留守だったら静かですよねー。
あんだけやってて動けるんだ。若いねー。

私は、ゴリラが帰って来るまで寝てましたよ。
三十代謳歌して下さい。
私は巻き込まずにね。

嫌味満載で、飯だ、タクシー呼べ、など言ってやりましたよ。

あー、ヤダヤダ。

あんだけ嫌味ったらしく言ってやり、邪険な態度であしらってやったのに、以前にも増して、付き纏ってきます。

逃げたい…。

仕事場は一緒だけど、部署違いだから、会わないで済まそうにしても向こうから何かしらの用事を作ってやってくる。

こちらは保健室から離れる事はなるべくしたくないから、逃げられない。

ゴリラは「待っててくれて」みたいに言ってくるし。
お前の為じゃない。生徒の為だ。

あー、ヤダヤダ。

「今度、食事でもどうですか?」
「嫌」

「飲みに行きましょうよ」
「嫌」

「映画とか好きですか?」
「嫌」

「絵とか興味あります?」
「嫌」

「行きたいところってあります?」
「嫌」

「イヤって地名あるの知ってます?」
「……」

「いい加減にして欲しい」

「俺と付き合って」
「嫌」

「やっと嫌以外喋ったと思ったら…」
「…強姦しといてなんなの?」
「合意ですから。好きなんですよ」

「私は嫌いです。一度したからって調子乗らないでもらいたい」
「善がってたじゃないですか?」
目がいやらしい。

「やるのが好きなら、他を当たってくれる?」
「あんたが好きだ」
「私は嫌いです」

平行線。

この前のをネタに脅してもいいけど、諸刃の剣。藪蛇だけは避けたい。ゴリラも退場願いたい。

「俺のが良かったんなら、セフレからスタートで」
腰をクイッと動かす。卑猥。
そういうのがお呼びじゃないのですわ。

それから、友達から的な言い方、何それ…。
フレンド違い!

でも、躰の相性は良いのは、あの時思ったよ。
でもね。
ゴリラは無理! 見た目も重要。
私は特徴ない平々凡々ですけどね。
でも、ゴリラは無いわー。
頭痛い。机に突っ伏す。

「何? ココでしたいの?」
はぃい? なんか仰りました?
このベッドは生徒の為のであって、そういう事に使う物ではありません!

ゴリラが連れて行こうと腰を掴んできた。
兆してきそうになって慌てた。
散々仕込まれちゃったよ。泣きたい。

「先生、何考えてるんですか?」
いやらしい顔で見下ろされる。
腹が立つ。
その顔嫌い。

「次、授業でしょ?」
授業セットを小脇に抱えると扉に向かう。
もう来んな。と思ったら、振り返り、
「今度、祖谷いや温泉行きましょう」
ニヤッと笑った。

「嫌!」

もう早く異動して!


◆◆◆


温泉に来てます。
ゴリラとではありません。
修学旅行の付き添いです。
祖谷温泉でもないです。

ゴリラもいるんですね。
マジかー。
三年担当かよ。もっと真面目…やってるみたいだね。
ちゃんと先生してます。
へー、やってるんだ。
ああいう顔も出来るんじゃん。
私、いやらしい顔しか知らないよ。

惚れたりはしませんよ。

いやらしい事の対象でしかないって事がハッキリしましたよ。

惚れる訳がない。

最終日のお風呂グループがゴリラと一緒になった。
良い体してるのは認めるよ。
一緒に入った先生方も褒めまくってます。
ホント、社会科にその筋肉必要?

そして、問題なく修学旅行は終わりました。
無事に帰り着きましたー。

疲れたー。

翌日はお休み。
でも、留守にしてた保健室に来てます。
休むようには言われたけどね。
気になりますから。
どうせ、保健室でコーヒー飲んでるだけです。ウチに居るのと殆ど変わりません。

保健室に保健の先生が居るのといないとでは雲泥の差。気持ちの問題。

薬と備品のチェックと生徒が残していった落書き帳やメモのようなお手紙をコーヒーを飲みながら見ていく。

さて、帰るか。

夕闇が濃くなってきた。

どっかで夕飯のおかずでも買おうかな。




ぷらぷら帰ってたら、後ろから抱きつかれた!

!!!!

痴漢、暴漢!

足を振って相手の脛を蹴って、スッとしゃがんで腕から抜けると持ってた鞄を思いっきり振った。

殺しにいってます。
多分、目は座ってます。

非力ですから、それぐらいしないと守れません。

「待った!」

止まりませんので、暴漢さん自分で止めてください。

ゴリラが鞄を掴んでた。

掴まれたら、鞄を捨ててダッシュで交番へ。
なんですけど、ゴリラでしたので、鞄を強く引いて返して貰った。

「何してるんですか?」
取り敢えず、訊きましょうか。
取り返した鞄をチェック。

「今、殺気を感じたんだけど」
パンパンと土をはらってます。

「気の所為でしょう」
こちらも鞄とかパンパンします。

「過剰防衛ってのがあるんですが」
「私の攻撃力なんて大した事無いですよ」
殺しにいってますよ。ヤられる前にヤる。

「あんたって…」
「ん?」
あんたっての先は?
何も言いませんか。

「帰ります」
何も言わず横に並んできました。
壁! 肉壁! 鬱陶しい!

「なんですか?」
「方向一緒」
「嘘でしょ?」
「ご飯奢るよ」
…奢りという単語は魅力的です。

疲れてたのですかね。
「中華がいいです」
乗ってしまいました。


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