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1】妄想は煙りの中(中) ※

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 やってしまった……。

 あと少しと欲を掻いた。
 さっきのでやめておけばキリが良かったと思ってもあとの祭りである。
 ハマった。
 否、もう少しでいけそうなのだが…。

 隣の席の同僚が伸びをしながら、控えめに「この後のどうする?」と訊いてきた。
 どうやら俺はピリピリしていたらしい。
「遅れてでもいいかな?」
 平静でと自分に言い聞かせて、静かに言葉を紡ぐ。
 ただし、画面から視線が外せない。
『どこだ?』
 指がカタカタ動く。

「了解。ーーーーコン詰めんなよ」
 コトリと何かが視界の端に置かれた。
 デスクの隅に視線を向ける。
 栄養ドリンク。飲み会前に飲むヤツだった。

 フッと顔を上げると、ニッと笑う同僚がいた。
「幹事に言っとく」
「ありがとう」
 上手く笑えただろうか。肩に力が入ってたようだ。

 カリュっとドリンク剤の蓋を開けながら、去っていく同僚を見送る。

 確かに変に意固地に追いすぎてた。またやったか…。俺は追いすぎてしまう事がある。
 恋愛もそんなところがあったようで、手酷く振られてから奥手になってしまった。

 コキュコキュと一気に飲み干して、画面を見れば、なんとなく見えてきた。
 シュルシュルと空瓶に蓋をして、人がまばらになったフロアでキーボードを叩いた。



 なんとか間に合った。
 今回の歓送迎会はなんとしても参加したかった。
 名目としては、お世話になった先輩にご挨拶であるが、別件の方が重きである。

 彼が気になり出したにはいつだったか確か社員食堂で妙に賑やかな空間があるなぁと思ったのは、俺が入社して数年経って、漸くまともに動けるようになったと先輩に太鼓判をもらった頃だ。
 空間の中心に彼がいた。

 つかさ
 輪の中の誰かが言ったの単語が耳に飛び込んできた。名前か?

 一目で心が鷲掴みにされた。
 ここが社員食堂だというのも忘れる程に輝いて見えた。

 ロックオン。
『恋に落ちた』瞬間だった。

 司。
 苗字か、下の名前か分からなかったが、社の名簿を検索。
 別部署だったので知らなかっただけで、同期だった。

 同期だったら知ってそうなんだが、俺はあの頃ズタボロだったので、外見だけは完璧に取り繕ってはいたが、心は血の涙を流していたのだ。

 大学時代の大半を費やして付き合った恋人に二股掛けられ、重いやキモイや顔だけだったなどなど散々詰られ、振られた。あの時、何を言われたなんてもう覚えてない。

 脳内再生しようものならピー音で全セリフが消える。自己防衛機能が発動しちまう程の詰られだったって事だ。

 乗り換えた相手が金持ちだから、振られた?
 俺は、ガッチリの体型だけど、姿勢が猫背気味で…、もっさり髪型で、目が隠れ気味で、ダサい眼鏡が良くなかった?
 
 でも、これってキミがしてって言ってた事で。
 二人っきりの時、眼鏡を外して前髪あげては、俺の顔をまじまじと見て『ボクだけの』って満足気に笑ってたじゃん。

 キモイ?
 重い?
 俺以外に股開いてたのかよ。二股って…。
 後で知ったが、他にも開いてやがった。俺の純情、返しやがれ。エロい事は散々やってたが、気持ちは純情だったんだよ。貢ぎもしてたな…。

 振られた時は、俺が悪いんだって思ってた。何も知らずに自分を責めた。
 俺がもっと構ってやれば、そんなチャラい奴に股開く必要なかったのか?とかな。

 ただのビッチに引っ掛かっただけだったんだが。
 ゾッコンだったんだ。
 頽れたよ。

 弁当作ったり、スマホに毎日十件以上のメッセージを送るのは…、重かったのかな…。
 愛情の表現じゃないかよ…。

 そして、俺は誓った。
 もう恋はしない。
 容姿も変えよう。
 全部変えてやる!

