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恋の奮闘

5】我が道を走るッ!(後)

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 通話中のようです。

「休日なのに仕事なのね。……近くまで来たからさーーーーハッ、つれないねぇ~。外で待ってる」

 たぶん電話の相手はダグだ。
 留守宅のダグのところへ行ってたんだ。

 サクとボクとの縁が切れていてもダグとの縁が切れてるとは限らないですね。あちらの方が古い知り合いのようでしたし。どういったお付き合いかは知りませんが。

 行ってしまったのを感じて、ホッと力が抜けました。
 良かった鉢合わせになってたらどうしたらいいか分からなかった。

 立とうとして、腰が抜けてしまってるのに気づきました。立てません。仕方がありません。ダグが来たら助けてもらうぐらいに考えようとぼんやりココにいる事にしました。

 ここは部屋のような空間です。大きな窓があります。そこから見てた時、管理人室の窓だと思ってたのが、ここのだったんですね。
 空気の入れ替えか、少し開いてます。

「ヨッ」

 サクの声にビクッとしました。どうやらそこにいたようです。そう言えば『外で待つ』と言ってました。ダグが帰ってきたって事でしょう。車のエンジン音が途切れました。

「来るなら事前に連絡と言ってるだろ?」
 ダグの声です。不機嫌な口調と同時に車のドアが閉まる音。

「わるい、わるい」
 全く悪いと思ってない声音のサク。

 ある意味この二人はバランスよく付き合っていたのかもしれないです。
 ボクの所為で二人の間に何か良からぬ事が起きなければいいけど…。仲がいい者の繋がりが裂かれるのは気分のいいものではないです。ボクはそういうのが辛いです。

「お前には世話になったよ」

「へ? 何ソレ? 今生の分かれみたいなセリフだな」

 そうです。ダグがサクの友だち関係をやめる事はありません。ボクがいつまでもダグのそばにいるのが悪いんでしょうか。そうですね…。
 ダグは優しいから、ボクのそばにいてくれるなら、ボクとサクが会うような事にならないようにしたいでしょうね。

 ボクは、ダグの友人関係をボクの存在で制限はしたくないです。ダグが好きです。そばにいて欲しいです。そばに居たいです。……勝手でしょうか…。

 ボクは、誰かが誰かの為に自分の何かを諦めたり、無しにしたりして欲しくない。我が儘でしょうか…ね…。

「コレ、今月の分。ーーーーそれから、残りの分」

「へ? 少しずつで良いって。定期収入みたいでオレとしては良かっんたんだけどぉ~」

「俺が良くないんだよ。やっと返せるようになった。助かった。お前のお陰で、屋号も下ろさずにここまでやってこれた」

「じゃぁ…」

「区切りをつけたいんだ。俺の、いや、俺は、お前に甘えてた」

「オレが好きで貸してただけだ。お前は、ちゃんときっちり毎月返してる。きっちりしてるよ、お前は…。オレが…甘えてんだ。ゆっくりでいいから…」

 ボクはなんか込み入った事を聞いてる気がする。なんて事を聞いてしまったんだろう…。付き合いの長い、なんだかいい感じの二人を…ボクが…こんなに仲がいいお友達を裂こうとしてる…。

 鼻の奥がツンとしてきた。
 胸が締め付けれてる。

 ボクはダグが好き。サクは好きにはなれないけど、もうあんな事をしないなら、好きじゃないけど、嫌いじゃないよ…。

「すまないが、ケジメつけさせてくれ。お前の知り合いとかを遠慮なく殴れねぇんだよ。ブチかませ…え? タクト、なんで?」

 ボクは表に駆け出していた。
 二人の前に飛び出しいた。いましたです。

「コレ、みんなで食べて。サクは、好きじゃないけど、ダグの友だちだから、友だちにはなる。友だちには嫌がる事しちゃダメだからねッ」

 ダグに大福の袋を押し付けて、サクを見て言い切った。思った事を言えてる。ボク強くなった…と思う。ちょっと涙声だけど…。

 サクにとってボクは友だちでもなんでもなかったと思う。セフレという範疇でもなかったかも。でも…。

 サクはポカンとしてた。けど、なんか、ニヤニヤし始めて…んー、なんと言っていいやら……うん、気持ち悪い。

「重ッ」
 ダグがいきなり渡された袋を落とさないよう抱えた。

「ダグ、タッくんと面白い事になってるね。もしかしたら、ニャンニャンしてるかもとは思ってたけどぉ~。うひひ、放牧したんじゃなかったんだ」

 サクが分厚くなってる銀行の封筒片手に頭の上で手をにぎにぎしてる。動物の耳でも模してるのだろうか。

「重ッじゃなかった。って言うか、放牧ってなんだよ」

 ダグがボクとサクを交互に見ながら、自分にツッコミ入れて、喚いてる。
 ダグの慌ててるところって、初めて…か?

「だって、譲れって言うからやったけど、お前そう言うの好きじゃないから、野に放ったのかなってさ」

「お前、そういうところがぁ! 今は、そうじゃ無くて、後だッ! タクト、なんでここに居るんだ」

「え? お茶でもと…」

 ニヤニヤしてるサクと真っ赤になってるダグ。ボクは、首をすくめて小さくなりながら、上目遣いで二人を見た。ダグは怒ってるみたいで…。
 手に変な汗が滲んでくる。

 逃げたいッ!
 唐突に思った。思いついた。

「ボク帰るッ。二人は友だちやめないでねッ」

 二人に背を向けて、ダッシュのために足に力を込める。走ろうとして、ガックと止まる。
 後ろに引かれた。腕を掴まれてるぅ!
 ボクの大好きなダグの大きな手! でも、この手の先の顔は、、、めっちゃ怖ッ! 怒ってるぅぅぅうううう! うきょぉぉおおおおお!

 手をこうして、こうッ…!

 護身術スゴッ! 感謝ッ。ボク大丈夫です。ヤッタァ~、出来たぁ~。

 ダグの手を振り解き、するりと抜けて、ダッシュッ!

 るんるんで駆けて行く。
 ボクは大丈夫です。どこに行っても大丈夫。この前のような危ない事にはならないですッ。

 後ろにダグの呼び止める声とサクの笑い声を聞きながら、ボクは風になって走った。隣り町まで駆けて行けそう。
 ダグの声が一瞬近くまで近寄ったけどすぐに遠退いた。

「速すぎんじゃあぁぁ…!」
 
 ダグが叫んでた。うん、ボク速いよ!

 うふふ、捕まらないよぉ~。



=================


えーと、この後も不定期更新です(ーー;)
回復してきてますが、完治までまだ…。諸事情もぼちぼちで( ̄▽ ̄;)
気長にお付き合いいただけたらと、お願いしますσ(^_^;)

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