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056 メタルゴーレム討伐

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鉄鉱山の坑道に地響きが轟いた。
衝撃で硬質な壁面から金属音が鳴り響く。
崩落事故か?
いや、違う。
大挙したメタルゴーレムが次々に瓦礫となって崩壊したからだ。

準備の間にメタルゴーレムは相当な数に増えていた。
素となる鉄鉱石が豊富にあるからだろう。
先だって出現したメタルゴーレムは完全体となって戦闘力が大幅に上がっていた。
もはや亜種族達では太刀打ちできないほどに。

そのメタルゴーレムを屠るのは俺の家臣達だ。
エルフィネス国王の計らいでドワーフ製の武器と防具を贈られた彼等は獅子奮迅の活躍を見せている。
魔物の中でもトップクラスの防御力を誇るメタルゴーレムをスキルとアーツを駆使して討伐しているのだ。

エルフ族の青年達はスキル【以心伝心】とアーツ【群狼爪牙】を発動して一糸乱れぬ連携技を展開した。

以心伝心は互いの思考と肉体がシンクロできるスキルだ。
だからいちいちアイコンタクトや声掛けをする必要がない。
その瞬間で意思疎通が可能となり、俊敏な動きができるのだ。

そして群狼爪牙は的確に敵の急所を狙える武技だ。
しかも連携技による多重攻撃を可能とする。
まさに飢えた狼の群れが獲物を捕食するかのように。

「我の一撃受けてみよ!」

ハンゾウの強烈な一撃がメタルゴーレムを貫通した。
太い鉄芯のランスにバトルアックスが備わったハルバードを使って。
胸板を貫通したメタルゴーレムはガクガクと身震いして崩壊する。
アーツ【鬼通し】でメタルゴーレムを突き倒したのだ。

このまま行けばエルフ族の青年達とハンゾウだけでもメタルゴーレムを討伐できるだろう。
実力の底上げを行った成果がこれほど高いとは驚きだ。
やはりスキルとアーツの獲得が勝因として大きい。
それ無くしてメタルゴーレムの討伐は成し得なかったに違いない。

とりわけリオンの活躍は群を抜いている。
ぶっちゃけリオン一人でメタルゴーレムの討伐は完遂できると言って良い。

「いくぞ、イリュージョンダンス!」

アーツ【イリュージョンダンス】を発動させたリオンは10人に増殖した。
いわゆる分身の術だ。
しかも魅惑と幻惑の効果があるらしい。
メタルゴーレムの群れがリオンに誘き寄せられていく。

「これで終わりだ!」

リオンが鋭い斬撃を放った。
分身体が縦横無尽にメタルゴーレムに斬り掛かる。

硬質なメタルゴーレムの身体をリオンの剣はバターを斬るように切断した。
リオンのアーツ【草薙の剣】だ。
居合いのような速度と研ぎ澄ました精神力で硬質な物を切断する奥義である。
いわゆる兜割り、鉄断ちという技術だ。
それが武技に昇華されて超絶な剣技となっている。

「残るは五体か。皆退がってくれ。我が一気に決めよう」

ハンゾウの申し出にリオンとエルフ族の青年達は素直に従った。
後方に下がってハンゾウの戦いを見守っている。

「行くぞ、厳鉄砕!」

ハンゾウはアーツ【厳鉄砕】を発動した。
力こぶで膨張した両腕がブンブンとハルバードを振り回す。
遠心力を得て威力が増したハルバードを寄ってきたメタルゴーレムに振り下ろした。

「ぬぅうううん!」

ハンゾウの気合い一閃が炸裂した。
メタルゴーレムは豆腐が砕け散るように爆砕四散する。
硬質な身体が砂利のように破砕されて跡形もなく消え去った。
本当にメタルゴーレムが居たのか?
そう思うほど綺麗サッパリと。