 髪を切って、眼鏡も細いスタイリッシュなフレームにした。
 コンタクトも考えたのだが、目に異物を入れるのは…。土壇場で断念した。

 吹っ切った。
 彼にかけるつもりだった資金と時間を全て費やし短時間で改造した。
 そして、ビシッとスーツで鎧って入社。
 顔が能面の様になってたかもしれないが、そこは許して欲しい。余裕はなかったのだよ。

 だから、あの頃の事は目の前のタスクをこなす事で手一杯で、同じ部署の人間ぐらいしか覚えてなかった。
 今は、行き来もある部署など割と覚えてる…つもり、だ。

 食堂で見かけた彼を求めて、彼のいるフロアに用も無いのに彷徨いてみたり、喫煙室を回って、一服したりした。
 彼の情報の何か拾えるかと耳をそばだて、眼下の人並みを眺めている時、不意に妄想が始まったのだった。

 初めは、彼と話をしながら何処かを散策しているとか、買い物に行ったりとか、食事に行ったりとか…。可愛い妄想だった。
 こんな事あったらいいなぁ、こうだったらいいなぁといった、他愛もないモノ。

 いつしかそれが、なんというか、性的なのになってきて、デートが進んで、深い仲になっていく恋人のようで……。
 彼は従順に俺に身体を開いていって、激しい愛撫も受け入れ、乱れ喘いでくれていた。

 ただ、それは妄想の彼であって、本物じゃない。

 でも、チャンスが来た。向こうから来た。隣りの部署にやって来た。

 現実の彼とは、忘年会に初めて、酒の力を借りて声をかけれる事が出来た。
 親睦をという事を最大限に利用した。

 俺がいる部署はフロアの中でも少々浮いていた。パソコンに向き合う事が多いので、多少内向的な者が多い。引きこもりという訳ではない。ただ社交的ではないってだけだ。
 人付き合いだって普通にする。

 彼は人員補給的な配置替えでこのフロアにやってきた。
 中途半端な時期だったにも関わらず、あっという間に溶け込んでいた。

 心が浮き立ち、ざわついた。

 更に彼に惹かれたのは言うまでもないだろう。

 彼を目敏く見つけ、観察する。
 顔を仄かに赤くして、談笑している。
 身長はそんなに低くない。俺とほぼ変わらない。俺が少し高いかも知れないが誤差だ。
 周りに埋もれるような雰囲気で、溶け込み和ませていた。

 あの空気感ごと俺のモノにしたい…。

 同僚に声をかけられ、駆けつけ三杯をさせられる。酔いはしない。酒に強い遺伝子万歳。だが、急激に入る酒は少々キツイ。

 先輩にも無事会えて、支社へ行ってもといった定型文の言葉で謝辞を述べて目的終了。
 あとは、最大にしてメインの獲物の捕獲をどうするかだ。

 忘年会でいい話を小耳に挟み。
 新年会で、実行して上手く行った。
 今回はもっと上手くする。前回は手探りだったから、今回は、初めから遠慮なくと心積もりである。

 前回、上手く酒をすすめてお持ち帰りできた。

『酒で眠ると何をしても起きない』そんな話を忘年会で仕入れたのだった。

 彼らの話では、普段、昼など寝てるなぁと思って、イタズラしてやろうと近づいたら、すぐ起きられて、隙もないのに、酒の席で隅で寝てる彼は何をしても起きなくて、女子に化粧されて写真撮られてたと笑い話にされてた。

