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パバリ王への依頼

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「ふふふ」

 朝、あたしが冒険者ギルドの隣に建てたロム万能薬マツモト店の店先を掃除しながら、左手につけた白銀の指輪を眺める。
 その指輪は、朝日を浴びてキラキラと輝いていた。
 ピッケルの元いた世界では婚約の証に贈るものだそうだ。
 昨日は、素敵な夜だった。
 ロム家と両親、それにゾゾ長老からもお祝いの手紙をもらった。
 
 ピーちゃんもお忍びでロム万能薬に来てくれて、ショータとクリムトとで、ささやかだけど、賑やかなお祝いの夜だった。
 
 クリムトとは、今やビジネスパートナーだ。
 ロム万能薬マツモト店の2階がコッペリームの工房になっている。
 ちなみに5階が自宅だ。
 コッペリームがマツモトだけじゃなく、アレイオス、リノスでも大人気になった。ポシェタを使えばいくら作っても出来たてを保存できるのがよかった。
 ドワラゴンがアレイオスに作ったパン工場に発注して、コッペリームのパンも作ってもらっている。
 何度も試作をして、ドワラゴンを困らせてしまったけど。
 理想のふわふわ感、しっとり感、甘さ、後味、風味を追求したパン。
 ムリムリームは、クリムトが監修して菓子職人5人がかりで毎日作る。
 あたしが作ったコッペリームの工房は、常にフル回転。
 1日3000個売れる大人気商品だ。これから他の都市にもロム万能薬の支店ができたら更に売れるに違いない。

「ふっふっふ」

 あたしにこんな商才があったかと、酔いしれたくもなるけど、実は、かなりエタンの知恵を借りていた。
 エタンがあたしの義父になったわけだけど、それ以前から、頼りになる相談役だ。
 エタンが言うには、メキシコに出店できれば1日1万個売れるという。
 今から楽しみだ。

 炎犬達とも仲良く過ごしている。
 母親の炎犬をピバウ、子供の炎犬をピブル、ピキャンと名付けた。

 たまに散歩で山の方に行って、山火事にならないように火を好きなだけ吐かせている。
 だんだん火力が岩を溶かせるようになってきた。
 恐ろしいけど、可愛いワンちゃん達だ。
 運動も兼ねて、3頭が飛んだり跳ねたりクルクル回ったり、空中て炎を吐いたりのダンスを練習している。
 練習し始めた頃は、あたしが炎の熱で火傷が絶えなかった。続けているうちに、あたし自身が炎に強くなって、あまり火傷しにくくなってきた。巨人の肌は、炎に強いのだ。
 いつか大観衆の前で披露したい。

 ピーちゃんにも、ピーちゃんと面と向かって呼べる仲になった。
 実は、ピーちゃんって三万年生きているパバリ王より長生きらしい。
 この宇宙が創生される前の宇宙から来た猫だとか言っていたけど、意味が分からない。

 そうそう。やっと魔拳士になった。最近水晶玉で見たステータスを見て、小躍りしてしまった。

「種族」
・巨人

「魔法」
・魔力 B
・スピード C
・属性 草木C、水E、土C、時空F

「武術」
・格闘C

「基礎ステータス」
・パワー A
・知力 B
・素早さ B
・体力 B
・幸運 E

「職業」
・魔拳士
・冒険者 B

「前科・勲章」
赤い目の巨人

「スキル」
荷物持ち 炎犬使い

 まぁ、種族が亜人から巨人になったのには、驚いたけど。
 亜人ですらなくなってしまった。。。心境の変化で種族が変わるってどういうこと?

 ピッケルが土の魔法で鉄を作れるようになったのが羨ましくて特訓して習得した。
 そうしたら土の魔法がEからCになった。
 ついでに魔法のスピードがDからCになったのが嬉しい。

 炎犬を飼っているから炎犬使いのスキルを登録した。
 魔獣を飼い慣らす事例は、ほとんど例をみない。創世のパバリ王が飛竜を飼い慣らしているというのも伝説になっているくらいだ。
 
 スキルに伝言と転送はつけなかった。あくまでこれは、ピッケルのスキルを借りているだけだから。

 C級からB級冒険者に昇格して、ピッケルとお揃いになった。

「よお、久しぶりじゃな」

「パバリ王!?旅から帰ってきたの?」

「はは!ただいま。朝から掃除とはいい心がけじゃ」

「朝から掃除するといいことがあるってピッケルが言ってたから。
 そうだ!冒険者ギルドのギルドマスターショータがパバリ王に会いたいって。
 開店まで少し時間があるから、ちょっと待ってて!」

「ガッハッハ!相変わらず元気じゃのう!わしも冒険者ギルド行こう」

「すぐ隣なの。ショータ!ショータ!大変よ!」

 あたしとパバリ王が冒険者ギルドの中に入ると、ギルドの奥を掃除していたショータが不思議そうな顔をして出てきた。

「おはよう、カリン。朝から大騒ぎでどうしたの?
 あれ?そのお方は?」

「ショータ!あなたが会いたがっていた、創世のパバリ王よ!」

「ええーー!!!あの!パ、パパ、パバリ王!
 初めまして!僕ショータ!マツモトで冒険者ギルドのギルドマスターを。。。」

「かしこまらんでいい。ショータ、はじめまして。
 そうじゃ、カリン。依頼されていたミニゴーレムの宅配、してきたぞ。
 ジューケイ、チェンマイ、そしてメキシコに。
 ミラノとアメダバド、カイロには、ミニゴーレムがすでに届いていたな」

