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本編

9】浄化(後)

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 俺の祖国の方に瘴気が広がってたんだな。
 確認しに行かなければ確定は出来ないが、概ねこうだと確信した。
 この王城の周りが薄いのも瘴気の性質だろう。適度に包まれてるのは、魔王の力か…。

 当初の目的通りに魔王が討伐されたら、瘴気は引き寄せられる者がいなくなるのだから、一気に雪崩れて行くのだろうな…。
 母国は飲み込まれるだろう。壁があるが、瘴気は隙間から侵食して行く。

 公国が開発した浄化装置では追いつかない。

 世界の滅亡とまでは行かないだろうが、甚大な被害が出るだろう。

 もし、誰にも知られてない場所で穢れが溜まってるか噴き出てる場所があったらどうなる?
 いずれは瘴気となって、広がるだろう…。聖協会が世界規模で巡行してるのは、どこかにあるかもしれない発生源のようなところを探してるのだろうか?

 そこまでは、俺の能力の範疇を超えてる。考えたところで想像の域を超えないし、何も出来ない。

 ココは、このままがいいのではないだろうか…。瘴気の根本的な…

「みんなッ、瘴気の浄化が出来るよッ」

 俺は深く思考の中に沈みかけたところでクンティンの声に引き上げられた。
 何かを掴みかけていた気が……。

「クンティンは、凄いゾッ! 聖女がいなくても同じ、それ以上の力を発揮出来やもしれん。魔人たちも元に戻せるやも…。君たちには感謝しても、仕切れない…」

 魔王は感極まって、顔が歪んだ。目尻に涙が…。
 俺たちに背を向けてしまった。

 サムエルも戻って来ていた。魔王の声が聞こえていたようだ。
 感心顔でクンティンを見ている。

 照れ笑いのクンティンが頬を掻いてる。

 瘴気が消える。魔人の変化も元に…。
 喜ばしい事なのに俺の気分はスッキリしない。
 コレはなんだ?

 俺は冷たい人間なのか?
 元の人の姿に戻れたら良い事じゃないのか?
 それを素直に喜べない。みんなみたいに喜べない。
 隣りのアリスンが俺の腕にそっと手を絡めて来た。

 そうだ。

 彼らはどこに帰るんだ。俺たちにモタモタしてると居場所がなくなると言ったのは魔王だぞ。

 外の世界がもう何十年と経ってる人もいるのではないのか?
 元々いた人は、魔王と同じ300年前の人だぞ。

 サムエルの兄貴さんだって、人の姿に戻って帰ったところで、サムエルのように迎えてくれるだろうか。見た目が若いで済ませられるだろうか…。

 迫害は受けないか?
 魔王の国から来たって事だけで、意味もなく暴力を受けないだろうか。魔獣に殺された親しい者たちの仇として…。
 普通に殺されるのではなく、嬲られ、集団で、殴られ、殺されたり…されるのでは…。
 その者たちが手を下した訳でもなく、ただ住んでただけで…。

 俺の村は同じ国内で移住した。もう何代も前の事なのに、俺たちはいつまで経ってもよそ者だった。日当たりの悪い土地でずっと暮らしてる。
 壁が悪いのだが、もう少し内側へ移動出来れば問題ないのに、森の近くの村だったというだけで、なぜ、蔑まられなればならないのか。
 俺たちが魔獣を連れて来た訳じゃない。

 土地を取られたとも言われた。
 国が指定してところに来ただけだ。俺たちに選択肢はなかった。
 危険な森への護衛役はよくやっていた。それが当たり前だと思っていたが、この旅をしてる内に俺の中で何かが変わってた。
 
 勇者の出身の村となれば、ちょっとは扱いは変わってるだろうか。失敗したら…。
 
 俺は凱旋したら、壁をいの一番に壊して、元の場所に村を広げるんだ。王様にそう願い出ようと思っていた。元の土地に戻るだけだ。開墾の苦労もあるかもしれないが…。
 
 俺たちはそれでいいかもしれないけど…。ここの人たちは…?

 この土地は、どの国にも属していない。干渉地も含めて、瘴気がなくなり、魔王がいたとしても、彼には何の権限もない。それに、魔王は討伐する事になってた。だから、ここは、ここ一帯は…

 クンティンと魔王に呼ばれて、近くに行くが、頭の中は暗い考えでいっぱいだった。
 周りの華やいだ空気の中で、俺は、異質な存在で居心地が悪い。

 ざわざわと心の中が騒ぐ。気持ち悪いザラザラとした訳の分からない騒めきがいっぱいに荒れ狂い溢れそうだッ。






===============


ちと重いですな( ̄▽ ̄;)スンマソンです。

ここは書いてて筆が進み悪かったσ(^_^;)
解決策へ向かって行きますよ(^-^)/

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