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本編

4】勇者御一行さま(後)

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 ここで、年々増えていく候補生と一緒に、読み書きと剣の稽古をつけられた。
 剣の稽古は性に合ってたのかな。上達も早く打ち込めた。このまま剣で身を立てて、家族に仕送りもいいかもとも思い始めていたが、礼儀作法とかは慣れない事ばかりで、心折れそうだった。村の為と諭され踏ん張った。ここに居る事は村に有益な何かをもたらしてくれてるらしい。

 ある日、白い騎士服を着せられ、王城に連れて来られて、手順だけ教えられた。どうやら僕は正式に『勇者』となったらしい。

 これから、魔獣を放ち人々を苦しめる魔王を討伐する為に旅立つのだとか。
 魔王は世界各国から少女を贄を求め、それだけでは満足せず、魔族や魔獣を人間界に送って、人間界を蹂躙しようとしてるらしい。

 悪の権化の魔王を倒せば、魔獣が襲って来る事はなくなり、魔獣も消えるのだとか。
 平和な世界になる。
 素晴らしい。

 僕の力が世の中の為になる。あの高い城壁はなくなって、森に自由に入れる。
 村は日当たりを気にする事もなくなって、もっと豊かに暮らせる。
 家族の、みんなの生活が良くなるんだ。

 僕は剣の稽古も魔法の訓練も、未来を思えば、勇者になった今、更に力を入れた。決意が固まる。

 その決意で握り締められた手が柔らかな手に包まれた。
 聖女さまは、愛らしくも美しかった。
 贄にされた少女たちも彼女のようだったのだろうか…。許せんッ。
 僕は、畏れ多くも恋をしてしまったと思う。この恋心を知られたらダメだが、お慕いするのは構わないだろうか…。

 彼女とパーティーを組むらしい。これからの旅程をご一緒できるという事だ。嬉しい。

 任命式後も生活はほぼ変わらなかったが、何故か華やかな集まりに白い騎士服を着せられ連れて行かれる。王様が偉そうだ。僕はじろじろ見られて、居た堪れない。剣の稽古の方が何倍も気が楽だ。

 他にもメンバーがいるらしい。任命式後にお会いした『夢見の乙女』のアリスンが探してくれると、宰相から説明された。

 見つかるまで訓練を続けて、揃ったところで各地で何も出来ずに手をこまねいてる魔獣を討伐しながら、魔王城へ向かう予定だ。何年もかかる道のりになる事は容易に想像出来るが、世界が平和になるなら頑張ろうと思う。

 僕の村のようなところはいっぱいあるはずだ。それを救えるなら、僕に、僕たちに救える力があるのなら、やりたい。仲間になってくれる者たちも同じ考えである事を願い、剣を振るう。少しでも強くなって、討伐を成功したい。




 夢見で視た小柄な男と大柄な男を見つけた。漸くよ…。

 夢の中で視えた仲間を探すのは、難しいと思ったけど、今の私には協力してくれる国がある。
 国の情報網は凄いわね。凄いとはと思うんですけど…ね。

 細かく特徴を伝えたのに、候補って何?って感じ。
 で、転移魔法で各国に連れ回されたのは辟易しましたわよ。
 だって、ものすご~く酔うんです。

 グニャって空間が歪むんですよ。三半規管だって、変な浮遊感でおかしくなって、気持ち悪いったらありゃしないッ。船酔いの比じゃないわよ。

 準聖女の私だから耐えれるって思われたのでしょうけど、もっと回数は少なくして欲しいわよ。
 なんで、私が「この方角のこの国が怪しい」って言ってるの無視してそっちなの? 夢見の像は鮮明になってるのよ。声は聞こえないけど、街並みも看板の文字も書いたわよね?

 なのに、違うところなのかぁあ~?
 はっ! 転移魔法を見せびらかしたいだけかぁあ?!

 うぐぐぅぅ…ッ! 胸ぐら掴みたくなったぞ。

 いくら心優しき『聖女さま』を信仰してる聖教会の準聖女でも、堪忍袋の緒が切れるっちゅーのよッ!

 ふざけんじゃねぇぞぉぉおおお!!

 転移魔法だって、高位魔法使いさんが大勢で頑張らないとダメって聞きましたがぁあ?!

 取り敢えず、『夢見の乙女』のいう称号をフル活用よ。後ろ盾の聖教会の名前も出す!
 聖教会が信じれませんか?!って言っちゃったよ。
 魔王討伐には『聖魔法』が不可欠なんでしょ?
 脅しちゃる。魔法使いを権力で強制使役してんじゃねぇ! えーと、私はいいのよ…。一応我慢したんだから…ね。

 あのオッサン達は、勇者と準聖女がいたら大丈夫なんて思ってるのかぁあ?
 戦力が足りんわ。それにあと二人パーティーに存在するのよッ。早く連れてきて鍛えないと。

『夢見の乙女』が夢みがちな女って陰口叩かれ、舐められてるのは分かってたけど。もうやってらんないわよ!

 権威使わせて貰ったわ。魔王討伐の旅で命張るんだからこれぐらいの事を聞いてくれてもいいじゃないさ。ゼイゼェイ…うっぷ…。

 それに、『夢見の乙女』は予知夢などを見て、予言のような事ができるからそう言われてるだけなのよ。
 ネーミングが…とは思ったけど、上には逆らえないのよ…ね。
 能力はあっても、地位はないのよ、私には…。辛いわ。陰口叩かないでくれる? 泣いちゃうわよ。

 『夢見』に私も同行者に選ばれてるのよ。
 私の能力は、予知だけでなく、先読みの能力があるのよ。予知夢の延長線のような能力ね。
 それのおかげで、数秒前に起こる事が視えるの。補助魔法、支援魔法が効率的に打てる。詠唱時間の余裕があるのは、戦闘時において、この数秒は大きいのよ。

 でも、あと二人の仲間が必要。旅立ちには4人が視えるから。

 魔王はまだ黒い霧のような影のまま。長い道のりになりそうだわ…。





==================


また説明チックになってしまった( ̄▽ ̄;)

あとの二人の紹介と旅の事を書いて、2陣営が出会うまであと少しッ!

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