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古代の博物館

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 ゾロゾロとみんなで古代の博物館に移動する。壁につけたファイポの焦げ跡を辿って、思ったより早く博物館に着いた。
 さっき歩いてきたところを、こんなにすぐ引き返すことになるなんて。

 ファイポで照らし出された博物館の入り口は、巨大な石の柱が立ち並び、神殿のような雰囲気で壮観だ。
 博物館に入ると、中が真っ暗だ。
 ゾゾ長老が床の模様をファイポで照らしながら読んでいる。


「なるほど。この模様は魔法陣じゃ。
 ほとんどのやつは読めないが、これは読めるな。んー、ちょと待っておれ。カリファ、手伝え」


 ゾゾ長老とカリファが床や壁の模様を確かめながら何かを探している。あれじゃない、これじゃないとブツブツ言いながら、もう30分くらい探している。


「おお!これじゃこれじゃ!この魔法陣にファイポを近づけると、博物館の照明が全部灯されるようじゃ。
 いくぞ。それ!」


 ボボボボボッ!!!


 おお!すごい!


 広間に入った時と一緒だ。あの時、たまたま照明に灯りをつける魔法陣にファイポが当たったのかもしれない。
 館内に灯りが満たされる。


 なんだこれは?!


 大小様々な石の台の上に、見たことがない不思議なものばかりが置かれている。
 巨人の骨格、見たことがない魔獣の標本、怪しく光る水晶、意味がわからない機械や、大小の歯車のカラクリ。不思議な絵が壁一面に描かれている。
 奥には、一万個の石板が整然と並ぶガラスケースの棚がある。

その中心に、人の形をした一体のゴーレムが台座に座っている。おそらくこれが,司書のゴーレムだろう。
 ゴーレムというより人型ロボットみたいだ。手の指も5本ある。
 でも、動かない。
 ゴーレムの台座にも魔法陣や読めない字が書いてある。
 ゾゾ長老がじいっと見て、解読しようとしている。

「確かに司書のゴーレムの背中に穴があるな。ピッケル、炎犬の骨を入れてみろ」

「う、うん」

 コツンと骨を入れると、司書のゴーレムの目が赤く光る。
 でも、うんともすんとも動かない。


「ダメじゃ。分からんぞ。司書のゴーレムを動かす何かが近くにあるのかもれしれん」


 カリンが何かを見つけたみたいだ。


「こ、これかしら?真っ平の黒い大きな板が壁にかかってるの。穴があるわ。ガンダル、炎犬の骨を入れてみて」


「お、おう」


 炎犬の骨を穴に入れると、黒い長方形の板がブーンとぼんやりと光る。
 ゾゾ長老が臆せずに黒い板に触れる。指が触れた部分が白くなる。


「なんじゃこれは?!ここに何かを書くのか?おい、ガンダル、そっちの壁にも黒い板がかかってるな。どこかに炎犬の骨を入れる場所がないか探すんじゃ!」


「あ、ありました!」


 また、黒い長方形の板が光って起動する。板の下の方に小さな長方形の穴が3つ開いている。
 カリファが穴を見て思いつく。


「石板をこの穴に入れるのかしら?棚から石板をもってくるってこと?」


「ピッケル!石板を取りに行きましょ!」


 棚に並ぶ石板を取ろうとしても、透明なガラスのケースの扉が開かない。ガラスを破るしかないのか?


「ダメじゃ!無理に石板に触れるな。
 それはゴーレムが運ぶことになっているようじゃ。だんだんわかってきたぞ。
 かなり時間がかかるかもしれないが、使いこなせるかもしれん。
 何か古代の情報、叡智がここには眠っておるようじゃ。
 わしの大好物じゃ!ヒッヒッヒ!」


 ゾゾ長老の眼がランランと輝いている。


「叡智といえば、ピッケル、お前に聞きたいことがあるんじゃった。お前は前世の記憶があるんじゃろ?
 一日で5万人分のパンを焼くにはどうしたら良いと思う?前世の記憶でなにか役立つものがないか?」


 前世の記憶といっても、僕は技術者でもなければ、パンセナのようにパンを焼いたことさえない。ド文系で、理化学や工学の素養もない。そもそも、この世界には、動力がない。蒸気機関についても説明できるほど知らないし。説明したところで、基礎をすっ飛ばして、いきなりできるほど簡単なものではないんだろう。


「いやぁ、なんとも。。。」


「なんじゃ、役に立たんのぅ」


 ゾゾ長老が露骨にガッカリする。
 あからさまに失望されると悲しくなる。
 なんとか記憶を掘り起こしてみる。そうだ、子供の頃社会科見学で行った、パン工場の話はどうだろう。
 ベルトコンベアーでパンが次々と焼かれていくイメージを、身振り手振りをつけて必死に説明するが、記憶が曖昧な上にプレゼンが下手すぎて伝わらない。


「むぅ。なんかよくわからんな。動く床の上にパンを乗せて走らせる?!床を動かすほうがパンを焼くより大変じゃわい」


 カリンが何かを思いつく。


「魂の魔法のゴーレムを使えば!?」


「ほう。話に出ていた魂の魔法か。それも気になっておったところじゃ。ちょうど良い、魂の魔法も見せてもらおうかな。どこか、広い場所があるかのう」


 博物館から出て、地下の広間に移動する。真ん中に3体のゴーレムがいるが、もう動かない。


「これが魔王コフィが妻スピカと眠る場所か。これについても調べる必要があるな。気になることばかりじゃ。
 それはそうと、ピッケル、魂の魔法をやってみろ」


 一度見ただけで、ぶっつけ本番とはなかなか厳しい。しかも、カリンが一番最初に教えろとか言ってたのに、あとで怒られないかな。一緒にこの場にいるし、いいか。
 カリンが急かす。


「ピッケル、早くやりなさいよ!」


 どうやらいいらしい。よし。
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