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7】司は独占したい 微※
しおりを挟む司くんは心配してるのです。
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深く吸い込む……。
肺の奥底にまで引き込むように……。
脳が痺れる。肺が空気を求めて悲鳴を上げてる。
ゆっくり染み渡ったものを細く吐き出す。
紫煙が視界を覆い、ぼんやり景色を消していく。
今日の司くんはどんな姿を見せてくれるのだろう……。
妄想にダイブした。
煙る向こうに人が現れる。
妖艶に微笑む司が俺を誘う。
戯れ、絡み、司を堪能する。彼と素肌を合わせて対面で抱き合い彼を緩く突き上げ、深く彼に俺を埋める。汗ばむ肌が心地いい。俺を締め上げ、奥で俺を撫でる。
彼の肩向こうに、煙りの立ち込める向こうに唇を尖らせて、不服そうな司が座ってる。
司は煙草を吸わないのに…。
乱れる司と膨れっ面の司が二重に重なって、頭がクラクラする。
頭の中が、身体の末端が、痺れる…。コレはコレでいいかなぁ…。痺れが全身を満たす。
腕の中の司が煙り消えていく。
「美鈴、煙草やめよ?」
こっちが本物か…。頭がスッキリしてくる。痺れも消えていく。変化が急激な感じでちょっとくらくらする。
戻ってきたかぁ。もう少し戯れていたいんだが…。
「んー」
司の言葉がぼんやり聞こえる。考えてる、ちょっと待て…。
頭の芯が極度に痺れてる。ちょっと残ったなぁ。徐々に取れていってるからいいだろう。こそばゆくて面白い。
んー、無理矢理戻ってきたからか?
「何故迷う。実物を前によく妄想できるな」
「んー」
なんだか眠いな。コレは初めての感覚。完全に痺れが取れるまでこんな感じか?
困ったなぁ…。手元を見る。煙草は血管を収縮して覚醒してくれるはずなのに。まだ煙りの中にいる感じがする。
「おーい、戻ってこいよ」
元は眠気覚ましだった。妄想は副産物。楽しい遊びだ。
「つかさ…」
俺は、希望を言ってみたくなった。
「オレだけ見ろって」
訊いてくれるかなぁ。怒ってるようだけど…。
「挿れさせて、…くれたら、…考える…」
息を吐きながら、ゆっくり紡ぎ出す。舌も痺れてる感じだ。
言っちゃった。彼に届いただろうか。ちゃんと喋れたか、どうも、心許ない…。
「むぅぅうう……イヤ」
あー、聞こえたようで良かったが、ダメなのね。
まぁ、いいさ…。
灰が長くついた煙草を口元にゆっくり運び、深く吸い込む……。ふぅ…と、細く長く紫煙を吐き出す。
煙りの向こうで俺の司が微笑む。
「んー、妄想のオレに負ける…?」
哀しげな司が煙りの向こうへ消えていく。
そんな顔するなよ。ちょっともう妄想に浸るだけだよ…。遊ぶ、だけ…。
あー、コレって浮気? まさか~
手招きする司に手を伸ばす。彼に溺れる。
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お疲れ美鈴さん。
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