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カリンと草木の魔法
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「あははは!!!パンチ強すぎ!カリン、絶対こっちでしょ!」
え。。。やってしまったか。
お腹を抱えて笑い転げるピオーネ。
微笑むナツメ。
パパリ王が来るまでの間、あたしは、ナツメ、ソルダム、ピオーネと楽しい時間を過ごしていた。もう3日になる。こんなにのんびりしていていいんだろうか。
朝食後の余興に岩を割ってみて、とナツメに言われて、久しぶりに岩割りを披露してみた。
小さい時からお父さんに教わってよくやったな。懐かしい。
それにしても、昨日の筆談は、すごかった。キーラとラカンとガンダルとヤードルもパナードのどこかに散り散りに転移させられていたなんて。
それにあの猿、水と時空の精霊ゴリムートだったのね。
確かにとんでもない魔力だった。
ソルダムが信じられないものを見た顔で砕け散った岩の破片を拾い上げる。
「素手の拳で岩を割れる人類がいるの?エルフにもゴブリンにもこんな力ないわ。。。
こんなことができるとしたら、サイクロプスや巨人の類。巨人の血、カリンにしっかり流れているのね」
やりすぎてしまった。笑ってくれているのが救いだけど。
パワーをかなり抑えたつもりだったのに。精霊の前だったらこれくらいならいいかと思って油断した。
まずい。
幼い頃、割った岩を見た近所の人が恐怖に怯えた目で「魔獣の仕業だ!魔獣が出た!」と騒ぐのを見て、全力を出すのが嫌になったことを思い出す。
そうか。それであたしは、魔法使いになろうと思ったんだったな。
「そ、そう?人前では見せないようにしていたんだけど。
それより、草木の魔法について教わりたいの!」
草木の精霊から魔法を教えてもらえる機会なんて奇跡のようなものだ。
ナツメが優しく微笑む。
「カリンは、魔法使いとして成長していきたいのね。
草木の魔法でカリンにできそうなもの。そうね。
でも、ほとんどないのよね」
ソルダムが遠い目をして言う。
「つくづく人類って、素材を使ってなんとか魔法を出している感じよね。
自然から直接魔力を得る体内の器官が小さいのよ。
でも、魔法の力は弱いけど使える人の割合が多い。
エルフや猫耳族で魔法が使える人は、本当に珍しいから」
ピオーネが思案する。
「そうね。でも、草木の精霊として、ウイプナやポムルスくらいしか使えないのは、残念過ぎる。
だって、本当の草木の力を使えてないんだもの。
見ていて、焦ったいというか、悲しくさえあるわ。
少なともヴィラナが使えたら生きている草木を作り出せるのに」
ナツメが頷く。
「そうよね。
生きている草木の魔法を使えるようになって欲しいわよね。
ポムルスも酸っぱくて種無しだし。他のフルーツも色々出せるのに」
ソルダムがあたしの身体を調べるように見る。
「カリンが巨人の力を物理的な力だけじゃなくて、魔法にも使えるようにできたらきいんだけどな」
なるほど。
ナツメがあたしの目をまっすぐに見つめる。
「そうね。カリンの怪力や身体能力はね、実は無自覚に魔力を使っているはずなのよ。
今はそれを物理にしか使えていないけど、魔法にも使えるようにできたらいいわね。
それにはまず巨人の力を覚醒させる必要がありそうね。もしカリンがそうしたいならだけど」
「ええ?巨人の力を覚醒って、身体が巨人になるの?!まさか一つ目とか?け、毛むくじゃらになったり?