「片付いたようだね」

坑道の奥からメタルゴーレムが出て来る気配はない。
討伐した数だけで30体はいただろう。
それだけでも異常な数に上る。
さすがに打ち止めじゃないとシャレにならない。

「念のため奥まで調べて参ります」

ハンゾウが申し出てきた。
すぐさまエルフ族の青年達も同行すると申し出る。

「う~ん、そうだなぁ……」

確かにメタルゴーレムが残ってたら面倒な事になる。
エルフィネス国王の両腕が完治するのはまだまだ先だ。
ここで中途半端に放置したら後々大変な事になるかもしれない。
鉄の採掘は俺にとっても最重要な問題だからだ。

「わかった。僕とリオンも行くよ」

「とんでも御座いませぬ。危険なればこそ我が行くべきかと存じます」

「大丈夫さ。リオンとハンゾウは強いからね。それに彼等も。危険なんか何もないよ。それに僕自身の目で確認しておきたいんだ」

「御意。この身を賭して御守り致します」

ハンゾウを先頭にして坑道の奥に進んだ。
エルフ族の青年達が後方を守って奥へ奥へと進んで行く。
メタルゴーレムにビビったのか亜種族達は入口で待機している。
もう大丈夫だと報せたのだが。
どうにも俺達を信用できないみたいだ。

「ここが行き止まりか」

鉄鉱石採掘の最前線まで到達した。
さすがは亜種族のパワーだ。
この堅い岩盤を良くぞここまで掘り進めたものだと感心する。
入口から2キロ。
いや、3キロくらい来たかもしれない。

「どうやらメタルゴーレムは完全に討伐できたようだ。もう安全だね。確認できたし、さっさと」

帰ろうか。
そう告げようとした瞬間に違和感を覚えた。

「どうされました?」

異変に気づいたリオンが問いかけてきた。
表情に出ていたのだろう。
ずいぶんと厳しい面持ちを作っているらしい。

「何かがあるぞ」

俺は亜種族の坑夫を連れて来るようエルフ族の青年達に指示した。
掘り進める方向とは違う方向に違和感を覚える何かがある。
それが妙に気になって仕方がない。
まるで催促されるかのように確かめずにはいられないのだ。

「コッチに掘ればええんだな?」

オークとミノタウロスがツルハシで岩盤を掘削し始めた。
物凄い音量が坑道内に響き渡る。
ドワーフが鍛え上げたツルハシじゃなかったら破損しているだろう。
それほどのパワーで岩盤を掘削していく。

掘削を始めて6時間ほど経っただろうか。
報告を受けたエルフィネス国王が使者を派遣した。
掘削進路の変更を許可する報せと食事の差し入れを持ってくる。
俺は使者の到着を受けて色々と失念していたと反省した。

「申し訳ない。まずは貴国に許可を得るのが踏むべき手順だった」

「お気になされずに。国王はメタルゴーレムを討伐して下さった事に感謝しております。その上で気になる事があっての行動と報せを受けました。思う存分にお調べ下さいませ」

使者はエルフィネス国王の許可証を手渡すと帰って行った。
鉄鉱山での行動を一任する委任状だ。
これでエルフィネス国王に許可を申請する事なく行動することができる。

坑夫の入れ替えを頻繁に行いつつ昼夜兼行で掘削を続けること3日間。
驚異的なスピードで掘り進めた距離はおおよそ500メートルに達していた。
この時点で違和感は確信的な感覚へと変わっている。
間違いなく、この先に何かがある。
俺は強い緊張感を抱きつつ掘削作業を見守った。

「あっ!」

ミノタウロスの坑夫が声を上げた。
すぐに他の坑夫達からも驚きの声が上がる。

「空間に出たぞーっ!」

叫び声を聞いて自然と駆け出した。

「坊ちゃん!」

リオンの静止を無視して俺は走った。
坑夫達を押しのけて開通した空間に足を踏み入れる。
すると。

「これは……」

絶句した。
そこには鉄鉱山の中とは思えないほど立派な神殿があったのだった。
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