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1.職業選択の自由。
しおりを挟む職業的な何やら世界観的なのも緩くお願いします(⌒-⌒; )
===============
職業選択の自由。
自分の前には無限の未来が広がっている。
ただ一歩前に踏み出せばいいのだ。
ただ選択する。職業を選択して、その為の学びを選ぶ。
今までは、選択する為の基礎的な学びを行なってきた。
そして今、その先の岐路に立っている。
俺には確固とした未来像がある訳ではない。
困った。マジに困った。
正しく困っているのである。
周りはこの日の為に色々と相談したり悩んできたのだろう。
用紙にサラサラと記入している。
俺だって先生たちと面談は何度もした。結論に至らず土壇場である。
体格もいい、運動神経もそこそこ。目も悪くない。手先もそこそこ器用な方だ。
魔力もそこそこあり、コントロールもそこそこ出来る。
全て『そこそこ』……これが困る要素だと思う。
要は突出するものはない器用貧乏の自分はどうする?
家業があればその道へ行けばいいのだろうが、それはない。
両親の職業に沿うか?
両親共に役場の人間ではあるが、そこは反対された。突出したものがあれば仕方がないが、図体のでかいのが来ても困るとの事だった。
田舎に帰ってくるのは別に構わないらしいが。
用紙を睨みながら、困っていた。
周りは書き上げて、提出しに前に行く。
椅子をガタガタさせながら、賑やかに、俺の横をすり抜けて行く。
取り残されている焦燥感の中、ペンを握ったまま固まっていた。
「あー、まだのヤツは、職員室に」
ああ、間に合わなかった。
先生と面と向かって提出は気が重い。
大慌てで記入して、ガタッと立ち上がった。
周りが一瞬固まった。
「おー、決まったかぁ」
驚きもしない先生の間延びした声が、静まり返った教室に広がる。
用紙が乱雑に入った箱の中に用紙を入れる。
にこやかに「ご苦労さん」と返す先生に会釈で返す。
席に戻った俺は再び賑やかになった教室でぼんやり窓の外を見ていた。
さっき、にこりでも出来たら印象も変わるのだろうが、無表情はデフォルトである。これがここで皆から遠巻きにされていた要因だが、そこは大目に見て欲しい。
俺は、なんとく『魔術師』を選んだ。
…なんとなく、である。
周りの反応は…気にしないでおこう。
***
工房を開くまでの腕前になった。
ま、店というには憚られるが、実家の横にあった納屋を改装しての工房だ。
作業中は集中してしまうので、ドアベルと呼び出し用のベルを設置している。
呼び出し用は片付けようと今日も思う。
チンチンチンチン…!
「連打すんじゃねぇ!」
手を拭き拭きカウンターに出る。
ドアベルがカラコロと鳴ったところで、出る為に、切りのいいところまで進めて、終わらせようとしてたのだ。
他のお客さんは俺が作業場から出てくるまで、品物見ながら待ってくれてるのに。
この幼なじみの男は堪え性がない。
ひと叩きでチーンと高い澄んだ金属音が鳴る呼び出し用ベルをこれでもかとバンバン叩きやがる。
「やっと出て来た」
咥え煙草で仕事場からそのまま出てきた格好だ。
煙草には火はついていない。
首にかけたタオルで汗を拭ってる。煤や飛んだ火花で服も顔もあちこち黒い。
「なんだ」
落ち着いた声音に、ベルの音に鼓膜をキーンさせながら、応答した。
「火傷したから薬くれ」
『ちょっとそこでさ…』と世間話が始まるような風に要求。
「ッ! どこ?! 手か?足か?」
薬ね~と棚を漁りかけて、手が止まった。
薬を掴んで、慌てて振り返る。
「大きな身体で慌てるな。腕。ちょっと火花が服の隙間に入った。スッゲー確率だよな。計算してみるか? 面白そう…だな。紙とペンない?」
カウンター横にあった紙を引き寄せて、身体をパタパタ叩いてる。どうやらペンを探してるらしい。
「それぐらいだったらソラで出来るだろ? ホラ、薬塗ってやるから腕出せ」
彼の為に用意してるようなのが棚の一角を占めている。
小柄な身体で大きな槌を打つ。
彼は鍛冶屋をやっている。
綺麗な金髪は煤で燻んで、更に荒く括られいた。
こちらの方が『魔術師』が似合いそうだ。
そして、俺が鍛冶屋の方が余程良かったのではないだろうかなどと考えてしまう。
モタモタしている面倒だ。
「服脱げ」
「えっちぃ~」
「ーーーホラ」
咥え煙草で細いがガッチリした身体に自分の腕を絡めてクネっとさせてる。
ふざけやがって。
シャツを掴んで力任せに引っ張り、裾を引き出し捲る。
「わーたわーたッ。首絞まるから~、脱ぐからぁ」
ジタバタしながらシャツを脱いだ。
白い肌に火傷痕が。
古いのはどうしようもないが、新しいのは痕が残らないようにしてやりたい。
これは俺の願望。
薬に魔力を込めながら塗ってやる。
「なんかお前の薬ってよく効くんだよなぁ。こうして塗ってもらうのも気持ちいいし…」
「薬に上乗せしてるからな」
「お前器用だよな…。もう少し愛想よかったらココももっと繁盛しそうなんだけどなぁ。魔道具も作ってんだって?」
「我流だから、簡単なのしか出来ん」
教会のバザーに出すのに作った。簡単なオルゴールの小箱だ。ウケが良かったらしい。他にも趣味で作ってる。
「この前魔獣討伐に行ったんだって?」
「後方の医療班に随行しただけだ」
「ふぅ~ん、前線で狩ってたって聞いたぞ」
「成り行きでな…」
体格がいいのと小物が後方陣営にやってきたのをそばにあったナタで倒したのが、マズっただけだ。
前線と後方、補助魔法などいいように使われた。
もう行きたくない。
魔獣が来ないようにこっそり森の奥に防御系の魔法を込めた石を投げ込んでる。
嫌う薬草を植えたりもしてる。
自分を守る為だ。
「終わったぞ」
「ありがとう。仕事戻るわ」
爽やかな笑顔で去って行った。
ーーーー実に、羨ましい。
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