ど、どう言う感じなのかな?あたし、怖くて」
ピオーネが笑う。
「あははは!違う違う。身体は今のままと変わらないわ。
そもそも巨人は、身体の大きさを自由に変えられるし。
身体能力がさらに向上したり、魔力の使い方が変わるわ。
寿命も大幅に伸びるわね。
覚悟が必要なのは、普通の人類と同じ力の尺度ではなくなるってこと。
人類と暮らす時にカリンが身体能力を隠していたのは、危険だと思われないためよね?」
「たしかに。あたし、人から避けられるのが怖くて」
そうだ。でも、いつまでもそんな自分じゃ嫌だ。
ナツメが優しく笑う。
「でも、純粋に力を解放して本当の自分を知りたい気持ちもある。そうじゃない?」
「たしかに。でも。。。」
あたしは本当はどうなりたいんだろう。
ナツメが両手で、ぎゅっとあたしの手を包む。
「急がなくていいわ。カリンがその気になった時には、力になるわ。
そうだ、試しに巨人のことは巨人に話をきいてみたら?サイクロプスに!」
ええ?サイクロプスって、あの巨人!?話せるのかな。
ソルダムが空を指差す。
「みて!パバリ王がやっときたわ!」
げ!飛竜?!
確かに人が乗っている。あれがパバリ王?
「ガハハハ!待たせたな!」
空から笑い声が降ってくる。
赤い飛竜が旋回しながら降りてくる。飛竜って人に懐くのか。すごい。
何万年も生きてる聞いているけど、60歳くらいにしか見えない小太りなおじさんが飛竜から降りてきた。旅装の素材は、魔獣の皮みたいだ。
「初めまして、お嬢ちゃん。あなたがカリンだね」
王と呼ばれるに相応しい威厳やオーラを感じる。何よりこの人、強い。動きを見れば分かる。隙もなければ、無駄もない。
「は、はい!カリンです。よろしくお願いします」
ガシッと力強く握手する。なんて安定した体幹。ぴくりとも重心がぶれない。足から根が生えているみたいだ。
「ふむふむ。さすが巨人の血を引くものよ」
それからギラリと目が光る。
「しかし、力を無理矢理抑えつけておる。これでは辛いじゃろう。
なるほどな。エイゴンがわしを呼んだ理由が分かってきたわい。
世界一周の旅に出る前に、呼ばれて飛び出て来た甲斐があったな」
「この飛竜、人に懐くなんて、すごい!」
「ガハハハ!わしが赤ちゃんから育てたからな!この子の親の飛竜を殺した魔獣を倒したら、懐いてきたんじゃ!」
これがパバリ王。。。すごい。。。すご過ぎる!
え。。。やってしまったか。
お腹を抱えて笑い転げるピオーネ。
微笑むナツメ。
パパリ王が来るまでの間、あたしは、ナツメ、ソルダム、ピオーネと楽しい時間を過ごしていた。もう3日になる。こんなにのんびりしていていいんだろうか。
朝食後の余興に岩を割ってみて、とナツメに言われて、久しぶりに岩割りを披露してみた。
小さい時からお父さんに教わってよくやったな。懐かしい。
それにしても、昨日の筆談は、すごかった。キーラとラカンとガンダルとヤードルもパナードのどこかに散り散りに転移させられていたなんて。
それにあの猿、水と時空の精霊ゴリムートだったのね。
確かにとんでもない魔力だった。
ソルダムが信じられないものを見た顔で砕け散った岩の破片を拾い上げる。
「素手の拳で岩を割れる人類がいるの?エルフにもゴブリンにもこんな力ないわ。。。
こんなことができるとしたら、サイクロプスや巨人の類。巨人の血、カリンにしっかり流れているのね」
やりすぎてしまった。笑ってくれているのが救いだけど。
パワーをかなり抑えたつもりだったのに。精霊の前だったらこれくらいならいいかと思って油断した。
まずい。
幼い頃、割った岩を見た近所の人が恐怖に怯えた目で「魔獣の仕業だ!魔獣が出た!」と騒ぐのを見て、全力を出すのが嫌になったことを思い出す。
そうか。それであたしは、魔法使いになろうと思ったんだったな。
「そ、そう?人前では見せないようにしていたんだけど。
それより、草木の魔法について教わりたいの!」
草木の精霊から魔法を教えてもらえる機会なんて奇跡のようなものだ。
ナツメが優しく微笑む。
「カリンは、魔法使いとして成長していきたいのね。