 それ、めっちゃ無防備じゃん。

 その時は、皆が帰るって頃に漸くモソモソ動き出したので、送って行ったらしい。翌日の揶揄いまでもが面白かったというような話だった。

 送りオオカミがいなくてよかった。
 あー! もう食われてるか?
 それはないな。彼はノンケだ。それは確定してる。俺のリサーチ結果だ。

 で、そこから先は観察を再開して、酒量を見極め、新年会でそれとなくピッチを上げさせ飲ませて、潰れさせる事に成功したのだった。

 俺の部屋に持ち帰ったのは言うまでもないだろう。目的はそこにあったのだから。

 スーツを脱がせ、ネクタイを外し、下着姿にした。起きる気配はなかった。
 ベッドに横たわってる彼は、俺と同じ男で、思ったほど色白ではなく、細くもなく、着痩せするタイプだったようで、ガッチリ筋肉がついている。
 だが、俺は萎える事はなかった。反対に爆上がりだった。

 ここまで剥いだのに、目を醒さない。
 あの話はホントだったんだ。
 靴下を脱がせる。
 逞ましい脹脛。筋肉の隆起に思わず舐めそうになって思い留まる。
 いくらなんでも目を覚ますかも。脚に舌を這わせてる状況は言い逃れが出来ない。
 今の仕事は気に入ってる。
 騒がれても面倒だし、辞めたくはない。
 見るだけなら大丈夫。起きはしないさ。

 綿の白い肌着にトランクス。
 シャツをぺろっと捲って、念願に乳首とご対面。
 胸筋がしっかり発達した胸に薄茶の小さな乳輪が乗っている。そこにポチッと控えめな乳首。埋まり気味にそこにある。
 立ったらどんなだろう。思い描いて愚息がムクムクと元気になり始めた。 触りたい衝動を抑えつつ、鼻息荒く、もっと見たかったところへ。トランクスに手をかける。
 やっと念願の。妄想では何度となく触ったアレをこの目で見られる。本物。
 興奮で息が荒くなるのは許してほしい。

 ふるんと現われる。
 思ったより大きかった。標準でこの大きさだと、勃ったら、、、立派ですな。

 息が掛かってしまったのだろうか。
 んーっと僅かに吐息のような声が聞こえた。顔が近かったようには思う。だってよく見たかったから。
 息を詰めてると、彼の腿が擦り合わさって、身体が捩れる。
 あわわ……! 慌てて離れる。
 重量感のある脚が目の前にある。その先に尻がッ。この尻肉を広げれば……。
 バクバク心臓がうるさい。

 解放してくれと愚息が訴える。
 素直にベルトを外し、前を寛げ窮屈な布から解放してやった。
 ぶるんと出てきたのは完勃ちだった。
 血管が浮き出て、今にも爆発しそうだ。

 脱げかけのトランクスを脱がせ、下半身の全てを、俺の目に晒される。尻肉が張ってる。

 隙間から彼のが見える。自分のは、平均より大きいと思っていたが、司のも大きい。一緒に握ったら、質量感だけでイきそうだ。

 本当に何をしても起きないようだ。
 シャツを捲り、乳首をチラ出しして、夢中で自分の愚息を扱いた。
 視覚的に十分煽られて、荒い息が彼にかかるのも構わず、自慰に耽った。

 息が掛かって擽ったかったのかゴロリと大胆な格好で仰向けに転がった。前が丸見え。

 半勃ちになっていた。

 益々滾り、扱く手に力が入る。手に大量の精液を吐き出していた。

 手を拭きつつ様子を伺うもまだ目を覚ましそうにない。
 恐る恐るむっくり起き上がってるモノに手を伸ばす。
 自分の拭き切れていない吐き出した白露でまだ湿っている手で、触った。
 ピクリと反応するが、目を覚まさない。

 ゆるく刺激してやる。
 司に触ってる!
 見るだけのつもりだったのに、止まらなかった。
 妄想とは違う感触に感動すら覚えていた。
 本物……。
 起き上がってくる陰茎を凝視する。
 柔らかかったモノが徐々に硬さを増して、僅かに彼の息が熱を帯びてくる。

