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恋の奮闘
8】プロのストーカーになるッ!(後) 微※
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変装も必要でしょう。
先の飲み会で色々と情報収集しました。
演劇サークルの方から変装アイテムをお借りできるところまでバッチリです。
お借りしたのは、高校生の制服のようなものです。えーと、足元がスースーします。主にお尻が心許ないです。太ももが裸でもないのに肌が触れ合ってます。
スカートです。確かに性別を変えた方が分かりにくいのですが…。
カツラまで貸してくれました。ロングのストレートです。バッチリですね。
このところ時間を見つけては、変装してマンションの周りで様子を伺ってます。車の有無で在宅かどうかを判断してるのですが、留守が多いです。たまに繁華街で仕事仲間らしい方々と飲み会をしてたりします。
でも、あとをつける行為はなかなか出来ません。捕まりませんね…。
おやや! 今日はお休みなのでしょうか。なんだ…。
普通にお宅訪問すれば良かった。
お茶請けは、この前美味しそうなきんつばを見つけたんだよね。ちょっとお高いからダグさんと味わいたかった。
ガラス越しに転がされる四角のあんこをいつまでも観ていられそうで。じっとそこから離れられなくて…。足元に小さな存在に気づいて、バツが悪く、場所を譲るまで、占領してました。
ダグさんと何かを分かち合うのはボクにとって身も心もほんわかと温かくしてくれる、とっても至福な時間。大好きなダグさんを目の前に、好きな甘いものが口とお腹を満たしてくれるのです。
あと勢いでダグに抱きついたりして、大きな手で撫でて貰うんです。うふふ…。
ダグさんに『好きです』って囁きます。
返事は貰えないんですが、撫でてくれます。なんだが近所の猫さん扱いのような気もしますが、優しい手つきにうっとりです。
時々、猫さんにご挨拶してるのを見かけます。お仕事帰りの駐車場に居座ってる猫さんです。ダグさんは撫でたそうにしてるんですが、猫さんがしっぽ逆立てて唸ってましてね…。
そう言えば、このスカートのウエスト、ちょっと苦しいです。ベルトが幅広い所為でしょうか…。試着の時は気になりませんでしたが…。
ミニとは違いますが、少し短めの裾から出てる脚もちょっと丸みが出てきたかも…。
今度、走り込みしよう。
『太った』の言葉が、ひょっとり顔を出しましたが、隅に押しやります。ぎゅーぎゅー。蓋もしておきましょう。
物陰から伺ってると、スエット姿のダグがエントランスから出てきたッ。帰らなくて良かった。
ポケットの膨らみから家の鍵とスマホだけのようです。近所のスーパーかコンビニだろうか。
ああ、こんな格好じゃなかったら、『ダグさん、会いたかったですぅぅうう』って抱きつけるのに。
プロのストーカーになるって決意が揺らぐ。
スカートの越しにも丸みのあるお尻が揺れてしまう。モジモジしちゃうよ。
今日は、じっくり観察です。
コンビニに入って行った後を、少し時間を空けて入って行きます。
眠そうなダグが棚の向こう。
カゴの中を遠目に確認。
何度もあくびを噛み殺してる。笑い皺の目尻がちょっと濡れてる。
可愛い。色っぽい。かっこいい。
ダグへの単語がいっぱいで、身体が揺れてしまう。
無精髭もクマさんにはチャームポイントです。
触りたい。ジャリジャリ固い感触。滅多に味わえないレア感触なのです。ダグさんはいつも身綺麗にしてるのです。
カップ麺に飲み物。日用品のあれこれ。本当にお疲れなのですね。いつもならスーパーやドラックストアで買いそうな物まであります。今日は寝て過ごすのでしょうか…。
食玩のコーナーで足を止めてます。動物キャラクターの起き上がり小法師。ちっちゃなそれをつまんで眺めて、戻した。戻しましたね。
ん~?
