上 下
39 / 55
本編

21】変化の兆し(中) 微※

しおりを挟む
 
 夕食事、クンティンがふらふらしている。

「どうした?」

「ちょっと結界装置の改良を。最終調整までしてしまったんで、ちょっと疲れたかな?」

 えへへ…。と照れた感じで笑てる。可愛い…。
 サムエルは、帰らないのだったな…。知らせが来ていた。使いの者が、明日も遅くなるもとの言伝と魔晶石を持って来ていた。クンティンが嬉しそうにそれを見ていたな。質の良いものだったようだ。

「寝酒に一杯付き合わぬか? この前の話の続きも聞きたい」

 ゆっくり楽しめそうだ。
 今日こそ、あの奥を開こうではないか。時間はたっぷりある。

「いいですねッ」
 ニコニコ可愛く笑う顔が、夜のとろりと蕩ける顔に被る。腰が疼く。
 ああ、クンティンも疼くようになればいいのに…。

 何故か、素面ではねだってくる気配がない…。そろそろ俺に身体を捧げたくなるはずなんだが…。
 身体が熱くなってきて、訳が分からずとも俺を欲しくなるのだが…。

 不思議だ。さすが勇者の一行のひとりという事か。

 だが、奥まで俺を味わえば、きっと俺が欲しくなって、熱く疼く身体で俺に縋り付いてくるはずだ。俺のものにしてくれと懇願してくるだろう。

 考えるだけで激ってくる。

「さっき回復ポーション飲んだんでそろそろ効いてくると思います。お酒、楽しみだなぁ」

「とっておきのミードを用意しよう」





「美味しい~、これはこってりとしてますね」

「それは、ここの備蓄の中で一番熟成されたミードだからね。事前にテイストしたが、いい具合に仕上がってた」

 クンティンと本を挟んで酒を酌み交わす。邪魔者もいない。あとはリューリを撒いて部屋にクンティンを連れ込めばいいだけ。いつもの事だ。楽勝さッ。

 さり気なくクンティンに触れて魔力を流すが、酔ってはいるが、いつもより緩やかだ。
 ポーションの影響か…。まあ良い、彼との会話も楽しいからな。

「そりぇで、師匠ぎゃぁ…ありゃ?」
 急に呂律がおかしくなった。さっきの急激な譲渡の影響か?

「師匠殿がどうしたのだ?」
 面白いので先を促す。

「しょれで、ありゃ? えゔぁん…」
 涙目で口を押さえて、俺に助けを求めるように見遣ってくる。
 可愛いのぉ~。

「酔ったようだな。送って行こう」

「しょうしゅりゅ(そうする)」
 完全に舌がおかしくなってしまったようだ。
 本人はよく分かってなくて困惑している。

 ポーションと魔力譲渡の複合だとこうなるのか?
 熟成したミードの効果か?
 確かに杯が進んだようだな。おや、空になっておる。
 魔力が揺らいでいる。何かが発動してるようだが…。

 手を貸してやる。
 立ち上がるとフラつき俺の腕にもたれ掛かってきた。
 可愛い。愛おしくて…。ふと、胸の辺りに何かが湧いてくる…。なんだ…? おっ、そんな事よりクンティンッ!

 さぁ~、楽しもうぞッ!

「楽ししょぉ~」

 支えながら廊下を歩いてると、クンティンが俺にしなだれ掛かって、上目遣いにそんな事を言ってくる。
 俺の気持ちが分かるのか?
 じゃあ…。

「クンティンと色々愉しみたいのだ」
 本心を言ってやる。バレてるのならいいだろう。まだ意識がしっかりしてるところで快楽を刻んでやろう。大人しく送ってやる訳あるかッ。

「うふふ…、気分いいかりゃ、オレのひみちゅ、教えて、あげりゅ」

 上機嫌のクンティンが頬を染めながら、うっとりと俺を見遣ってくる。
 ドキドキしてきた。

「ん? ひみつ?」
 なんだこれは?

「うふふ…エヴァン、しゅき。だいしゅき、だよ」

「好きか。嬉しいな」
 なんだ、それか。皆同じ事を言う。

「キスがしくなるぐりゃい、だいしゅき~」
 いきなり首に腕が回って、唇が柔らかい物に当たった。

 クンティンの唇。
 唇が柔らかく押し付けられて、緩く唇が開き、更に押し付けられて来る。ちろりと控えめに舌先で舐めてきた。

 そっと離れて行きそうになった。
 このまま離れたら、何処かに行ってしまいそうな気がした…。思わず、後頭部を鷲掴むと身体を拘束して、深く口付けた。

 廊下という場所も忘れて、舌を唇の隙間から捻じ込み、口内を舐める。歯列を歯肉をなぞり、上顎に触れれば、身体がビクビクと震える。クンティンの手が俺を掴み、するりと背に回ってくる。

 背の手は、迷うような、嬉しような、不安定な動きで、撫でていた。
 キツく舌を吸い上げる。
 背の服をキュッと握り、身体を俺に預けてきた。

 好き…か。クンティンの秘密。告白か?

「先に進んでもいいか?」
 チュポッと唇を離して、とろりとしたクンティンに尋ねる。ムードも大切だからな。まだ意識がしっかりしているなら利用してやろう…。

 コクンと頷いた。





 鍵を掛けたいつもの部屋なのに、何かが違って面白い。胸が変な感じだが無視だ。
 クンティンが堕ちたからか?
 まあ、無視しておくのが良いだろう。目の前の事を愉しむだけだ。

 クンティンの服を脱がしにかかると、クンティンも俺の服を脱がそうと頑張ってる。
 酔って上手く指が動かないようで、顰めっ面になってきてるが、それも可愛い。

 そんな健気に一生懸命なクンティンをベッドに押し倒し、清浄魔法をかけながら、脱がせていくと。みるみる赤く蕩けて悶える。そうなっても、頑張って指を動かしてるが、出来なくなって、俺のシャツを掴むだけになった。

「エヴァン、奥が、お尻が、おかしい…」

 単語が少し鮮明になった。新鮮な気分だ。
 このままの状態で抱きたい。
 俺をしっかり認識させて、誰がお前を支配してるか分からせ、蹂躙尽くしてやる。俺の全てを注いでやろう。
 味合わせろ、クンティン…。

「すぐに与えてやるから、いい子にしてろ…」

 俺の言葉に柔らかく微笑んで頷く。
「好きに……使って…」
 言ってから、寂しそうな影が差したが、気にせず、首筋に食らいつき、鼻先を髪に突っ込みクンティンの匂いを嗅いだ。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

視線の先

茉莉花 香乃
BL
放課後、僕はあいつに声をかけられた。 「セーラー服着た写真撮らせて?」 ……からかわれてるんだ…そう思ったけど…あいつは本気だった ハッピーエンド 他サイトにも公開しています

フルチン魔王と雄っぱい勇者

ミクリ21
BL
フルチンの魔王と、雄っぱいが素晴らしい勇者の話。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

処理中です...