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本編
8】会談(中)
しおりを挟む「当初、聖女を召喚する予定だったのだ。それまで瘴気を留めて、待つようにと…。聖女じゃなくて俺を殺しに勇者たちが来るって事になった」
「贄に求めた少女たちはどうしたんだ? どうなったと訊いた方がいいだろうか」
俺は、執事服の男が人質では無いと分かった今、贄に求められた少女たちは一体どうなったのかと思い始めた。疑問は潰しておいた方がいい。
討伐の理由のひとつにそれもあった。
「ああ、その件ね。魔王だなんだって言われて、こちらも調べたよ。身に覚えがないものでね。こっちはバタバタだったんだよ。この人、倒れちゃったんだから…」
魔王が執事服の男がを指差しながら、メイド服の人に指示を出してる。ワゴンで書類の山が運ばれて来た。紙が積み上がっている。
「聞き取り調査したのがコレでね。外から来た人の噂話や実話とかが集まる場所があってね。再度聞き取りに向かったりして集めて貰ったよ。
贄はこちらでは求めてないので、存在しない。
それらしい件に関わった人の話では、贄にされたとされる少女は、誘拐されたり、貴族たちの妾なされたり、監禁されたり、囲われてるみたいだね。どっかに売られたのもあったみたいだよ。
なんだか全部魔王の所為にされてるみたいだけど…」
紙山の上から何枚か取りながら、魔王が説明してくれた。
執事服の男が、纏められた用紙を俺たちに配ってくれる。
「情報源は?」
「んー、その誘拐とかに関わってしまったり、知っちゃった人とか。逃げてここに死ぬ気で入ったら、生きてて、魔人になったとかで。まぁ、ここでエンジョイしてるらしい。そうだね、フィン?」
「はい、魔王さまの言う通りですよ。娼館のみんなで記憶を頼りにお話の聞き直しをして来ました。その中の半分ぐらいは私が書いたかな?」
「「「娼館?」」」
「えへッ。私、淫魔になっちゃいましたぁ~」
さっきまで、姿は色っぽいだけの口調のしっかりした侍女さんだったのに、急に、ペロと舌を出して、胸やお尻を強調するようなポージングで態度が崩れた。それが素ですか…。
「あー、隠してもなんなのだが、どうも、俺が瘴気を引き寄せて、浄化させてるみたいなんだよね。気持ちが昂揚して、弾ける感じになると浄化も促進される訳でさ…」
ちょいと恥ずかしそうに魔王がモジモジして言ってる。
「だから、アレだったの?!」
アリスンが真っ赤になって魔王を指差してる。淫魔と魔王の間をゆらゆら指が揺れてる。
「あ、あなた達…? え? あれは男よ? え? 女?」
錯乱したか?
なんだかアワアワしてる。兎に角、顔は真っ赤だ。
「娼館作っちゃった。元娼婦で侍女で、今は淫魔のフィンで~す」
「彼女達と交わってる間に『穢れ』を体内に入れてしまってな…。フィン、すまなかったな」
「それはもういいって言ってるでしょ? 恨んでないわよ。自業自得だもの。私たち納得してるぅ~」
魔王とエロいお姉さんがイチャイチャしてる…。
「今『たち』って言った?!」
アリスンがまた叫んだ。
「そうよ。今ここでメイド服着てるのは、ほとんど淫魔ね。閣下と愉しんだ結果よぉ~。初めは避妊具してたんだけど、子供欲しくなっちゃって、避妊具に穴開けちゃった。で、こうなっちゃったの。えへッ」
テヘペロと舌出してるよ。軽い。言い方が軽いッ。
呆れて来た。脱力だよ。
高揚ね…。
あー、セックスって気持ちいいよね…。
俺もこそっと一度娼館に行った事あるから分かるよ。気持ち良かったよ、とっても…。
侍女さんたちがエロいって思ったの合ってたのね…。
「今じゃ、魔王さま、私たちより彼とお愉しみなんだよねぇ~。今のお気に入りだよぉ~」
彼女はひらりと空中を浮かぶように跳ねて、大柄の魔族、もとい、魔人の太い腕の掴まった。
「男娼やらしてもらってます」
えーと、怒涛の告白が続いております。
ああ~、脱力が半端ない。
マントの留め具を外した。襟元を緩める。武装してても仕方ない気になって来た。楽な格好になりたい。腰の剣も外し、そばに立てかけた。
グローブを外しながら、隣りを伺う。
サムエルが固まってる。えーと……、ガンバレ。。。
「聖女ちゃん来たら、相手してもらって、瘴気も一気に浄化だと思ってたのにさ」
「「「聖女?!」」」
男性陣が一斉にアリスンを見てしまった。
「え? 聖女ちゃんなの?」
魔王が嬉しそうだ。
「違いますッ!!! 準聖女ですッ。聖女さまを信仰してる信徒ですぅぅうううう!!!」
アリスンが力一杯否定してる。必死だ。一気に言い切って、ゼイゼィと荒く息をして、咳き込んだりしてる。
「そっか……。確かに、聖女にしたら、そんなに聖魔法ないもんね」
前のめりになってた魔王が思いっきり背もたれにもたれて、頭の後ろで手を組んだ。
ぼやくように言いながら、俺たちを見遣ってる。
「『聖魔法』が見えるんですか?」
俺は思わず訊いてしまった。水晶球でしか測れないのに。
言ってて、ある事実に気づいた。
『聖魔法』が魔王のお眼鏡に適ったら、ヤられるのか?!
「見えるよ。見えるようになったというか、感じるようになったって方が近いかも。君たちは十二分に多い。でも、聖女ちゃんにはなれない」
残念そうに言ってる。有ったらヤられてたって事か。危なかった。
「見てから決めるから定まらなかった? そもそも危機があるって警告だった?」
アリスンが隣りでブツブツ言ってる。ちょっと怖いんだけど…。
「その件ですが、王子殿下には、あ、陛下には伝えてはなかった事がございます」
執事服の男が内ポケットから紙を取り出した。
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