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弟子対決

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「なんて、剣の速度、目で追いきれないっ!これが剣聖っ!」

 わずかな足音や風を切る音、匂い、息遣いから予測をしても避けるのがやっとで、攻めに転じるきっかけが掴めない。

「カリンよ。同じくパバリ王を師にもつ兄妹弟子か。
 なるほど、素晴らしい対応力だ。
 型も極意を掴んでいる。 
 このスピードに追いつける相手に出会ったのは久しぶりだ。
 それでは、もっと速度を上げよう」

 舞台の中央で対峙し、ラムーが剣を振るう。ビューッという音が響く。

 バシュッ

 素早く身をかわし、後方へと跳び退いてけど、脇腹を切られた!

 「くっ…その速さ…!」

 キュアで傷を回復する。傷は深くないけど、もうこの速度には対応できない。

「追いつくことはできないか。この勝負は終わりだ」

 ラムーの剣が疾風のようにあたしを襲う。

 このままではやられる。次の瞬間、キュンという音とともに迫る見えない剣を、なんとか側転して攻撃をかわす。そして、そのまま一旦後退する。

「まだ終わりじゃない!」

 距離を取りながら、周囲の舞台を駆け巡りながらラムーに対抗する。
 距離を取るしか方法がない。

「逃げ回るだけでは、勝機はないぞ」

 感覚と勘だけでラムーの見えない攻撃をかわし続ける。
 このままでは、必ず捕まる。
 勝負をかけるしかない。

「ラムー、ここまでだ!」

 ユピテルの一撃で決める。
 身体から赤い闘気を爆発させる。
 闘気の渦をいくつも発生させて、ラムーを舞台の端に追い込む。

 ラムーがエネルギーの爆風に飛ばされないように身を屈めた。

  「なっ…!なんだ、この出鱈目なエネルギー量は?!」

 赤い渦のエネルギーがラムーを舞台の端にジリジリと追い詰める。

 ラムーが逃げ場所を失い上にジャンプした。

「今だ!豪衝波!」

 ユピテルの一撃のエネルギーを突き出した右手から集中した放出する。
 エネルギーが小さな穴から飛び出すように一条の高速のビームになってラムーに向かう。
 しかし、ラムーが剣でその攻撃を防ぐ。

 キィンという金属音が響き、その衝撃でラムーの手の剣が砕け散った。
 ラムーが驚愕して、目を見開く。

「っ!剣を砕くなど!」


 豪衝波のビームが剣と一緒にラムーの両手を消失させた。
 豪衝波がバリアに穴を開けて、観客席に直撃。幸い怪我人はいなかったみたいだ。危なかった。
 パバリ王が冷や汗をかきながらバリアを修復した。

「かつて女神様が遺した魔石バリアに穴を開けるとは、恐ろしい破壊力じゃ。
 ラムーは手を失うだけで済んだのが奇跡じゃ」

 ラムーが剣と拳を失い、手をだらりと下にぶら下げた。
 剣を失った剣聖。使えるのは蹴り技のみ。
 あたしもほぼ全てのエネルギーを一撃に込めて使い果たした。

 お互い改めて間合いをとって、ジリジリと闘気をぶつけながら呼吸を読み合う。

 あたしは、ポムルス2つを一気にかじる。

 ラムーが舞台上には緊張感が漂い、戦いの行方が不透明なまま時が流れる。

 「さて、ここからが本番ね」

 ラムーがニヤリを笑う。

 「蹴り技の極意を味わうがいい」

 互いを見据え、緊張感が漂う中、戦いの続きが始まる。

 ラムーの超人的なスピードは健在。
 見えないスピードから縦横無尽に蹴りが飛んでくる。

 ビュビュッ

 鋭い蹴りが風を切る音が舞台の上に鳴り響く。
 あたしは、蹴りを避けながら拳を突き出す。
 ラムーが、あたしの連撃を全て避け切って、舞台の上で間合いを取る。

 あたしは、身体に刻まれた格闘の型と会話するように身体に流れるエネルギーを型に変えていく。
 ラムーがあたしに問いかける。

「どうして…型をそこまで極めた?」

 幼い頃、父との修行に挑んでいた時は、初めのうちはなかなか型を覚えることができなかった。
 何度も諦めそうになった。

 そんな時父が言った。

 「もう一度、型をやってみろ。」

 幼いあたしは、必死で身体を動かすけど、なかなかうまくいかない。型があたしを嫌っているようで、涙がこぼれ落ちた。
 父が慰めるようにあたしを励ました。

「焦るな。型は、覚えるものではない。
 身体が型を求め、型がお前を求めるのだ」

「全然わからないよぉ!」

 何も分からないままで、あたしは、修行に取り組見続けた。いつか、分かる日が来ることを願って。
 父はいつも言っていた。

「強くなりたければ、挫折を乗り越えなければならない。」

 父の言葉が今もあたしの心に深く響いている。

 あたしは、ラムーをまっすぐ見つめた。
 
 「この型は、父から受け継いだ想いそのもの。型を極めたんじゃない。身体が型を求めるの」

 審判のパバリ王が感慨深く頷く。

「基本の型に命が宿っておる。まさかここまで型を自分のものに。
 まるで型が光り輝いているようじゃ。型がカリンを求めている。美しい。。。」

 ラムーの顔から余裕が消えている。

「くっ…この力…スピード!加速している!」

 だんだんラムーのスピードに慣れてきた。

「もう、終わりよ!」

 あたしの正拳突きがラムーを捉えようとする。

 父から教わって、最初に覚えたのがこの正拳突きだった。どんな奥義よりもあたしの最高の技。
 そうか。父さんは、最初に一番大切なものを授けてくれていた。
 この一撃は、父さんから教わった。
 ありがとう。父さん。
 あたし、やっとできたよ。

 あたしは、正拳突きをラムーの額直撃スレスレでピタリと止めた。
 ラムーが閉じていた目を、ゆっくりと開く。

「負けた…私の負けだ…」

 すべてを出し切った。
 赤い巨人の力だけじゃない。これまで積み上げてきた全ての力があたしを支えている。

 ゴォォオン
 ゴォォオン
 ゴォォオォン

 試合終了のドラが鳴り響く。
 あたしは、勝ったんだ。

 地鳴りのような大きな歓声が爆発した。

「カリン!カリン!カリン!」

 素晴らしい戦いだった。
 戦いの中で、あたしは、まだまだ強くなれる。
 そのことにワクワクする。
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