「ありがとう!これで全ての都市にミニゴーレムが!リノスでピッケルに会った?」

「ガッハッハ!リノスのロム万能薬は、長蛇の列で大繁盛しておったわ!
 ピッケルも忙しそうで、手際よく頑張っておったよ。
 ポムルスのパンを買ったが、特別な挨拶は、しなかった。
 あの眼の輝き、素晴らしい少年じゃった。
 メキシコの商業ギルドマスターに、ロム万能薬のピッケルが将来有望だと伝えておいたわい」

「あ、ありがとう。世界一周してきたのね。飛竜に乗って?」

「飛竜は、野生に帰したよ。わしは自分で飛ぶこともできるからな」

 自分でも飛べるのか。なんでもありなのね、このお爺さん。
 そういえば、パバリ王のステータスを水晶玉で見たらどうなるんだろう?
 
「そうだ、パバリ王、せっかくだから冒険者登録していってよ」

 ショータが戸惑いながら、目を輝かせる。

「えええ?!パバリ王に?そんな。。。」

「わしは構わんが、前に一度メキシコの冒険者ギルドで試したら、水晶玉が爆発してしまったんじゃ。
 まぁ、いいか、試してみるか」

 ショータがさっと水晶玉の前にパバリ王を案内した。

「ど、どうぞ!
 責任は、僕が取ります!」

 爆発?!いや、やっぱり、やめた方がいいんじゃ。。。
 止める前にもうパバリ王が水晶玉に手を置いていた。
 キラキラと水晶玉が光る。

 爆発はしないような雰囲気だけど。。。

「種族」
・エラー

「魔法」
・魔力 測定不能
・スピード 測定不能
・属性 測定不能

「武術」
測定不能

「基礎ステータス」
・測定不能

「職業」
・エラー

「前科・勲章」
不老

「スキル」
未登録

 ダメだこりゃ。何にも分からない。水晶玉にピキィっと亀裂が入った。

 素早いパバリ王が水晶玉から手を離す。
 水晶玉から白い煙がプスプスと上がった。
 危なかったんじゃないのか?!

「やっぱり壊してしまったのぅ。
 すまん」

 ショータがホッしながら水晶玉を確かめる。

「だ、大丈夫。。。爆発しなくて良かった。。。」

「やっぱり冒険者は向かないようじゃ。
 魔法もな、わしのは今では古代魔法じゃからな」

「古代魔法?!今でも使える人がいるの?」

「この1万年は、土、水、草木、氷、風、闇、光、火、雷、魂、時空、調和の12属性じゃろ?
 今の女神になってから再構成されて今の12元素になったんじゃ」

 さすが3万年生きているだけある。話の単位が万年ごとだ。

「2万年前は、生物、エネルギー、物理の3種類の魔法じゃった。
 これが今で言う古代魔法じゃ。
 例えば、生物は、身体強化、生命の治癒と死滅、巨大化と縮小化の3つに枝分かれしておった。
 わしは元々物理の重力の力が得意じゃった。
 カリンは、古代なら身体強化の素質があるかもしれんな。
 今や重力を扱えるのは、この世界でわしくらいじゃ。
 ほれ、こんな感じ」

 そう言うとパバリ王はふわふわと浮いて、ついでに水晶玉もぷかぷかと宙に浮き始めた。

「え?う、浮いてる?」

 ピラミッドが浮いていたのも、重力の魔法が関係しているのかもしれない。

「自分や自分が触ったものを軽くしてプカプカ浮かせたり、逆にずっしり重たくすることもできる。
 重力の方向を変えることもできるんじゃ。
 組み合わせると、こんな感じ」

 目にも止まらないスピードであたしの前や横や上にまで瞬間移動する。

「攻撃の時は、逆に重たくすれば、攻撃力を何百倍にもすることができる」

 規格外すぎる。

「ところで、調和のドラゴンが死んだのは、本当のようじゃな。
 先先代の神は、調和と創造の神の二神じゃった。
 今の12属性のうち調和以外は、創造の神の力を分けたもの。
 調和は宇宙ができた時からある偉大な神じゃ。
 それが今、失われてしまった。
 これはパナードという星一つの問題じゃない。宇宙そのものが変わろうとしている」

 調和のラカンって先先代の神ってこと?確かに最初にそんなようなことを言っていたような。

 ふっふっふ。
 こちらの陣営に引き込まなければ。ちょうど都合よくラカンはピッケルに気があるみたいだったし。
 さっさと見つけてピッケルの4人目の婚約者にしなければ。

「ん?カリン、何を笑っておる?何か企んでおるのか?」

「い、いや。全然!
 あ、そうだ。良かったら、開店までまだ時間もあるし、拳闘の稽古をつけてもらいたいの!
 まだまだ強くなりたいから!」

「ガッハッハ!いいじゃろう。
 確かにカリンも少し強くなったようじゃな。
 いいじゃろう。どこか広い所はあるかな?」

 あたしとパバリ王は、町外れの草原に向かった。
 実は、父からパバリ王が巨人神拳の元祖スピカの師匠だと知らされていた。
 父は、創世のパバリ王から直接教われるなんて、羨ましいと言っていた。
 
 次に会ったら、絶対また稽古をつけてもらおうと、決めていた。
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