 起きるかも知れないスリリングな状況と妄想の中で触りまくった物が手の中にある事は、思った以上に興奮させた。

 乾いて抵抗が出てきたので、愚息に纏わりついてる残り精液をこそげ取り、再び勃って漏れ垂れてる先走りで手をヌメらせ、彼に絡め塗りたくり指の滑りを良くさせ、扱く。血管を浮き上がらせる程に勃ち上がらせた。

 爆発寸前まで勃ち上がった彼のを舐めたくて仕方がない。
 顔が近くなっていた。
 息が掛かるほど間近で扱く。
 裏筋に指を添えて竿を扱き上げ亀頭とエラを手で包みカウパー液を掌で伸ばし、ぬちゅぬちゅと撫で広げ射精を促す。
 内腿がピクピク痙攣を起こし始めた。
 ペニスも元気にピクピクと発射態勢をとってる。

 両手で緩く力を加えながら、眠る彼の様子を伺い、トップスピードで上下させて、、、射精させた。
 手に吐き出された精液を舌に乗せる。
 青臭く苦い独特な味が広がる。

 熱っぽい吐息を吐いた彼が目を覚ましそうになって、慌てた。
 慌てたが身動ぎも出来ず、固唾を飲んで様子を伺う。

 ーーーー眠った。

 イった余韻だろうか。緩やかに大きく上下する胸。そして、そこに見える変化に胸を躍らせた。白い布を押し上げる小さな突起の存在。
 乳首を勃たせていた。ここも感じてる。

 彼の肌を堪能するように綺麗に拭き、トランクスを履かせて、布団を被せてやる。

 俺は朝になるまでまんじりともできず。再び自慰に耽ってしまった。

 早朝、漸く落ち着いた自分の後始末をして、シャワーを浴び、朝ごはんを用意する。

 のっそり起きてきた彼は心なしかスッキリした顔であったが、平謝りで謝辞と謝罪を繰り返していた。

 今までここまで酔い潰れた事がなかったと項垂れていた。
 疲れていたのだろうと慰め、気にしていないと言って、朝食に誘った。
 俺の目の前で、もきゅもきゅ食べてる姿を愛でられる喜びで、コーヒーの味が極上に変化していた。
 ニンマリと口角が上がってしまう。それをカップで隠した。

 そして今回の飲み会。
 今日は、アレを舐めてやろうと思っていた。もっと大胆に出来る気がする。酒量も把握してる。大丈夫。
 乳首も触れたら触ってみよう…。
 …妄想が暴走しそうだ。

 彼の輪の中に徐々に入っていき、酒をすすめていく。
 俺の特技の一つに気配を消せる事。
 ただ、自分が無になってるだけだと思うが。以前、意識してやったら存在感が消えたようだった。それ以降、ここぞと言う時、使っている。

 妄想の時なども意識が深いところに居るからか、存在感が消えているようだ。動き出して周りが「居たのか?!」と反応されたので気づいた。

 杯が空きそうになると注いでいく。
 順調に度数も高い物に変えていき、今回も潰す事に成功した。
 幹事に酔い潰れた者を送って行くと言い置き退出。
 るんるん気分でお持ち帰りした。


 ◇◇◇


 生暖かい気持ちがいいモノに包まれてる。
 ぼんやり目を開ければ、黒い頭が俺の股間で揺れてる。
 えーと、フェラか?
 ああ、そうだ、これはフェラです。

 コイツ上手いなぁ。誰だろう。
 イきそうだ。
 ボーイッシュな子だな…。
 最近忙しかったし、溜まってたかなぁ。こんな夢を見るなんて…。

 重い手を持ち上げて、熱心に奉仕してくれる黒い頭に手を置く。
 黒髪がピクッと跳ね、動きを止めた。
 ん?
 ぽやぽやした頭で考えてみるが、どうもはっきりしない。
 確か…飲み会で…。

「これは夢ですよ」
 男の声。夢が夢だと言う。
「夢?」
 そうか。夢なんだ…。
「そうです」
 静かで、心地いい響き。
「そうか…」
 眠りに沈んで行った。聞き覚えのある声。心地いい響…。





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