レジで会計してる間にそのブツを確認です。
リスさんがどんぐり持ってほほ袋膨らませてるイラストです。可愛いのですが、なんでこんなの見てたのでしょう…。
コンビニの出入り口のメロディが流れます。
大きなお店のガラスの向こうを歩いてるダグさんを確認して、ボクも出ようとしてると、サラリーマン風のおじさんに腕を掴まれてしまいました。
「お嬢ちゃん、誘ってる?」
後ろから耳元で小さく囁かれてぞわぞわです。
コンビニは防犯カメラが全方位なのです。こんな事をしてくるなんて信じらせない。
身体が固くなって、引き寄せられるままになってしまって、引き寄せられた手をスーツの股間に押し当てられた時、吐き気が。身体を捻りつつ、腕をするりと抜けます。
レジの人に痴漢ですと告げてもいいけど、男のボクが言うのもなんだかなのに、今は女装してて。なので、振り返らず、まっすぐ外に向かいました。
ダグさんはまっすぐマンションに帰って行くようです。
今日の外出は終わりかも。このところ忙しそうだったから。
朝もゆっくりしてたんだろう。もしくは、支度にバタバタだったのでしょうか。なのに、ボクの朝の挨拶に律儀にスタンプを返してくれるダグは、優しさの塊です。
ボクは、ストーカー失格です。
プロになれません。
優しいダグさんに、ボクは、相応しくないです。知れば知るほどそう思ってきました。ストーカーさんは、ねちっこく付き纏って、自分の想いを押し付けるのです。ーーーー今までのボクじゃないですか。付き纏ってはいませんでしたが…。
ハァー、それに、もっとお胸が立派な綺麗な人がお似合いです。
それに…ボク…。
とぼとぼ重い足を引き剥がします。
帰りましょう。
会えないのです。こんなボクは、会わない方がいいのです。
このままボクからも会わなかったら、ずっと会わなくなるでしょう。
そして……、お別れです。
ボクは、今、自分の性別を、初めて恨みました。
ダグはボクを癒し守ろうとしてくれてたんです。
分かってます。好いてくれるはずがないのです。野良猫さんと一緒です。
ダグさん、ボクは、もう大丈夫ですよ…。
護身術だって使えて、逃げ方だって教えてくれた。もうどこにだって行ける。
サクさんと仲良くね。
泣けてくる…。
その場から駆けて出してました。この場所から遠くへ行きたかった。
学生風の格好の長髪の女の子がぐすぐす泣きながら歩いてたら、慰めようと寄ってくる人もいるかと思うけど、靴音がまっすぐ近づいてきます。
不思議な感じがして、顔を上げると、背の高い赤毛の男と目が会う。ずんずん近づいてきますよ?
前に一人、横合いから金髪が一人、そして、後ろにも。まだ、距離感は遠いけど…囲まれた?
包囲網が狭まる。空いてる方に移動する。そのままに迫ってきて…。
黒い大きな車の方に追い込まれてると気づいた時、男達の隙間へ向かってダッシュしたが、遅かった。
ドアが開いて後ろから引き摺り込まれる。掴まれた腕からするりと抜けるが、目の前来た男に突き飛ばされるように車の中に。
バランスを崩した足が持たれて、宙に浮いて移動。後部座席のシートを背中に感じる。
助けを呼ぼうと口を開ければ、布に吸い込まれた。抑え込まれる。
カツラがズレて、ボクが変装してるのは丸わかり。
男達は笑ってる。嫌な笑い方。
「お久しぶりと初めましてだね」
ボクがボクだと知ってる人たちのようです。
サラリーマン風のが助手席に乗ってきた。
「あのまま素直について来たら良かったのに、ね?」
煙草を振り出しながら、はっきり通る声がボクに語りかけてくる。
セットした髪を手櫛で崩してる。
ライターの石が擦れ、チリチリと煙草に火がつく音。煙が吐き出される。
「さて、ドライブと行こうか」
運転席に誰かが乗り込んで、エンジンをかけます。誰かが移動したようです。
エンジンの振動が、車内を震わせました。
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ぼちぼちで申し訳ない。
今週はこれでおしまいかもσ(^_^;)
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