草木の魔法でカリンにできそうなもの。そうね。
でも、ほとんどないのよね」
ソルダムが遠い目をして言う。
「つくづく人類って、素材を使ってなんとか魔法を出している感じよね。
自然から直接魔力を得る体内の器官が小さいのよ。
でも、魔法の力は弱いけど使える人の割合が多い。
エルフや猫耳族で魔法が使える人は、本当に珍しいから」
ピオーネが思案する。
「そうね。でも、草木の精霊として、ウイプナやポムルスくらいしか使えないのは、残念過ぎる。
だって、本当の草木の力を使えてないんだもの。
見ていて、焦ったいというか、悲しくさえあるわ。
少なともヴィラナが使えたら生きている草木を作り出せるのに」
ナツメが頷く。
「そうよね。
生きている草木の魔法を使えるようになって欲しいわよね。
ポムルスも酸っぱくて種無しだし。他のフルーツも色々出せるのに」
ソルダムがあたしの身体を調べるように見る。
「カリンが巨人の力を物理的な力だけじゃなくて、魔法にも使えるようにできたらきいんだけどな」
なるほど。
ナツメがあたしの目をまっすぐに見つめる。
「そうね。カリンの怪力や身体能力はね、実は無自覚に魔力を使っているはずなのよ。
今はそれを物理にしか使えていないけど、魔法にも使えるようにできたらいいわね。
それにはまず巨人の力を覚醒させる必要がありそうね。もしカリンがそうしたいならだけど」
「ええ?巨人の力を覚醒って、身体が巨人になるの?!まさか一つ目とか?け、毛むくじゃらになったり?
ど、どう言う感じなのかな?あたし、怖くて」
ピオーネが笑う。
「あははは!違う違う。身体は今のままと変わらないわ。
そもそも巨人は、身体の大きさを自由に変えられるし。
身体能力がさらに向上したり、魔力の使い方が変わるわ。
寿命も大幅に伸びるわね。
覚悟が必要なのは、普通の人類と同じ力の尺度ではなくなるってこと。
人類と暮らす時にカリンが身体能力を隠していたのは、危険だと思われないためよね?」
「たしかに。あたし、人から避けられるのが怖くて」
そうだ。でも、いつまでもそんな自分じゃ嫌だ。
ナツメが優しく笑う。
「でも、純粋に力を解放して本当の自分を知りたい気持ちもある。そうじゃない?」
「たしかに。でも。。。」
あたしは本当はどうなりたいんだろう。
ナツメが両手で、ぎゅっとあたしの手を包む。
「急がなくていいわ。カリンがその気になった時には、力になるわ。
そうだ、試しに巨人のことは巨人に話をきいてみたら?サイクロプスに!」
ええ?サイクロプスって、あの巨人!?話せるのかな。
ソルダムが空を指差す。
「みて!パバリ王がやっときたわ!」
げ!飛竜?!
確かに人が乗っている。あれがパバリ王?
「ガハハハ!待たせたな!」
空から笑い声が降ってくる。
赤い飛竜が旋回しながら降りてくる。飛竜って人に懐くのか。すごい。
何万年も生きてる聞いているけど、60歳くらいにしか見えない小太りなおじさんが飛竜から降りてきた。旅装の素材は、魔獣の皮みたいだ。
「初めまして、お嬢ちゃん。あなたがカリンだね」
王と呼ばれるに相応しい威厳やオーラを感じる。何よりこの人、強い。動きを見れば分かる。隙もなければ、無駄もない。
「は、はい!カリンです。よろしくお願いします」
ガシッと力強く握手する。なんて安定した体幹。ぴくりとも重心がぶれない。足から根が生えているみたいだ。
「ふむふむ。さすが巨人の血を引くものよ」
それからギラリと目が光る。
「しかし、力を無理矢理抑えつけておる。これでは辛いじゃろう。
なるほどな。エイゴンがわしを呼んだ理由が分かってきたわい。
世界一周の旅に出る前に、呼ばれて飛び出て来た甲斐があったな」
「この飛竜、人に懐くなんて、すごい!」
「ガハハハ!わしが赤ちゃんから育てたからな!この子の親の飛竜を殺した魔獣を倒したら、懐いてきたんじゃ!」
これがパバリ王。。。すごい。。。すご過ぎる!
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