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12】司は言えませんでした
しおりを挟む好きな人の一挙手一投足は気になりますよね。
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「はぁぁ…生きてるかな…」
今日は社員食堂で昼食です。相席です。社内デートです。目の前に美鈴が居るぅぅううう。心踊る。社食のカレーがご馳走に見える。
美鈴が朝寝坊してくれて感謝ぁぁあああ…。お弁当が作れなかったとかで、コンビニに行こうとしてたのを捕まえられたオレ、グッジョブッ!
こんなに嬉しい恥ずかしのデートタイムに由々しき言葉…なような気がする…。
ポツリと小さく呟いた言葉。どんな小さな事でも美鈴の事ならオレはしっかりキャッチする。しかも今は目の前なのだから。美鈴が発した言葉だが、己の耳を疑う。
脳内で幾度もリピートさせた。聞き間違いではない。でも、でも、どうして?! 大病ですか? どうしたんです?!
ぐるぐると頭の中を回る質問は口から出る前に混戦して出てこなく、素っ頓狂な声が出てしまった。しかも、ワンテンポ、否、スリーテンポ程の遅れての反応。
「はぁあ?!」
思わず出た声は、本当に間抜けである。
「ん?」
オレの音量にビクリと肩が跳ねるが、平静に反応が返る。
「美鈴さん、生きて下さいねッ」
手元のスプーンを握り締めながら、力強く言い切る。死なないでッ。
「へ? 生きてるよ?」
スマホを触りながら、水を飲んでる。
あまりにいつも通りの感じに戸惑った。
聞き間違いだったのだろうか。
「オレより先に逝かないでね?」
オレの想いの篭もった言葉も怪訝な顔で見返されるし。
何を言ってるって感じですよ。冷たい視線。それも綺麗ですけどね。めっちゃそそられるけど。
現状、えーっ!てなってるオレ。待ってよぉ~、美鈴さんが変な事言ったんじゃん。
「はぁあ? お前なぁ、俺にどんだけ要求すんだよ」
整った顔立ちの彼に固い表情で見られたら普通は肝が冷えるだろうが、オレは慣れてる。むしろ唆る。
だって、その表情がトロトロンに溶けるのを知ってるから。
ギャップ萌えで滾るッ。
心でガッツポーズ。
ん?『どんだけ』って?
暫く考える。
なんだか美鈴さんの目元が赤くなってるような……。視線が逸らされてしまった…。わぁお! おうおう、そうじゃないッ。イク話じゃないです。オレどんだけエロい目で見られてるの?!
「そっちの話じゃなくてッ」
慌てて訂正!
真面目な話。話の初めのタネは美鈴からなのに!
「冷めるから早く食べろ」
不機嫌丸出しだけど、ちょっと顔赤い。
「えっ? もう食べ終わ…ゆっくり噛んで食べて下さいよ~」
美鈴の前のトレイの器は綺麗に空だ。もう食べたのか?! 色々心配になってくる。お弁当食べながら仕事してるの知ってるけど、今は俺とランチデートですよ。もう少しゆっくり噛んでお食べ? 身体にも悪いよ?
「お前、うるさい。一服してくる」
「あー、煙草は、あ、あぅううう……言いません……ッ」
ギッと睨まれて、言葉を飲んだ。
この前からこのネタで散々だったから暫く禁句だった…。ひとり寂しくカレーをつつく。
さっきの美鈴さんの呟きはなんだったのだろう……。
喫煙室で缶コーヒーを傾ける。
手に煙草はない。元々好きじゃなかったが、最近本数が増えてる自覚はあった。いつでもやめれると思ってたが、不味いのかも…。せめて本数を減らそうかと思ってる。
視線の先の天体ショーのイベントカレンダー。近々彗星が観測できる。夜空を見る余裕はなさそうだが…。
脳裏で司が笑ってる。彼が居てはな…。
『この次って、人類どうなってるかなぁ。生きてるかなぁ…』
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美鈴さんは天文部出身。
天体って周期が長い。当たり前なんだけど、その時自分はっていつも考えちゃいます。そして、人類はって想像しちゃいますよね( ̄▽ ̄;)
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