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本編
1】そもそも始まりってさ…。(前)
しおりを挟むぐわわっと湧いて来たいつものです…ね( ̄▽ ̄;)
いつもなら短編なんですが、ドドーンと連載といきますよ~。
中世風な剣と魔法のなんちゃって世界です。
ゆるふわ設定なんで、ふんわりでお願いします。
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仕事をしてもらわないと、そろそろ支障が出てくる。
夜討ち朝駆けと言うではないか。夜は色々と忙しい身の上であられるから、朝にやって来た。さっさとやってしまおう。
意を決して、分厚い扉そっとノックする。
そっとね。形だけね。ホントはノック無しに、こそっと開けたいんだよ。朝駆けだからさ。
だが、後で何を言われてもいいようにしておくのが賢明というものだろう。
どうせ返事はない。ほら、ない。フハハ、さっさと入ってしまおう。
起きてたらこの音でも気づくだろうが、どうせ眠ってるのであろう。勝ったッ。
ここは主の寝室である。
大きなベッドがでドデーンである。調度品も貴族としてはまぁまぁの揃え。急な誂えと辺境だから致し方ないのだが、経緯も経緯だからな…。
深く考えると気が重くなるから、余り考えないようにしていた。ご本人も納得しておられるのだから良いとしよう。
おや? 珍しく起きておられる。
ん? ひとりか…。
こちらに背中を向けて何かしておられるようだ。んー、もしかすると、座って二度寝?
「閣下、失礼します。今日こそはお仕事して貰いますよ」
起きてるようなのでひと声。寝てても、さっさと連れて行こう。前置きはした。実力行使ですな。
ん? 動かないな。寝てるな、よしッ。
起きてるのなら、ノック前に気配を察して逃げてそうなものだが、逃げずに…。起きて…集中して、何を熱心にしておられる?
寝込みを奇襲し、執務室に拉致ればこっちの勝利と思ったのだが、こんなに熱心にしておられるのなら…そっとしてあげて…。イヤイヤ、ここで曲げてはダメだッ。本当に今日は仕事してもらわないと!
「閣下?」
「あーーーーーー~ッ、飽きタァーーーーー~ッ!」
いきなり叫ばれて、びっくりしたぁあああ!
さっき閉じたばかりの扉にべったり背中貼り付けちゃったじゃんッ。何事?!
主は思いっきり後ろに大の字で倒れた。
手に何かの薄い本を持ってる。どこで手に入れたのか。草臥れた状態から前から持っていた物か。そんな事はどうでもいい。
だらしなくも下半身が丸出しである。
「……閣下?」
「あー、お前来てたのか。飽きた~。エロ本読んでシコるのも、もうヤダァ~」
横になったまま、反り返って逆さまでこっちを見た。前隠そうよぉ~。
「昨晩は…」
「淫魔の彼女? なんか約束があるからって、一発したら帰った。不貞寝したら、久々にぐっすりでさ。朝勃ちしたんで、エロ本でと思ったけど、流石に飽きたわ。想像力も尽きた感じ…」
起き上がって、本をそっと枕元に。元は王子だからきっちりしてるんだよね。
「左様で…。えーと、お役目中、申し訳ないのですが、決裁にサインまたは印が欲しいんですが」
「あー、分かった。執務室ね。仕事するわぁあ~」
下半身隠すどころか、脱ぎ散らかして全裸でクローゼットを漁ってる。前言撤回。
プリッとしたお尻が揺れてる。男の尻を見る趣味はないが、閣下の身体は均整の取れた筋肉の美しい芸術的な身体である。
「それから、これから、閣下の事は、陛下とお呼びいたします。私は、侍従長から宰相となりますので、その書類にもハンをいただきたく」
大人しく着替えてる主が、マヌケな顔で振り返った。
「ほへ? なんで? 父上は兎も角、兄上たちも亡くなったの?」
眉目秀麗な者たちが揃った一族の者とは思えぬ程のマヌケな顔だ。
プリケツ見てて、ぼんやり先の事まで、今言っちゃったよぉ~。
「まー、なんと申しますか…。執務室に向かいながら、説明いたします。よろしいでしょうか?」
「分かった」
鏡に向かって支度を再開する。
準備は多少お手伝いするが、基本ひとりでやられる。
上に二人の王子と姫さま、彼の下に妹君となれば、自分で粗方やってしまわれる環境だったのだろう。
確か、自分でした方が早いからと言っておられたか。
素直です。ちょっと感動してしまって、自分の失言に反省した。
いつもの駄々っ子のような感じはないが、私の失言に沈んでおられる。
整った顔ゆえにマヌケというより表情が抜けた落ちた感じか。この状況を押し付けられても陽気に振る舞ってる主しか知らない私は、初めて見る表情を見誤ったようだ。
私も頭で分てても真に理解していないのだろう。もう腹を括るのしては遅いかもだが、括らねば。
さて、親族の事だから当たり前であろうが、ご本人にどうお伝えしていいものやら…。私も理解してつもりだが…。
この世界は瘴気の汚染で一度滅びかけた。
瘴気は生き物が活動する上で発生する汚れのようなものである。
生き物が出す汚れは、自浄作用で浄化されるものだった。
人の作り出す汚れは、いつしか自浄許容範囲を超えた。
浄化出来ない汚れは『穢れ』となり、小規模な溜まり場を作り出し、人々は対策に頭を寄せ合った。
というのも、穢れを体内に取り込むと魔物に変化するのが何例も目撃されていたのだ。
獣が魔獣と化して人々を襲う。
その症状や外見の変化は、取り込む量に寄るという事は凡例が増える事で判明したが、解決方法は処理する以外に出来ずにいた。処理とは殺す事である。
頭を寄せ合い話し合う内にも事態は深刻になっていたが、遅々と進まなかったが、ある少女の出現によって転機を迎える。
少女が愛犬を追って誤って穢れ溜まりに落ちてしまった。皆が死んだか魔物にでもなったかと、戦々恐々とそこを囲んで処理への準備をしてるところへ少女と愛犬が共に現れた。少女の母は泣き崩れていた。
人の形をした魔物かと、大人たちが、『処理』か『対話』で揉める中、少女は母に駆け寄り抱きつく。何事もなく迷子の親子の再会のような普通の光景。
そこは浄化されていた。
少女と犬は色々と調べられた。
身体的には、転んだのか打ち身などの軽傷。
少女の話に精神面を担当してた者が神学者を呼んだところで話がとんでもないところへ飛んだ。
魔法が表舞台に登場した瞬間だった。
『聖魔法』が祈りによって発現して穢れを浄化する。
そんな事を大真面目に言ってた神学者とある小国が注目される。
少女は祈った。見つけた愛犬は苦しそうだった。『助けたい』と思ったが、何も出来ない。自分も苦しい中『元気になって』と祈るしか出来なかった。それだけだったと、一生懸命願い祈ったと。
少女には僅かであるが『聖魔法』の力を持っていた。
『魔法』は、魔術や魔女が起こす怪しい存在として認識されていたが、超能力とも言われる分野でもあったが、力の大小は様々、種類も様々で、余り重要視されておらず、多少なら皆が持っており、存在は当たり前でもあったのだ。
発現するかどうかは、個々の環境と素質によるらしいかった。
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